目標1:【貧困をなくそう】

      2022/04/07  

SDGsの目標の中で、目標1は、“誰一人として取り残さない世界をつくる”という崇高な理念の1丁目1番地とも言えます。

MDGsではターゲットが3つしかありませんでしたが、SDGsの目標ではターゲットは7つに増えました。MDGsで掲げられていた雇用に関するターゲット、飢餓に関するターゲットもSDGsでは別な目標に移動しています。

実は、企業が、自社のビジネスの文脈のなかで目標1【貧困をなくそう】だけを語っているケースは意外と少ないことに気づきます。

なぜなら、貧困問題は、戦争、干ばつや洪水などの異常気象など気候変動(ターゲット1.5)に関わる問題、シングルマザーやシングルファザーの増加による経済的要因に起因する問題、人権問題、感染症などの病気、医療や福祉問題、など様々な社会的課題と繋がっているからだと思われます。

おそらく多くの企業(食品業界以外)では、目標1【貧困をなくそう】そのものを自社の重要課題(マテリアリティ)として課題形成するまでの戦略目標になりづらい背景があると思われます。逆にいえば、ここに多くのビジネスチャンスがあります。

例えば、金融市場への期待がそのひとつです。

ターゲット1.4には、「貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産 に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する」の記述があります。

ここでは、金融機関への期待と、政府や国際機関への期待が混在しています。金融機関には、貧困層向けの金融(マイクロクレジット)、農業金融、女性向け金融、中小零細企業向け金融、開発途上国での金融サービスが求められています。

2006年には、マイクロクレジットの仕組みを作り、バングラデシュでグラミン銀行を創設したムハメド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞されています。貧困層と直接の接点をもち、金融サービスを提供してするのが「マイクロファイナンス」と呼ばれていますが、グラミン銀行のほか、BRI(インドネシア)、Kiva(米国)、ストリートUK(イギリス)などもあります。

では、あらためて現状をみてみましょう。

 ・新型コロナウイルス感染症により極度の貧困がこの数十年で初めて増加した

 ・2020年には、新たに、1億1900万~1億2400万人が極度の貧困へと追いやられた

 ・世界の貧困率は2030年には7%に留まる見込み

 (国連広報センター2020年)

ロシアのウクライナ侵攻もさらに追い打ちをかけていますが、各国政府は、新型コロナウイルス感染症に対応するため、1600件の短期的な社会保障措置を実施しているものの、依然として40億人が社会保障を受けていないとも言われています。

 

 さて、そもそも、「貧困」という言葉はどういう状態を示しているのでしょうか。

【貧困の定義】

国連UNDP(国連開発計画)では「教育、仕事、食料、保険医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のこと」を「貧困」と定義しています。(出典:国連開発計画(UNDP)「貧困とは」)

つまり、生きていくために、生活する場所、食糧、病気になった時病院で治療を受けられるかなど、生命にかかわるもの、また、精神面も含めて健康的な生活ができるかどうかという点で貧困が定義されているといってよいと思われます。また、SDGsの文脈のなかで定義されているのは、1日を1.25ドル以下で暮らす人々の状態のことを「貧困」と定義されています。世界銀行では、1日1.9ドルが貧困ラインとしています。2015年時点で、その貧困ラインにある人口は7億3600万人で、そのうち40%がサハラ以南のアフリカで暮らしていると言われています。

貧困は、失業率とも大きな相関関係があります。病気や災害で親を亡くした、あるいは、障がいなどで親が働けない家庭の失業率は2.8倍というデータもあります。貧困と目標4【質の高い教育をみんなに】は、関係性が深いのです。

【貧困の種類】

貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」という概念があります。

絶対的貧困とは、食料・衣類など人間としての必要最低条件の基準が満たされていない状態のことを言います。例えば、何らかの事情で住む家がない、食料がない、モノを買えない、子どもの体重が平均の数字を下回るといった状態などが該当します。

相対対的貧困とは、国、地域、社会、など一定の母数の大多数より貧しい状態のことです。例えば所得という観点でみると、「国民の所得の中央値の半分未満」にあたると相対的貧困となります。しかし、相対的貧困は目に見えづらい側面もあります。特に、「子どもの貧困」などが見えづらいと言われています。日本では2015年時点で6,7人に1人の子どもが相対的貧困にあたり、これはOECD加盟国の中でも最低水準と言われています。

 

他にも、一時的貧困(自然災害や季節によって生まれる貧困)や慢性的貧困(構造的に、あるいは長期で貧困状態のこと)という定義も存在します。それぐらい貧困には様々な背景があり、一言で説明するのが難しいものです。

いずれにせよ、子供の貧困は2015年以降現在に至るまでさらに増加し続けており、2030

年までには半減するという目標はかなり厳しい状況となっております。

貧困を解決するために私たちができることは何か、企業として、組織として、個人としても今後、それぞれの立場から支援していく、その枠組みをビジネスとしても検討していくことが求められています。

目標1 貧困をなくそう ターゲット一覧

1.1 2030 年までに、現在のところ 1 日 1.25 ドル未満で生活する人々と定められている、極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。

 

1.2 2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、 すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。

 

1.3各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030 年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。

 

1.4 2030 年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産 に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源につ いても平等な権利を持つことができるように確保する。

 

1.5 2030 年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の 経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。

 

1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。

 

1.b 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

参考資料

SDGsの教科書(日経BP)

SDGs(蟹江憲史著)

SDGsが問いかける経営の未来(モニターデロイト著)