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鈴木貞夫のインターネット商人元気塾
鈴木貞夫のインターネット商人元気塾【バックナンバー】

鈴木貞夫

1956年一橋大学卒、同年現池袋パルコ入社、1976年サンチェーン代表取締役社長、


1989年ダイエーコンビニエンスシステムズ代表取締役副社長、1995年ローソン相談役、


1999年ローソン親善大使。現在ソフトブレーン・フィールド(株)特別顧問。


1992年(社)日本フランチャイズチェーン協会常任理事、副会長を歴任 。鹿児島出身

鈴木貞夫氏(すずきさだお)
1934年1月3日生

【1月号】


<コンビニ創業戦記>第20回
・・ロ―ソンのル―ツ「サンチェ―ン創業物語」・・

賀春   2009年元旦

経世済民ノ道モ衰エ
巷間厳冬酷寒ヲ凌ぐ
今コソ商人元気ノ志
牛歩前進貫徹シテ
陽春ノ希望ヲ拓カン


「サンチエ―ンの創業」
<サンチエ―ン・ダイエ―グル―プ時代(その2)>
――転機・ダイエ―との業務提携(3)――


  昭和56年3月の第23回FCオ―ナ―会議では、社員独立フランチャイジ―を中心とする加盟店オ―ナ―さん達に対して、次のようにスピ―チした。

  『ダイエ―グル―プ入りというサンチェ―ンの第二創業に当たり、我々は「商売は戦争」との自覚で臨まねばならない。 商売の本質は、お客様に選んでいただく競争・戦いであり、戦いであるからには勝たねばならぬ。 勝つ事が商売の善であり、それにより生存と成長が果たされる。

商売の戦さに勝つ要件は何か。

一つは、正しい哲学で勝つ、正しい信念で勝つことだ。
  商人としての当然の勤めに全力を尽くすこと、商人としての心を磨くことである。 小売業は物流産業であると同時に、精神産業であると考える。 そのために、自分の「店訓」を作ることである。 何百年も続く有名老舗には必ず、代々引き継がれてきた創業の家訓があるものだ。 オ―ナ―さんの強い信念=使命感があって初めて、お店の従業員のやる気が高まるのである。

二つは、自分のお店が、何で勝つのか目標を明確にすることだ。
  商売の基本であるQ・S・Cの何処で、先ずは勝つのか、勝つ内容を明らかにすることである。 そして一日一日、ライバルよりも、良い仕事をしたかを振り返えることが大切だ。

三つは、自分の中に「剄さ(ツヨサ)」を鍛える事だ。
  「剄さ」とは、「変化に適応するしなやかな柔軟性」と、「どんな困難にもひるまず果敢に乗り越えるしぶとさ」を意味する言葉であるという。 詩人の立原道秋は、著書「男性的人生論」の中で、 [「剄さ」は「厳しさ」に裏打ちされ、「厳しさ」は「優しさ」に裏打ちされ、「優しさ」は「正しさ」に裏打ちされていなければならない]と書いているが、 まさに困難な仕事に取り組み、それをやり通す充実感、逞しく生きる男の美学を追及しようではないか。 最大の敵は、常に己心にあり。 お互いに、自分に負けぬ日々を通じて、自らの「剄さ」を鍛えていこう。

  第二創業こそ、5000店、上場企業につながる全ての布石を打つ年である。 21世紀につながる年である。 自らの未来を、自らの手で、切り拓いていくために、私と共に進んで貰いたい。 さあ!戦う方向は定まり、戦う目標も固まり、戦う体制も整った。 残るは、ダイナミックで、エネルギシュな実践あるのである。』 と渾身の激励を行なったのである。

  このように、社内の求心性を高める努力を進める傍ら、 未来につながるサンチェ―ンの独自性を強める布石をも、精力的に積み重ねていく。   幾つか例を上げると、

1・昭和55年(1980)9月に、長崎・新潟に進出して展開エリアを拡大したこと。
  これは、T・V・B時代からの継続案件で、キャバレ―・ハワイグル―プの長崎ハワイ観光(株)及び新潟ハワイ観光(株)をエリア・フランチャィジ―とするものであった。 数年後、それぞれに5店から10店舗ほどになったところで、サンチェ―ン本体が吸収することになるが、現在の長崎、新潟におけるロ―ソン店展開の基盤となったといえよう。

2・昭和56年(1981)8月にコンビニ小型店モデル実験一号店「プチサン」要町店をオ―プンしたこと。
  当時、コンビニ店の標準売り場面積は30坪と考えられており、既存の酒販店や個人食品販売店の多くは、中々その条件を満たす事はできなかった。 むしろ殆どの個人小売店は20坪以下であり、これらの多くの店をコンビニ化出来れば、商業の近代化・生産性向上も進むし、加盟店拡大、店舗数増のスピ―ドも上げられるとの思惑であった。 コンビニの標準品揃えを思い切り絞り込み、極狭商圏での高占拠率を目指してチェ―ン展開の可能性を探る実験店であった。 「プチサン」は、5店舗ほどの実験のあと、独自の多店舗化を中止する事になったが、 特定立地における高効率の小型コンビニ店作りの必要性は、今も薄れていないと思う。 その後、確かセブンイレブンも、「セブン・エキスプレス」の店名で、小型コンビニの展開に挑戦したと思う。

3・昭和56年(1981)9月に「アドバンス・コンビニエンス」サンチェ―ン早稲田通り店をオ―プンしたこと。
  この店は、「本格的ファスト・フ―ド・サ―ビス・コ―ナ―」を併設し、「成形冷凍生地・ 焼き立てパン」による、お客様の好みのオ―ダ―に応じて、フレッシュ・サンドイッチなどを提供するという、サンチェ―ンの未来型店舗のあり方を探るものであった。 F・Fコ―ナ―併設や焼き立てパンの導入は、恐らく各チェ―ンが、それぞれにいろんな実験をしてきたと思われるが、個店レベルの成功はありえても、これをチェ―ン全店舗で展開するのは中々に難しいものである。 何故なら、店舗の初期投資が大きいこと、店内調理等の作業が多く労働人時が増加すること、焼き立てパンなど廃棄が多大に発生する事などが、その主な理由である。 「ミニストツプ」チェ―ンがF・Fコ―ナ―併設を基本戦略とし、数千店の規模で全店展開されていることは極めて特徴的といえよう。 高齢成熟社会の今日に於いても、コンビニのF・F商品へのお客様のニ―ズは益々高まっており、「出来立て」「手作り」「本物」の「お袋の味」を効率よく提供する仕組みを如何に作りあげるかが、コンビニとして、これに応えていくための最重要戦略課題であるだろう。 (以下次号)

  
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