第186話 名 画 再 現

     

 1.料理再現

 『最後の晩餐』(1498年完成)はレオナルド・ダ・ヴィンチの大作だ。ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院内にある食堂の壁画(420cm×910 cm)であるが、とかく話題にされている。

 【『最後の晩餐』復製☆ほし蔵】

 その『最後の晩餐』のレプリカが鳴門の大塚国際美術館に飾ってある。そしてレストランには「最後の晩餐」を再現したランチもある。食と絵に関心を寄せる私は、迷うことなくそれを頂いたことがある(2008.8.15)。

 キリスト史の専門家によるとイエスの最後の晩餐のメインディシュは鰻だったというが、美術館のレストランは鳴門鱸と仔羊だった。もちろんイエスが食事の最中に、「これが私の肉体 これが血である」と言ったと伝えられるパンと葡萄酒は欠かせない。「たかがランチではないか」と言ってしまえばそれまでだが、「あの最後の・・・」と想って食べると感動である。

最後の晩餐》考案:服部幸応+小山裕久

昔魚の香草風味ローティー 古式ガルム オリーブオイル(鳴門鱸)

仔羊のあぶり焼き エシャロットコンフィ(鳴門の渦塩)

赤葡萄酒

昔々パン

オレンジレモン

 

2.ドラマ再現

 『最後の晩餐』の再現といえば、こんなこともある。それはNHK「日曜美術館」で放映していたが、ちょっと変わっていた。

 ジョバンニ・ミコリという1人の俳優が、絵に描かれていたイエスの12人の弟子たちの、その瞬間にとった動作と、発したであろう言葉を彼の俳優感覚で全員分を再現していた。最後にその動画をひとつにするから、動く絵画となる。

 「まことにまことに汝らに告げん 1人汝らのうちに我を売る者あり」とイエスが予言した瞬間、絵の中の弟子たちが動き、叫ぶのだから、劇画のような臨場感があってなかなか面白いものであった。

  そんな試みの延長線上にあるのが、ヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」(1665年ごろ完成)や、フランシスコ・デ・ゴヤの「裸のマハ」』(1797-1800年ごろ完成)の小説化や映画化であろう。

 ただし、それらの作者はモデルと画家、つまり少女とフェルメール、マハとゴヤが交わす視線から「モデルと画家=女と男」の心を読み取るというものであり、そこから物語が生まれて映画になるのであった。この手法でわれわれはすっぽり丸ごとその時代に入っていくことができるのである。

3.景色再現

 再現といえば、こんな例もある。広重の『東海道五十三次』(1833-34年ごろ完成)の「保土ケ谷」に描かれている橋の復現だ。これもまた楽しい。

 広重保土ケ谷」☆複製浮世絵】

 帷子橋

 江戸時代の保土ヶ谷宿辺りには帷子川が流れ、そこに帷子橋が架かっていた。それを渡ると向こうが保土ヶ谷宿。橋の袂に並ぶ店の中の一軒は二八蕎麦屋であることから、蕎麦通の間では話題の浮世絵である。その帷子橋を復元し、長さ15間、幅3間(1間=約1.8m)あったとされる帷子橋に立ってみようというわけであるが、橋を渡っても、生憎と今は蕎麦屋はない。「じゃあ」というわけで、すこし歩いてJR保土ヶ谷駅まで行くと、「宿場蕎麦 桑名屋」という古民家蕎麦屋が佇っている。そこで弥次・喜多に代わって二八蕎麦を啜ることもできるというわけだ。

 宿場蕎麦 桑名屋

 それにしても、画家広重は『東海道五十三次』で(Ⅰ)街道沿いの茶店的蕎麦屋、『江戸百』で(Ⅱ)高級蕎麦屋と(Ⅲ)屋台蕎麦屋の、蕎麦屋三タイプを描いている。たぶん彼は物事を総合的に見ることのできる知的な人物ではなかったかと思ったりする。

 

4.マンガ再現

 再現シリーズの中で、私の一番のお宝はこのマンガと写真である。

 元禄時代の蕎麦切を新発田の[一寿]さんと一緒に再現したのであるが、それをまんが家の山本おさむ先生が『そばもん』の中の100話~103話「討ち入りそば」編で採り上げていただいた。そのときの絵に倣って記念写真として撮った。

 

山本おさむ作画そばもん(C)山本おさむ/小学館

 

5.次の再現へ

 《江戸ソバリエ宣言》では「いきな仲間と楽しくやろう」と謳っている。だからというわけではないが、次の楽しみとしては『江戸名所図会』の「ある絵」を復元してみたいと思っている。ただ、この企画はとても1人ではできない大変な作業だ。おそらく専門家の手を借りなければ進まないだろう。それだけに楽しみも倍増だ、と自分で自分に期待しているが・・・。

参考:『最後の晩餐』(大塚国際美術館)、NHK「日曜美術館」(2011.1.9)、高久眞一著『最後の晩餐』(日本基督教出版局)、ステーシー・タイトル監督『最後の晩餐 平和主義者の連続殺人』(1995年)、開高健『最後の晩餐』(光文社文庫)、石川淳著『最後の晩餐』(筑摩書房)、ヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」(1665年ごろ完成)、トレイシー・シュバリエ著『真珠の耳飾りの少女』(白水ブックス)、ピーター・ウエーバー監督『真珠の耳飾りの少女』(2003年製作)、NHK「スーパープレゼン」(2013.2.25)、フランシスコ・デ・ゴヤ「裸のマハ」』(1797-1800ごろ完成)、ビガスルナ監督『裸のマハ』(1999年製作)、広重「保土ケ谷」(『東海道五十三次』)、山本おさむ『そばもん』(『ビッグコミック』12.12.25号、13.1.10号、13.1.25号、13.2.10号)、『江戸名所図会』(ちくま文庫)、

〔江戸ソバリエ認定委員長、伝統江戸蕎麦料理編集委員 ☆ ほしひかる