第300話記念 食の恵みに感謝!

     

ほし☆挿絵

この駄文にいつも目を通していただいている江戸ソバリ協会顧問のI様より、「第300話記念を期待している」とのメールを頂いた。考えてもいなかったことなので「どうしよう」と悩みながらも、「せっかく続いた結果だから、そういうことを述べた方がいいかな」と思い直した。
見回すと、今年は「和食のユネスコ無形文化遺産登録」やミラノ万博など、食史においてもターニングポイントのような出来事が多かった。ならば、やはりこれからの食について少しだけでも触れてみようと思って、書いてみると江戸ソバリエ認定事業は、そういう視点からも決してぶれていないことをあらためて気づき、I様のお勧めにしたがって、よかったと思った。
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たまに「お蕎麦の食べ方」についての取材を受けることがある。
そんなときには、だいたいこんなことをお話することにしている。
1)「頂きます」を言って、箸を取る。2)つゆを適量だけ、蕎麦猪口に注ぎ分ける。3)笊に盛られたお蕎麦を真ん中から六、七本箸で摘まんで、4)つゆに三分の一付けて、5)啜って食べる。6)薬味はお好みで入れる。7)最後に蕎麦湯を頂く、薬味が余っていたら、それも使う。8)食べ物は残さずきれいに食べる。9)箸をキチンと置いて、10)「ごちそうさま」を言う。
まあ、言ってみれば珍しくもない動作である。

しかし、そこには重要なことがある。
つまり、以下に列記した「なぜ?」である。
それがまた蕎麦の蘊蓄ということにもなるのだが、各々の解答については、これまで度々述べてきたから、ここでは割愛しよう。

Q.なぜ「頂きます」「ご馳走さま」を言うのか?
Q.なぜアジア人は麺類を食べるのか?
Q.なぜ日本人は切って麺を作るのか?
Q.なぜ日本人は冷たい蕎麦が好きなのか?
Q.なぜお蕎麦は笊に盛られているか?
Q.なぜ日本人は箸だけで食べるのか?
Q.なぜ蕎麦猪口は白磁なのか?
Q.なぜ猪口を手に持つのか?
Q.なぜ蕎麦を三分の一つゆに付けるのか?
Q.なぜ〝切れ〟のあるつゆか?
Q.お蕎麦の長さはどのくらいか?
Q.なぜ笊の中央から摘まむのか?
Q.なぜ細い蕎麦か?
Q.なぜ二八か?
Q.なぜお蕎麦にコシがあるのか?
Q.なぜ薬味があるのか?
Q.なぜ残さずきれいに食べるのか?

お蕎麦とはいえ和食のひとつである。だから、蕎麦の食べ方、蕎麦の蘊蓄にも、和食の精神が貫かれている。
それが一番如実に現れていることが、
Ⅰ.必ず「頂きます」「ごちそうさま」を言う。
Ⅱ.残さずきれいに食べる 。

と、いうことであると思う。

ところで、いまミラノで万博が開催されている。日本館は「和食はヘルシー、和食はアートだ」という理由に「和食のユネスコ無形文化遺産登録」も手伝って、大人気らしい。
そしてもうひとつ、国連館が掲げているテーマとして飢餓と飽食の問題がある。
飢餓は地球上で8億人。世界の飽食についてはなかなか数字が把握できないが、半分以上は無駄に捨てていると推測されている。
この飢餓と飽食の問題に、各国が真剣に取り組んでほしいと国連は訴えているのである。
しかしながら、これに対して具体的に動くためには先ず気持がなくてはならないと思う。
その点、日本人の食行動には、伝統的に〝感謝〟という気持が入っている。
Ⅰ.「頂きます」「ごちそうさま」= 感謝、
Ⅱ. 感謝 =残さずきれいに食べる = もったいない、

である。

幸いなことに、われわれ江戸ソバリエは、あらゆる機会をとらまえては神仏に蕎麦奉納を行い、食の恵みに感謝する気持を現わしている。
☆深大寺そば守観音様〔江戸ソバリエ石臼の会〕
☆九品院蕎麦喰地蔵尊〔江戸ソバリエ蕎麦喰地蔵講蕎麦打ち会〕
☆慈眼院お蕎麦の稲荷様〔江戸ソバリエ有志会〕
☆天目山栖雲寺〔江戸ソバリエ神奈川の会〕
☆神田神社〔江戸ソバリエ協会〕
☆国王神社〔江戸ソバリエ協会〕

これからも、食べ方(舌学)、作り方(手学)、さらには蘊蓄(脳学)を通して、日本の美学である感謝の気持を貫かなければと思っている。
これが300話に際し、あらためて思い直したことかな!

蕎麦の花 手打ち 蘊蓄 食べ歩き 粋な仲間と楽しくやろう
《江戸ソバリエ宣言》

参考
・和食国民会議-調査研究部会講演会「ユネスコ無形文化遺産登録で先行する国々に学ぶ日本での保護・継承活動への思い」(2015年7月26日)
・Eテレ 食料フォーラム2015「ミラノ万博にみる日本の“食”と“農”」(2015年7月11日)
・柴田昌平監督「千年の一滴 だし しょうゆ」(2015年)
・和食国民会議-普及啓発部会「だしのお話」(2015年.5月25日)
・デヴィッド・ゲルブ監督「二郎は鮨の夢を見る」(2011年)
・すずきじゅんいち監督「和食ドリーム」(2014年)

〔江戸食文化研究会 会員、江戸ソバリエ認定委員長 ☆ ほしひかる