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鈴木貞夫のインターネット商人元気塾
鈴木貞夫のインターネット商人元気塾【バックナンバー】

鈴木貞夫

1956年一橋大学卒、同年現池袋パルコ入社、1976年サンチェーン代表取締役社長、


1989年ダイエーコンビニエンスシステムズ代表取締役副社長、1995年ローソン相談役、


1999年ローソン親善大使。現在ソフトブレーン・フィールド(株)特別顧問。


1992年(社)日本フランチャイズチェーン協会常任理事、副会長を歴任 。鹿児島出身

鈴木貞夫氏(すずきさだお)
1934年1月3日生

【7月号】


<コンビニ創業戦記> 第16回
・・・ローソンのルーツ「サンチェーン創業物語」・・・


「サンチエーンの創業」
<T・V・Bサンチエーン時代(その10)>
――「人材の城」創りへの挑戦(2)――

 


 組織強化策の三つ目の柱は、「一人一月一提案運動と総員プロジェクトチーム活動」の展開である。
 サンチェーンの店舗数の急増と規模の急拡大は、本部と店頭現場の双方に、必然のように、様々な新しい問題を頻溌させていく。
 それらの問題に、日々適切に、スピーディに対応していくためには、組織的な仕組みつくり、即ち、「システム化」、「標準化」、「マニュアル化」が不可欠である。
 私は、昭和54年(1979)初めから、「全社員の主体者意識の向上と現場の知恵の結集」を目的に、「一人一月一提案運動」を導入、それらの提案をベースに、次のような「テーマ別プロジェクト」を、組織的に推進した。

「マーチャンダイジング向上プロジェクト」(内川リーダー)
「販促向上プロジェクト」(針谷リーダー)
「棚卸ロス撃滅プロジェクト」(針谷リーダー)
「労働福祉条件向上プロジェクト」(今野リーダー) 
「教育向上プロジェクト」(浅野リーダー)
「帳票システム改善プロジェクト」(堤原リーダー)
「生鮮食品強化プロジェクト」(針谷リーダー)
「サンチェーン・ニューモデルプロジェクト」(小手川リーダー)
「経営計画プロジェクト」(斎藤リーダー)
「マニュアル整備プロジェクト」(堤リーダー)など、
当時の経営課題そのものを表していたと云ってよい。


 提案された課題は、当面の身近な現実的改善から、長期的、段階的な布石に及ぶ幅広いものであったが、各リーダーは、
1・現状改善・問題解決
2・現状認識・経営者意識の深化
3・「あるべき姿」の設定
を目的に、それぞれプロジェク別の約10名のメンバーと共に、熱心に取り組み、多大な成果をあげてくれた。
 活動の進捗状況は、「社員総会」の場と、社内報「流通レーダー」の誌上で、その都度発表の上、随時、仕組み化されていく。
 中でも「棚卸ロス撃滅プロジェクト」は、昭和54年4月には「棚卸ロス委員会」(鈴木委員長)として昇格・常設化し、下部チームとして
1・「在庫適正化委員会」(小手川チーフ)
2・「発注検品徹底委員会」(針谷チーフ)
3・「売変・返品正確委員会」(石川チーフ)
4・「万引き・盗難対策委員会」(山内チーフ)
5・「帳票数値正確委員会」(伊藤チーフ)
6・「不正対策委員会」(藍沢チーフ)
7・「棚卸管理委員会」(熊谷チーフ)を発足させた。

 

 と言うのも当時、サンチェーン最大の悩みの種は、店頭現場で日々発生する「棚卸ロス」を、如何に効果的に削減するかにあったからである。
売上げがどんどん増えても、ロスが大きければ、一生懸命に稼いだ利益を食い潰してしまうことになる。
「棚卸委員会」は、ロス率の目標管理による意識の向上と仕組み構築、売場環境の改善に地道に取り組み、次第に効果をあげていく。
 加えてこの年、森川弘文さんが入社、新たに設けた「棚卸ロス対策専門部署」営業調査室長に就任、優れた経験と持ち前の勉強熱心さ・粘り強さを発揮して、サンチェーンの「棚卸ロス対策」は、一挙に改善されていく事になる。
 この時代にサンチェーンが構築した「ロス管理システム」の基本的枠組みは、今日のローソンにも、脈々と引き継がれて、目に見えない大きな経営資産になっていると言えよう。
 森川さんは、後に常務取締役に昇進し、ダイエー・コンビニエンス時代を含めて、定年まで大いに社業に貢献されたが、その後、社会福祉学を専門的に研究、博士課程を修了し、現在もその分野で、元気に活躍されている。

 

 第三の組織的一体感の醸成策は、「社員総会」と「社員運動会」及び「ソフトボール大会」の定期的開催である。 

 

 「社員総会」については、サンチェーンの「元気と馬力の源」として、既に触れた所であるが、創業一年目の100店舗達成時から、2ヶ月毎に開催し続けてきた。 
昭和54年は、第8回から第12回まで、5回の社員総会を開催している。
 この場を通じて、サンチェーンの理念と戦略の理解と共有を更に深め、企業の現状とその時々の経営課題を確認すると共に、社員同志の顔と顔、心と心、熱と熱の直接の触れ合いの中で、組織的使命感と一体感を醸成しようと努めたのである。
サンチェーン「社員総会」の一つの特徴は、必ず全社員による「社歌」の合唱、輪唱から始まることであった。
 時には、私自身が指揮をとり、「サンチェーン建設の歌」「サンチェーン同志の歌」「出陣の歌」「目標5000店の歌」「全国展開の歌」などの「社歌」を、繰り返し繰り返し、腹の底から声を出して斉唱した。
 歌声には不思議な力があるものだ。
歌には、人間を感動させ、奮い立たせる力、団結させる力がある。
 社歌は、若き社員たちの感情と意志を、たちまち一つに融け合わせ、行動への力を湧き出させるものであった。
サンチェーンは何時も「社歌」を、明るく高らかに歌いながら心一つに前進し、歴史を築いてきた。

 

「全国展開の歌――はばたけサンチェーン――」

1・ 備えに勝る勇気なく
  先手を凌ぐ勝利なし
  いざ行け 進め
  スクラム組んで
  日本列島 南へ北へ
  はばたけ遠くサンチェーン
  我らが若きサンチェーン

2・ 鍛えよ強き土根性
  七つの訓え忘れずに
  いざ行け進め
  スクラム組んで
  日本列島 東へ西へ
  はばたけ高くサンチェーン
  我らが若きサンチェーン

3・ 歴史のページ塗り替えて
  世界に駆ける虹の橋
  手に手を繋ぎ
  スクラム組んで
  昇る朝日の炎のように
  輝け赤くサンチェーン
  我らが若きサンチェーン

 (以下次号)

  

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