第707話『新・みんなの蕎麦文化入門』を上梓してⅠ

     

 新刊を上梓してから、メールや電話で感想をいただいたり、なかにはお会いして話を聞きたいという方もいらっしゃったから、何人かお付合いした。そしてフードボイスの勉強会や、江戸蕎麦研究会(旧寺方蕎麦研究会)で少しだけ、要約みたいなことをお話することになった。
  今まではガイドブック的な本とちがって、今回は自分の説を書いたのでそれなりの反応をいただいたのだろうが、こうした反応がまた私にとってさらに勉強になるので、大変ありがたく思っているところである。

 著書の内容は、1~18章までは今まで講演したり、書いたりしてきたことばかりであるが、何といっても大西近江先生と伊藤汎先生の説が大きな柱であることはまちがいない。それをふくめて私の言いたいことは、

 ❶先ずは「日本蕎麦は江戸育ち」ということであったから、これを副題にした。
 ❷次は、「恩師伊藤汎先生と寺方蕎麦」でも述べたことであるが、
 歴史的には【寺方蕎麦】から【江戸蕎麦】への変化があること、
 地理的には【江戸蕎麦】と【郷土蕎麦】があることこと、
 業態的には【蕎麦屋の蕎麦】と【家庭蕎麦】があるということである。
 言い換えると、日本の蕎麦は【江戸蕎麦】=【蕎麦屋の蕎麦】と、【家庭蕎麦】⇒【郷土蕎麦】とがあり、そのどちらもが【寺方蕎麦】から始まっているということだった。まさに「江戸蕎麦、イヤ日本蕎麦の根源は寺方蕎麦にあり」というわけである。

 http://www.edosobalier-kyokai.jp/news/news.html

 ❸また基本的には、栽培蕎麦東漸説(→北九州→近畿→)をとった。   
 東漸説で有名なのは、邪馬台国東漸説と、仏教東漸説である。
 小生の年越蕎麦蕎麦民話レポートもこうした東漸説に立っている。 

 http://www.edosobalier-kyokai.jp/pdf/2018toshikoshi_hoshi.pdf

 hoshi_sobaminwa.pdf (edosobalier-kyokai.jp)

 ★その他に私の見解を散りばめた。
 ①蕎麦は遊牧民族の農業だとした。
 ②中国の蕎麦は異民族の食糧、そして漢民族の文学だとした。
 ③麺の発想(5000年前)は、縄をなう。そして土器作りをヒントに始まったとした。
 ④世紀の晩期人こそ革命者であると見た。
 ⑤文化はモノではなくコト。つまり椰子の実のような漂着でなく、人間が運ぶものとした。大西先生も伊藤先生も、多くのベテラン学者も、これを基本としている。だから栽培蕎麦もその考えから外さなかった。
 ⑥常明寺神田説は、風呂屋の場所から推理した。つまりサスペンスではないけれど直接証拠がないから、状況証拠から推理した。
  この点を小林照男さんは「ほしさんは、周りから固めてゆく」と指摘された。またゆさそばさんも「ほしさんの書き方は小説みたい」と言ったりしてくれたが、まさに言われるとおりである。
 ⑥蕎麦の味覚は涼味にあることを強調した。
 ⑦蕎麦湯発展説も唱えた。 
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 こうしたことから題名を「新・〇〇〇」とした次第である。

江戸ソバリエ認定委員長 ほし☆ひかる