第611話 花茶にチョコレート♪

     

中国はお茶の本場であるから、お土産に買って帰ろうと思うが、中国茶の基本的なことが分かっていないから、なかなか選択が難しい。そこで私は、良いお茶を置いてありそうな店を選んで購入することにしている。
これについてはどうも小林照男さん(江戸ソバリエ・ルシック)も同じ思いをもっていたらしい。というのも、過日インド土産に紅茶を頂いたが、それが大変おいしかった。そのことを申上げると、「インドは紅茶にあふれているので、何を選んだらいいか分からない。だから空港ならいいだろうと思って買ってみた」とのこと。やはり彼も店を選ぶ派のようだ。
お茶の話を続ければ、この度の第三次北京ブロジェクトの仲間も花茶を購入していた。
先日のウンナンの会は、北京プロジェクトによる貴州蕎麦料理の実習会だったが、そのときに木崎さんたちが持ってきていた菊花茶玫瑰花のお茶が余ったので、みんなで分けて持ち帰った。
私は玫瑰花茶は飲んだことがあるが、渋味のない気品のあるおいしいお茶である。ただ残念なことに色彩が薄いから美的感覚に欠ける。もうひとつの菊花茶は飲んだことがなかったので、量を適当に入れてみたところ、色彩は金木犀のように鮮やかできれいだったが、独特の匂いが強烈すぎて頭が痛くなるほどであった。これは苦手のお茶だと思った。
それから数日して、あるソバリエさんからベルギー産のチョコ「Leonidas Selection」を頂いた。この人はチョコレートのプロでもある。聞くところによれば「まだ発売前の製品」だというから、その貴重さがありがたかった。
チョコレートというのはカカオからできているから、私は単に「カカオ⇒チョコ」ていどの認識しかなかった。ところが田口さんらソバリエさんたちに誘われてメキシコ料理を食べに行ったとき、チョコレート・ソースの料理があったのには驚いた。メキシコの修道院のキッチンから生まれたそうだ。チョコの世界も単純ではない。
そう思ったとき、菊花茶の量を考え直してみた。
玫瑰花茶は通常通り、菊花茶をほんの少し。90℃ぐらいのお湯に2分ほど蒸した。そうしたら、玫瑰花の気品のある味と小菊のきれいな色のお茶になった。
そして「Leonidas」を口にすると最高の組合せになった。花茶の華やかさと、チョコの甘さに微かな苦味が残る味覚の世界が口内にひろがり、これはいいと思った。

最後に余談を一つ・・・、あるソバリエさんから猪口に入ったチョコを頂いたことがある。「チョコと猪口」とダジャレは聞いたことがあるが、それを実践した人は初めてである。これがほんとのユーモアだと笑い合ったものだった。

 〔文・写真 ☆ エッセイスト ほしひかる