食の今昔物語 12月編 おせち料理の話題あれこれ

     

 年の瀬も押し迫った12月30日前後は、日本の各地のお店がお正月の準備で賑わってきます。特に上野アメ横のおせち料理の食材を求める人の波は、年末の風物詩になっています。最近では、有名デパート製の豪華な「新おせち料理」のCMをテレビでよく見かけます。メニュー内容はローストビーフやフォアグラを使った洋風おせち、フカヒレや燕の巣などの高級食材を取り入れた中華風おせちなどで、有名料理人を使い競って宣伝をしています。

 おせち料理は、一説によりますと平安時代から続いている朝廷行事の一つで、新年に神様に備えたご馳走のことをいうそうです。これが江戸時代には正月料理を意味するようになったと言われています。またおせち料理はほとんどが縁起を担ぐ内容となっています。新年の豊作、長寿や無病息災をはじめ、子孫繁栄やお家安泰を神様にお願いするという構成になっています。従っていかに時流に乗っているとはいえ、フォアグラやフカヒレを使ったおせち料理を先祖がご覧になると、どんな感想を語られるのか聞いてみたい気にもなります。

 おせち料理を盛り付けする重箱は、「一の重」から「五の重」まであります。四番目は、四が死と同音であることから忌み嫌い、「与(よ)の重」と言っています。「五の重」には盛り付けはしません。これは今が満杯という最高状態ではなく、この先はまだまだ繫栄する余地があるということを意味しています。 

 さらに女性に優しい神様は、新年の三ヶ日は台所を騒がせてはいけない、火の神様を怒らせないよう火を使ってはならない、ということから日持ちの良い料理をお求めになったと言い伝えられております。今でも三ヶ日は女性が台所に立たないという風習が各地に残っております。

 神様に召し上がっていただく料理ですから、その一つ一つには神様への願いが込められています。黒豆は、まめまめしく真っ黒になるまで働けますように、田作りは豊作を願って、タコは多幸と書き、幸せが多くありますように、そして鯛はめでたいことがたくさんありますように、というように。

 ご家庭のおせち料理のそれぞれにはどんな願い事が込められているのか、ご家族で考えてみるのも面白いことでしょう。 

 さて、おせち料理に欠かせない数の子はどんな意味があるのでしょうか。多くの人は、たくさんの卵から、子孫繁栄の願いを込めていると言います。

 正解です!

 では数の子は何の魚の卵でしょうか、と質問をすると今では半数ぐらいしかご存知ないようです。正解はニシンの卵ですね。寂しいことに若い世代になればなるほど、ニシンの卵と数の子の結びつきを理解している方は少数派となっているようです。

 ではなぜニシンの卵なのでしょうか、という質問にはほとんど答えは返ってきません。数の子の持つ意味ですが、子孫繁栄には自分を生んで育ててくれた両親が欠かせません。両親のことを二親とも言います。「二親」と書いて「ニシン」と読ませたのでしょうね。

(数の子のいわれについては、地域によってはさまざまな説があります。あなたの地域ではどうでしょうか)

 最後に、おせち料理に使う割り箸は祝箸と言って両方とも使えるようになっています。片方は自分が使い、もう片方は神様が使うのですから、決して汚してはいけません。ましてや逆さ箸にして大皿の料理を取るなんてことをしたら神様は、嘆き悲しみその家から幸せを持って帰ってしまうかもしれません。 

 このようにおせち料理の持つ一つ一つの言い伝えを、子供や孫に語り続けながら、新年を祝っていただきたいものです。osechiryouri_osyougatsu1