第602話 北京・貴州紀行7

      2019/12/02  

~ 貴州料理の美味しさについて ~

 中国滞在中は、毎日毎食がフルコース的ご馳走の連続であった。そんな中ポッカリ穴が空いたように貴陽市での夕食は自分たちでとることがあった。
私たちはホテルの前にあった「花渓牛肉粉」という店に入った。思い出せないが微かに聞き憶えのある名前だった。何かのガイドブックで目にしていたのかもしれなかった。とすれば案の定というべきか、その店の《清湯牛肉粉》は牛肉が少々で野菜が多く、とてもおいしかった。
中国では小麦のメンを「」といい、「」というのは米のメンらしい。また米のメンは「米線」ともいうが、亡き平林さんが気に入っていたメンだった。米線の発祥は阿昌族らしいが、阿昌族の住む近くまでやって来るとなお親近感がわいてくる。ただ米線はやや太めが多いが、この店は細めだった。皆さんも「メンも細くて」、「サッパリして日本人好み」、「記憶に残るおいしさ」との感想だった。
ところが、各卓には写真のような調味料が設置してあった。とくに酢と唐辛子はどの店も置いてある。この店も野菜の甘酢漬けは自由にとっていいらしい。これも日本人好みの味だった。

先日の北京フォーラムで私は「日本の出汁と旨味」を話した。
その中で「四川料理では鹹、酸、辣(辛)、甜(甘)、麻、苦、香七味をがおいしさの基準、もっといえば「辛さがうまい」とまで述べたが、まさにそうであった。
西洋の美味基準では辛味は味覚ではなく、刺激であるとして、おいしさの基準から離れた位置にある。だが、ここ貴州や四川では重要視されているのである。
「このような辛さ=美味のクニでは、私が話した日本の旨味というのは通用しないな」と思ったが、よく考えるとメンの名前《清湯牛肉粉》には「湯(タン)」とある。つまり「タン=出汁」ではないか。とすれば、やはり「タン=出汁 ⇒ 鮮=旨味」も意識にあるのではないかと思い直し、もっと世界の美味基準を研究しなければと思った。 ご馳走様♪

〔文 ☆ 江戸ソバリエ北京ブロジェク ほしひかる

写真:醤油・陳醋・大蒜・唐辛子のセット

左は唐辛子の拡大