日本Glycemic Index 研究会(第9回)を終えて

      執筆者:編集部2

2002年から毎年、慈恵医大を会場として開いている日本Glycemic Index 研究会はこの7月4日に第9回が開かれました。例年以上に盛況で240名を超える参加が集い、活発な討論がなされました。 

今年の特別講演には京都の高雄病院の理事長である江部康二先生にお出で頂き、今評判の糖質制限食につぃてのお話を拝聴致しました。糖尿病、肥満症に対する食事療法として以前より進められておられるこの方法は、このところ特に注目をあびている話題です。2009年に東洋経済新報社から出版された「我ら糖尿人、元気なのには理由がある」という本は、江部先生と作家の宮本輝氏との対談本ですが、大評判をとりました。炭水化物を極端に避ける食事、いわば主食を絶って蛋白質と脂質を中心として、糖質を制限する食事にすることが何故糖尿病や肥満、脂質異常症によいのかを、40万年前ともいう人類の誕生の歴史までも遡って説きおろす対談は興味深く、さらに説得力のあるものです。今回のご講演では、1時間にわたってこの理論について説明なさいました。農耕が始まり、穀物摂取が定着したのは1万年前で、穀食が主食となったのは日本では弥生時代以後で、約2000~3000年前ですから、人類の歴史のなかで穀物を主食にしてきたのは1000分の1の最近の期間だけで、ホモサピエンスは本来いわば糖質制限食で暮らしてきた生き物だということなのです。しかも近年は農耕で得られた炭水化物をさらに精製して食用にあてることが一般的になってきていることも指摘されました。農耕が始まる前では、食前と食後の血糖値、すなわち血液中のブドウ糖の値の差は10~20 mg/dL だったのが、農耕開始以後は40 mg/dL となり、近年のように精製炭水化物の摂取が多くなってからは、60 mg/dL にも上昇してきて、いわばGlycemic Index の高い食品が主食になっていると説明なさいました。低GI食と糖質制限食を上手に使い分けることが、これからの日本人の食生活の上で肝要とお話なされ、参加者一同感銘深く受け止めた次第です。