健康ニュース 8月1日号 茶柱が立った!

     

隣家のインテリ夫人「今朝飲んだお茶に茶柱が立っていたのですよ。今日はきっと良いことがあるでしょうね」

隠居中の大御所 暈穀菜「ホー、それは良かったね。でも茶柱が立ったことは、周りの人に言わないほうが良いということは知らないのかな?」

隣家のインテリ夫人「そうでしたよね。でも先生だから気にしませんわ」

隠居中の大御所 暈穀菜「何もわかっていないようだね。幸せなことだ」

隣家のインテリ夫人「ただ飲んだお茶に茶柱が立ったというだけですよ。深く考えることなんて何もないでしょうが・・・」

隠居中の大御所 暈穀菜「時間があるなら聞いておくが良いね。まず茶柱が立つということは、二番茶ということだ。君の家では一番茶を飲んでいないというわけだ。つまり良いお茶には茶柱は立たないのだよ。だから世間体を考えて茶柱が立ったことは言わないほうが良いということだね。茶柱が立つと縁起が良いというのは茶業者が苦肉の果てに考えた販売促進策だよ」

隣家のインテリ夫人「・・・。もう少し詳しくお聞きしたいですわ」

隣家のインテリ夫人「良いお茶、つまり新芽の一番茶のことだが、こればかりが売れては困るわけだね。そのために二番茶の販売促進策として言われ始めたのが、茶柱が立つと縁起が良い、という作られた神話と言える。さらに自分の飲んでいるお茶は二番茶だと知られたくないので、茶柱が立ったと人に言っては効果が無くなると念を押しているのだね。いずれにせよ急須の細かい目をかいくぐって出てきた茶の茎が、湯飲みの中で立ち浮かんでいることは珍しいことだから、心の中で良いことがあると思い、幸せ感に満たされることがあっても悪いことではないね」

隣家のインテリ夫人「そうでしょうが、真実を知ってしまうとなんとなく切ない気持ちですわ」

隠居中の大御所 暈穀菜「茶業界だけではないよ。売り上げが下がる時期には、何とか売り上げを維持しようとして様々な業界があの手この手を考えているから、これも面白いよ。例えば、夏の土用の丑の日にウナギを食べる習慣もその一つだね」

隣家のインテリ夫人「えっ!ウナギもそうなのですか?」

隠居中の大御所 暈穀菜「夏の土用の頃の自然界のウナギは、ガリガリに痩せているのだよ。そんな痩せた不味いウナギを食べる物好きはあまりいない。だから夏場のウナギ屋は商売にならなかった。そこで江戸時代の著名な学者と言われている平賀源内に相談したところ、夏バテ解消にウナギを食べよう!という宣伝文が出来上がりウナギ屋の店で張り紙をしたところ、客が戻り商売繁盛になったということだ。今風に言うとキャッチコピーが良かったのだね。もちろん現代ではほとんどが養殖のウナギで、君のように丸々と太っているから美味しく食べることができるのだよ。なにか不満そうな顔をしているがね・・・?」

隣家のインテリ夫人「せっかくいいお話を聞いていたのに・・・」

隠居中の大御所 暈穀菜「まぁ良いじゃないかい。そうだ、美味い冷酒をいただいた。うなぎの肝を肴に一杯やろうかね。おや、機嫌が直ったみたいだな・・・」