食の今昔物語 12か月の裏表 7月編

      2016/07/01  

  1. imageウナギと梅干1606七月・・・ウナギと梅干

ご年配世代では「ウナギと梅干は食べ合わせが悪い」と今も信じている方が多いようです。一方若い世代では「迷信に決まっているじゃない」と頭から問題にしていないというようであります。「ウナギと梅干」の食べ合わせの真相はどうなのかについて考えて見ました。

結論から述べますと、「ご年配世代の方は間違ったことを言っている」と決めつけるのは気の毒です。今でこそお店はもちろん、どんな家庭にも冷蔵庫が備わっていますが、冷蔵庫がまだ普及していなかった時代を考えて見てください。せっかく買ってきたウナギのかば焼き、早く食べないと傷んでしまう、腐って食べることができなくなるかも知れない、それはもったいない、とお母さん方は気にしていたことでしょう。お店にも冷蔵設備がない時代ですから、時にはすでに傷み腐敗間近のウナギを、そうとは知らずに買ってしまうこともあったと思います。

 さて、舌なめずりして待ち望んだウナギを食べつつ、酸っぱい梅干しも食べると、傷みはじめたウナギから発生する酸味がかった味に気付かないことが多かったことは容易に想像できます。また脂っこいウナギを食べた後の口直しには、酸味のある梅干しがぴったりと合います。ここに「ウナギと梅干の食べ合わせが悪い」という説が生まれた根拠を見つけることができます。そうです!少し腐敗し始めたウナギは酸味が生じています。本当はこの腐り始めたウナギを食べたことが原因で、おなかの具合が悪くなったのですが、口にした梅干しも同じように酸味であるため、梅干しとの食べ合わせのせいにしてしまったとしてもやむを得ないことだったと考えられないでしょうか。こういう体験を何世代にもわたり重ね続けてきた結果、「ウナギと梅干の食べ合わせが悪い」と信じ込んでしまうというシナリオができあがってしまったのでしょう。しかもこれを全国に広めたのが、当時の家庭配置薬(置き薬)の営業の方々でした。大きなポスターに様々な食べ合わせのイラストを描いて、各家庭の台所に貼っていったのです。たとえば、「ウナギと梅干」の他、「てんぷらとスイカ」などで、今では全く科学的根拠があるとは決して言えないものがほとんどでした。

一般家庭に冷蔵庫が備わったのは1950年代後半と言われています。それ以前の世代に育った方には「ウナギと梅干の食べ合わせは悪い」ということを頑なに信じても仕方ない理由があったのです。頭から「迷信に決まっているじゃない」と年配の方をないがしろにする会話は感心しません。身近な食べ物に関する歴史を理解したうえで年輩の方の会話にも謙虚に耳を傾けたいものです。