健康ニュース 7月15日号 食の欧米化が健康のもと?

     

 生活習慣病対策には、食生活を和食主体に切り替え、食の欧米化を抑えよう、と言っておけば誰でも頷いたものです。もっと分かりやすく言うと、高たんぱく質と動物性脂質を主とした高カロリー摂取の食習慣こそが食の欧米化であり、生活習慣病の根源であるというものであったということに誰も疑問を持たなかったはずです。

 5月24日付日本経済新聞記事に「食の欧米化、つまりパンや肉の摂取比率の高い食生活をするグループは、死亡リスクが低減する」とあります。

 ここでいうグループとは①欧米型(肉、パン、乳製品を摂る)②健康型(魚、野菜、豆類を多く食べる)③伝統型(和食中心で漬物やみそ汁を好む)に分類。それぞれのグループも多く取った順に高低で4つに分けています。

 これは国立国際医療センターと国立がん研究センターが、国内9府県の40歳から69歳の男女約8万人を、1990年代から約15年間追跡調査したものを分析した、という大掛かりな調査結果ということですので信憑性を疑う余地もありません。

 このことは、食と健康について語ってきたこと、つまり欧米化の高カロリーの食生活は、メタボの引き金となり健康にとってはマイナス要因である、と言い続けてきたことが否定されることとなります。

 記事を少し冷静に読んでみますと、「欧米化の食事とは言え日本人の摂取メニュー内容は、欧米人に比べて肉の摂取量も少ない、加えて塩分摂取量も少ないことが低死亡率となっている」とのことです。

 「ちょっと待ってください!」と言いたくなる気持ちを抑えることはできません。草鞋のような肉を毎日のように食べることの少ない日本人にとっては、肉の摂取量が少ないということに異論はありません。考えたい問題点は塩分摂取量についてです。

今もって日本人の塩分(食塩)摂取量は世界レベルから見てもかなり過剰であり、さらなる塩分摂取を控えるようにしないとだめ、と言われ続けていることと正反対の発表ではありませんか。

 食に関する研究発表などは、日常の食生活と乖離したものが多いとは思っていましたが、この塩分摂取量が欧米人に比べて多くないということをどう理解すべきでしょうか。

 報道記事の一片を取り上げて上げ足を取ろうということではありません。従来多くの人が信じてきたことと、正反対の報道内容ではただ戸惑うばかりではないでしょうか。

 欧米人は日本人よりも塩分摂取量が多いから死亡率が高いのだ、ということなら納得しないというわけではありません。とすれば世界レベルという表現は何を根拠としているのでしょうか。

 記事の裏付けをリサーチしているうちに、新たなことも分かりました。

 食の欧米化は、がんも含めて日本人の死亡率低下に大きく関わっているというのです。逆に言えば、世界無形文化遺産に指定された伝統的な和食は、日本人の平均寿命延伸に貢献しているという説は科学的な立証があるとは言えないということになります。低カロリーで高栄養素が和食の基と信じ続けてきたことはいったい何だったのでしょうか。食と健康について多くの問題提起があります。