<コンビ二創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第14回

      2017/01/24  

<海外ツアーの思い出>(その5)

<DCVS時代(1989~1996)(4)

ーー1994年(平成6年)・5月&9月ーー

「ローソン5000店舗達成 記念・『オーナー・経営セミナー・イン・ハワイ』」(2)

実は、ハワイでの全加盟店を招いて 経営セミナーを開催しようと強く提唱されたのは、中内CEOである。

5000店舗達成の見込みがついて、祝賀のパーテイをどこで開催しようかと検討を始めた頃、「どうせやるなら、ハワイでやったらどうや」と言い出されたのである。

当然のように国内開催を考えていた我々経営陣は、当初は不意を衝かれて非常に困惑したのだが、よく考えてみると、いろいろな面でローソンにとって、多くのメリットがあることに気付かされることになった。

中内さんの強い提言がなければ、このローソンの歴史に残る「オーナー・経営セミナー・イン・ハワイ」の開催はなかったであろう。

まさに「オーナ-・経営セミナー・イン・ハワイ」は、当時参加された全国の加盟店オーナーさんご夫妻を初め、セミナー開催に関わった全ての社員・関係者それぞれに、多くの出会いと感動の記憶を強烈に刻むこととなった。それは今日に至るも、お互いの忘れ難い人生行路における珠玉の思い出となっている。

その意味でも、中内さんには、心から感謝したいと思うのである。

経営セミナーは、メインエベントのコンベンションを中心に、ハワイ最新のワイケレ・ショッピングセンターやハワイ最大のアラモアナ・ショピングセンターを初めとする流通視察と、サンセツト・ディナークルーズ、オアフ島周遊、ハワイ島巡り、ゴルフなどのハワイ観光・体験オプショナルツアーが、さまざまに企画されていた。

コンベンション以外は、それぞれが自由に選択して、自分なりに楽しむことができた。

 

「オーナー経営セミナー・コンベンション」

オーナーさんご夫妻たちが、約2000人ずつ一堂に会する主要行事「オーナー経営セミナー・コンベンション」会場は、ホノルル最大のヒルトン・ハワイアンヴィレッジ・コーラル・ボールルームであった。

<コンベンション会場全景>

5月度は、第一陣と第二陣、それぞれ約2000人のコンベンションを2回。

9月度も第三陣及び第四陣のそれぞれ2000人で2回、合計四回、総勢8000人の大コンベンションを同じ会場で開催したのである。

初回のオープニングコンベンションには、ハワイ州副知事、ホノルル市長、ハワイ銀行頭取、ハワイ州観光局長など、現地要人も多数招かれて出席し,祝辞を述べ、一層のいろどりを添えた。

恐らく、これだけの規模のコンベンションは、さすがのハワイでも、そんなに多くはないだろうと思ったものである。

5月度のコンベンションは、松岡社長の開会挨拶に始まり、中内会長記念講演、続いてハワイの一流タレントによるディナーショウという華やかなプログラムで進められた。

      

<5月度・開会挨拶する松岡社長><記念講演する中内CEO>

5月度&9月度と延べ4回にわたる中内CEOの記念講演の基本要旨は、次のようなものであった。

『アロハー。

アメリカには、いつも学ぶべきことがたくさんある。

この国では、競争の激しい中で、新しい創意工夫が、常に行われているからだ。

人口100万人のこのホノルルの街も、アメリカ本土の大資本が進出して、南カルフォルニア以上に激戦を繰り広げている。

ハワイは観光地で、いわゆるハワイアン・ホスピタリテイというが、ここには商売の原点があると思う。

それを学ぶために、5000店の皆さんの出会いの場、学びの場として、ホノルルの街を選んだわけで、ここでよく遊び、よく学んでいただきたいと思う。

遊ぶことと、学ぶことは同じ系列にある。

皆さんにお願いしたいことは、家業から企業へと転換して欲しいということだ。

「どのように従業員にうまく仕事を任せるか」、ということが経営の原点であると思う。

出来るだけ他人に任せて、複数の店舗を経営する経営者になって頂きたい。

21世紀は、効率より人間重視、いわゆる商業空間の人間化、ヒューマナイゼーションの時代ということで、出会いを大切にしていくということである。

5000店の智慧を出し合っていけば、5000の智慧が出るわけで、そういう出会いを大切にしていきたい。

常に相手の立場になって考え、相手のして欲しいことをして差し上げるということが、商人として一番大切なことである。

その積み重ねが、ローソン1万店につながる道である。

本部とのツーウエイコミュニケーションを通じて、それぞれのオーナーの皆さんが、それぞれの地域で、地域社会に貢献していただけるようにお願いしたい。

マハロ―。サンキュー・ベリマッチ。』

非常にソフトで、時には中内流のジョークをまじえながら、とても分かり易い語り口で、参加していたオーナーさんたちは、熱烈な大歓声で、これに応じたのであった。

このときの中内さんは、今から考えると、ローソンが漸くここまで育って、ダイエーグループの中核企業としての役割を果たすようになった手応えを実感されて、日本の流通王としても、一番の幸せ感に満ちて居られたのではないかと推察する。

