原発から30km圏内、南相馬市から人影消える

      執筆者:編集部

東北地方大震災から3週間過ぎた4月3日、福島県南相馬市まで取材に出かけた。南相馬市は東京電力福島原発からちょうど30km圏で、同地区は家屋退避の対象になっている。南相馬市の中心部は原町区本町。市役所など行政機関が集まり、市の中心部をなしている。取材に訪れたのは午後4時過ぎ。国道6号線からわき道に入り、進んでいくと異様な雰囲気が包む。沿道には会社などのビルがあるにもかかわらず、人影が全くない。夕方というのに誰一人歩いていない。全く異様な雰囲気である。道路には時々、自衛隊や警察車両とすれ違う。取材目的地である市役所に近づくにつれて乗用車などを見かけるようになったがそれもわずか。南相馬市役所を訪ね、取材の旨を伝えると快く取材に応じてくれた。取材に応じていただいたのは市民生活課八巻清貴部長さん。大変でしたね、と声をかけると開口一番、原発被害で町の中は空っぽ。ご覧おとおりです、と気さくに応えてくれた。市内を車で走ってきたのでよくわかる。言葉は悪いがゴーストタウンとはまさしくこのこと。どれぐらいの方が避難しているのか聞いてみたが、これから避難する方も帰ってこられる方もおられるので完全には把握できていません。無理もないと思う。市役所前で一軒だけ営業していた酒販店「酒鋪まつもと」に入り、店主松本秀一さんにインタビューした。頑張っていますね、と声をかけると「近所の方が買いに来られるの閉めてはおられません。品物はほとんどありませんが、店に明かりが点いていると安心されるようで、商売にはなりませんが、とにかく営業を続けています」と応えてくれた。放射能の心配はないんですか、と聞くと「そりゃないことはないけど、この土地で永年商売をしてきたので、いまさら避難するものなんだ」とあっさり言いのけた。原発20km、30km県内で生活する住民は連日、空を見上げて、生活をしている。