仙台市宮城野地区 食品企業の被災状況
執筆者:編集部
東北地方大震災による食品業界の被害状況を取材するため、宮城県仙台市宮城野区、新港地区などを訪れた。宮城野区は海岸部に近く、地震と津波の影響をまともに受け、新港ではすべての建物が全壊しており、地震から3週間たった現在でも手付かずの状態となっている。宮城野区は大手食品メーカー、食品卸、資材メーカーなどが集中しており、工場、配送センターなどはすべて倒壊しているため機能はすべてストップしている。
新港内にあるニチレイは工場前に破壊された冷凍車が今も放置され周辺には商品が散乱している。東洋水産では外壁は残っているものの工場内はすべて破壊されており、再操業には相当時間がかかるものと思われる。理研食品でも工場が破壊され、周辺は瓦礫の山、工場内には漁船が打ち上げられるなど悲惨な状況。食品資材など製造するレンゴーは広大な敷地に美しい工場の容姿を見せていたが、見るも無残な姿に変貌していた。一方、食品流通を担う食品卸も今回の地震で被災、物流機能を失っている。伊藤忠食品仙台支店では配送センター内の倉庫が半壊、いまも無残な姿を見せている。伊藤忠食品は仙台市内のスーパーマーケット、コンビニエンストア、酒販店などに商品供給しているが、一刻も早い配送をという合言葉で、建築士に建物検査を受けた後、1週間で再開した。三井食品でも建屋は残っているもの内部は崩壊、得意先の安否確認を取るとともに代替配送を開始している。
地震、津波の影響を受けたスーパーマーケット、生協、コンビニエンスストア、酒販店、食料品店などはすべて閉店しているが、オープンしている店でも食品は品切れ状態で、物資は入ってこないのが現状。仙台市北部の泉区にあるファミリーマートでは商品が入ってこないため棚は空っぽ。
国道6号線のドライブインでは自衛隊、警察などの救助隊支援のため駐車場を開放、側面支援をしている。福島県境に近い山元町の「ドライブイン山元」では地震後も営業を続け、緊急物資車両、長距離トラックの運転士に食事を提供している。しかも20%オフ。
大災害ではライフライン、物流の寸断は当然のことながら、今回の地震は被災地が広域にわたっているため、救援が追いつかない。地元メーカー、配送企業はほとんどその機能を失っているため、他府県の支援に頼るしか方法はない。大手企業のように全国にネットワークのある企業ならいざ知らず地域に生きる企業はこれからが大変である