外食烈伝「その根底に流れるもの」(七歩)

      2016/10/13   執筆者:編集部

【雑記】・・・・・別伝

※「一・七樹会(いななきかい)」の歴史・・・六人の侍たち

昭和57年11月19日午後6時、南青山のニッカウヰスキー本社地下、レストラン「うすけぼー」にて歴史的な「一・七樹会(いななきかい)」が発足した。メンバーは、当時のつぼ八・石井誠二社長、四ッ谷、美味小家・村井敏彦オーナーシェフ、井村屋製菓アンナミラーズ事業部・浅田剛夫部長、ニッカウヰスキー広報部・蕪木寿部長、モンテ物産・山下照男専務取締役、キッコーマン・熊谷徹事業部長の六人。加えて外食産業新聞社・坂本憲司編集・営業部長の七人が集った。

そもそもの出発は同57年4月、北海道から石井誠二社長が『居酒屋 つぼ八』を引っ提げて単身上京、「つぼ八東京本社」を設立、新しいスタートを切ったことに起因している。当時坂本記者が新聞のインタビューを行い、社会観、人生観、仕事観、未来観などを取材、終了時に石井氏から「何でも語れる友達が欲しい。」との一言から、坂本がそれまで取材や情報交換を行ってきた外食ユーザー、メーカー、問屋、協会他の人たちの中に、偶然にも石井氏と同じ“昭和17年生まれ(午年=馬年)”の同期生がいたことが端緒となり、前記の五人衆が揃ったのだ。以来三十二星霜、六人から出発した「いななきかい」は大きく発展、延べ人数110名のメンバーとなり、異業種交流会の実績を重ね、メンバーそれぞれの人生にプラスアルファ―の「黄金の一歩」を築いていった。そして平成26年11月19日、墨田区吾妻橋のアサヒビール社屋ゲストルームにて、「一・七樹会(いななきかい)」を開催、60名のメンバーが参集、この日をもって同会の発展的解消・解散する運びとなった。同日は図らずも三十二年前の発会式の日と重なっていた。

発会式の当日、全員が「今後数十年に亘り、有意義な交流を重ねていこう」との思いを披露、会の名前を模索する中、誰と言うこともなく発言があり、「全員が馬年で、馬は“いななく”」だから、昭和17年を重ねて『一・七(いなな)』とし、根を張り末広がりになるように『樹木』の『樹(き)』を加えて、試行錯誤の末『一・七樹会(いななきかい)』の名称が誕生、全員一致で賛同の拍手となり、この日、永久不滅の「馬年の会」が発足した。当時、メンバー全員は40歳の働き盛りであり、仕事も家庭も充実の日々を過ごし、怖いものは何もない状況であった。事務局長を拝命した坂本は昭和25年の寅年、言わば「とらうま」からのスタートでもあった。

スタート時には業界の諸先輩を招き、年六回の食事会の冒頭、人生観・仕事観のレクチャーを受け、明日への活力を学び、それぞれの持ち場での展開に拍車をかけるエネルギーを吸収していった。また、全国に学び舎を求め、ウイスキー、ビール、焼酎、味噌他の工場見学を実施、その土地、土地の歴史や食べ物を間近に捉え、美味しくいただきながら、あらゆる面で勉強を重ね、充実した交流を深めていった。

その間、17年のメンバーも一人、二人、十人と増え、様々な職種の人たちが喜び勇んで参加してきた。アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーのビール四社をはじめ、外食ユーザー、問屋、広告代理店、食品メーカー、ユニフォーム、什器備品、造園設計、コンサルタント、そして女優・参院議員の山東昭子さん、東京宝塚劇場の小川甲子総支配人まで、多種多様、多芸の人たちが参画、名実ともに『一・七樹会』の発展につながっていった。笑い話では、「後は弁護士と医者をメンバーに加えれば安泰だ」などの声が上がっていた。

また大きなエピソードとして、当時アサヒビールの村井勉社長が四ッ谷美味小家の村井敏彦オーナーシェフのレストラン「美味小家」の近くに住まわれており、庶民的でカジュアル・豪放磊落な性格から、美味小家での気楽な食事をしていた折、村井オーナーから、『一・七樹会』の話を聞かれ、即座に名誉顧問に就任することを快諾されたことに感謝しています。以後永年に亘り、食事会の都度アドバイスをいただいたことも昨日のように感じています。吾妻橋のレストラン・フラムドールでの食事会にも幾度となく招待していただき、メンバー全員が感謝しています。図らずも村井社長は、「いななきかい」メンバーの二回り前の「馬年」だったことも偶然ではないと思っています。

この美味小家では、これまた長年にわたり、「ボジョレー・ヌーヴォー」の解禁の日(11月の第三木曜日)にメンバーが集い、フランスから直送の樽詰め赤ワインの栓を抜き、ワイワイガヤガヤと夜の更けるまで飲みかつ食べるパーティーを繰り広げ、楽しいひと時を過ごしていたことも思い出されます。

当時、モンテ物産の山下照男専務が言われた言葉が、「世の中それこそ楽しく生きよう。仕事も情熱を込めて全力投球でやろう。そのためにはイタリア料理を食べて、かつワインを飲んで人生を謳歌しよう。」ということ。山下さんはこれを英語に置き換え、『Enjoy Eating(エンジョイ・イーティング)・Enjoy Drinking(エンジョイ・ドリンキング)・Enjoy Life(エンジョイ・ライフ)』と熱く語っていました。

こうした数々のエピソードは語り出せば後が尽きないもの。「一・七樹会」のメンバーひとり一人がそれぞれの人生に輝かしい1ページを記していったことは間違いのない事実です。平成28年10月7日、さらに新しい人生のスタートを切っていこうではありませんか。ありがとうございました。坂本拝