中内さんはご夫妻で出席しておられた。ご夫婦共々に、終始笑顔を絶やさず、にこやかな表情で、加盟店オーナーさんたちに丁寧に応対して居られた姿が、まざまざと今も目に浮かぶのである。

中内さんは、どちらかというとダイエーグループ幹部社員には非常に厳しい人に見えたが、ローソンの加盟店オーナーさんたちには、いつも同じ経営者の仲間として、対等の立場で接しようとされていた。

そのような中内さんの気持ちは、オーナーさんたちの心にも、深く通じていたように私には思われる。

  

<会場の中内さんご夫妻><オーナーさん夫妻を囲んで筆者、上沢さん、関口さん>

後期9月度の第3回、第4回の「オーナー経営セミナー・イン・ハワイ」は、ローソンの新体制により、松岡会長、藤原社長の新任挨拶で始まった。シンポジューム運営の内容は、前期5月度と基本的に同じであった。

中内最高顧問は、特に第3回と第4回の記念講演の最後を、

「ローソンの次なる目標は、日本のお客様1万人に一店舗、3000世帯に一店舗ということで、全国に1万2000店舗、日本で唯一のナショナルチェーンを作ることにしたい。

皆さんのご協力を得て、1万2000店を達成した暁には、今度はラスヴェガスでコンヴェンションを開催しましょう。

私も是非とも出席したいと思っているから、皆さん宜しくお願いします。マハロ―。」

と締めくくり、オーナーさんたちの万雷の拍手を浴びたのである。

  

<9月度・挨拶する藤原新社長><中締めスピーチする筆者>

今でも古参のオーナーさんたちとゴルフを楽しんだりする機会があるが、「1万2000店舗になったら、本当にラスヴェガスへいけるのかなあ」と話が盛り上がることがある。中内さんにしか云えない、インパクトの強い、誰もが忘れることの出来ない印象的な言葉であった。

私の出番は、この「オーナー経営セミナー・イン・ハワイ」のシンポジューム4回共に、エンターテイナーのアトラクションとハワイアン・ディナーで盛り上がった最高潮の場面での中締めスピーチであった。

決まり文句の堅苦しい挨拶では、折角の楽しいエキサイテイングなパーテイの雰囲気が冷めてしまう。

会場のオーナーさんたちが感じている、お互いの熱い一体感と幸福感に、更に強い余韻を残したいと、私なりに苦心を要した。

スピーチの要点は予め考えていたが、それをどう表現するかに悩んでいた。

初回のデイナーショウで、エンターテイナーのトークが受けているのを見て、とっさに英語にすることに決めた。

私は英語が得意だったわけではない。たとえブロークン英語でも、体当たりでスピーチすれば、皆さんの意表をつくことになり、注目してもらえるだろうと考えたのである。

「グッドイーブニング・レディーズ・アンド・ゼントルメン!ハウ アー ユー エブりボディ!」、で始めた私のスピーチは、皆さんに楽しんでもらいたい、という自分なりの思いを込めたものであったが、笑いと大歓声で迎えられた。

中内さんは「、「君、英語上手いやないか」、と云ってくれた。会場のお開き口では、オーナーさんたちから握手攻めに会うことになった。嬉しいことであった。

オーナーさん同士の交歓や、中内さんを初め本部経営陣との歓談が、賑やかに進み、会場内のあちこちで、お互いの記念写真撮影も盛んであった。

コンベンションの翌日からは、グループ毎に流通視察ツアーや各自選択のオプショナルツアー、自由行動などを通して、相互の出会いと一体感を一層深めることになった。

かくして、準備期間を含めると約一年の長きにわたった「5000店舗達成記念『ローソン・オーナー・経営セミナー・イン・ハワイ』」は、総勢8000人にのぼる参加者全員の心の奥深く、生涯に残る喜びと感動を刻みながら、無事終了したのである。

(バツクナンバーは「鈴木貞夫プロフィール及び目次と索引」を検索)