健康ニュース 3月15日号 平均寿命と健康寿命

     

 世間には、真実をひた隠しに隠したうえで、もっともらしく言い伝え続けられていることが多いと思いませんか。

その一つに「日本人の平均寿命は世界トップクラスですが、健康寿命は残念ながらトップクラスとは言えません。寝たきりや介護を必要とする人が多いので当然です」という説があります。その要因として、農薬、食品添加物まみれの食生活にある、と結論付けているケースが多いと思います。

これが真実なのかを調べてみました。

健康寿命とは、WHOによりますと、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間とあります。

つまり寝たきりでない、介護を必要としない状態と考えてよいでしょう。厚生労働省の健康づくり運動、健康日本21も同様の見解です。

平均寿命と健康寿命の差が、寝たきりや要介護期間ということになります。

参考までに平均寿命とは、0歳の赤ちゃんが何歳になるまで生存するかということを指す数値です。

世界保健統計データによりますと、世界には平均寿命と健康寿命の差が日本よりもっと小さい国が多数ある、ということが分かります。しかしこれらの国々の平均寿命は50~60歳程度で、いわゆる発展途上国ということになります。これらの国々と比較することには全く意味がないといって差し支えないでしょう。

東北大学大学院の辻一郎教授のレポートによりますと、先進国の中でこの差が8年台というのはわが国だけで、他の国々は9年台です。わが国の平均寿命と健康寿命の差の少なさは、世界一ということです。これは先述の説とは正反対の事実です。従って、日本人の食する物には、残留農薬や食品添加物が多いので、健康で人生を全うする人の割合が少ないという説は覆されることになります。

でも何らかの損得勘定から、平均寿命と健康寿命の差は大きい!と言い続ける人は、今後もいなくなるということはないでしょう。

慶応大学医学部教授の伊藤裕氏は、日経Goodayの中で、次のように語っておられます。

「これからの時代は、100年人生という前提で対応していかねばならない。健康寿命を伸ばすことで注目したいのは、メタボリックドミノである。生活習慣により肥満、糖尿、高血圧、脂質異常症などが連鎖的に生じ、危険疾患へと発展する。あたかもドミノ倒しのように1つの疾患が出ると、時間経過の中で病気が連鎖的に起こっていく。しかし早期の生活改善は、一度倒れたドミノを元に戻すことも可能です」

2016年に発行された「世界幸福度報告書」によりますと、日本人の幸福度は世界第53位です。その幸福度の一つに健康寿命があります。もっと健康寿命が延びると、幸福度ランキングもアップするのではないでしょうか。

健康寿命を伸ばすためには、60歳台のメタボ対策は頭から切り離しましょう。百寿総合研究センターの専門医が口をそろえて語っていることは「70歳代の人はしっかり食べることです。粗食が良い、健康のためには腹8分が良い、カロリー制限すると寿命が延びるといった説は60歳代までと理解し、70歳になったならば痩せないように、1日3食しっかりと食べることが重要なポイントです」ということです。