健康ニュース 5月15日号 人と車に違いあり!!

     

小子が「健康お宅」と常日頃揶揄している友人が、子ども相手の食育説明会で食事のことを、車のガソリンに例え次のように話しました。

「ガソリンが無くなると車は動きませんね。同じように人も生きていくためには、何かを食べないとダメなのです。食べないと動けなくなるのです。元気いっぱい動くためにも人は食事を欠かせません。だから育ち盛りの君たちは、毎日三度の食事を摂らなくてはいけないのですよ。分かりましたね」

終わったあと、お茶を飲みながら感想を求められましたので、忌憚ない意見を述べました。

「人は1日や2日、何も食べなくても生きていけることをどう思いますか?」「遭難などで助かった人は、5日以上何も食べていなかった、と言われていますが、そういう例をどう説明しますか?」という質問は、彼にとっては意地悪だったのか、ただ沈黙を続けるのみでした。

車という無機質の乗り物と、人という有機質を同列にして語ることは無意味ではないでしょうか、という小子の疑問を理解してもらえたのかはまだ分かりません。

生物学者の福岡伸一さんは、著書で「食べ物は燃料ではない」と述べられています。人は基礎代謝量のみを満たしていれば良いのかというとそうではないはずです。

否、車だってガソリンだけ満たしていれば動くのでしょうか?雨の降った日はワイパーも作動させなくてはなりませんし、タイヤも空気圧が適正でなければ、安全に車は動かすことはできません。発育盛りの子どもたちにとって、悪しき例え話し、不適切で的を射ない例え話しは誤解されやすく相応しくないと思いますが……。

彼は子供たちに、次のようにも語りました。

「食べ物に好き嫌いがあってはいけません。嫌いな人の多いピーマンにも命があるのです。ピーマンを食べてもらおうと思って作ってくれた人にも心から感謝しながら食べましょうね」

このトークに関しては、「評価ゼロ」と言ったところ怪訝な顔をされました。

以下彼との一問一答。

小子「子供がピーマンのような苦味の強いものを嫌うのは自然です。五味とは、甘味・酸味・苦味・鹹味(塩辛さ)・辛味で、人が生きていく上での基本味です。苦味は、毒物を感知する味で、経験不足の子供が食べないのは当たり前。ちなみに現在では辛味に代わってうま味を言う方もいるが、それはあくまでも料理の世界で、五味には夫々所以があるのですよ」

彼「五味の所以?」

小子「甘味は疲労回復、エネルギーの基。酸味は腐敗物の見分け、辛味は体温確保、鹹味は体液のバランス保持ということです」

彼「大人になってもピーマンを嫌いな人がいますよね。それはまだ味覚が子供だというのですか?」

小子「様々な食の経験を踏むにつれてピーマンも食べられるようになるのが普通。しかし中には食べたピーマンが直接の原因ではないとしても、食中りなど嫌な経験をした人などは、ずっと食べられないということもあるでしょう。その状態を専門家は、味覚嫌悪学習と言っています。しかし最も気になったのは、ピーマンにも命がある、という点です。全く古典食育論ですね」

彼との論議はここで打ち切りとしました。10年以上前に制定された食育基本法ですが、当時の都市伝説的な言い方が根強く残っているとしたら、子供たちが可哀そうでならないです。令和時代に相応しい食育論が生まれることを期待します。