第281話 パスタ小史-3

     

【トマト ☆ ほし絵】

3. パスタ+ソース

わが国でも「蕎麦とつゆの絶妙なマッチング」というように、この国においてもソースとの絶妙なマッチングが、パスタのもっともパスタらしいところであるといわれる。
結論からいえば、15. 16世紀の大航海時代の到来がパスタを激変させたのである。
大航海時代 ― 音楽でいえば、ドヴォルザークの交響曲『新世界』のような時代であろうか。ヨーロッパ人にとっては、まさに雄々しい時代の幕開けそのものであるが、彼らはアフリカ南端の喜望峰、アメリカ新大陸、インドを発見し、やがてはスペインのコルテスとピサロがアステカ帝国やインカ帝国を征服するや、植民地政策競争時代へと突入していった。
一方、その大航海によって、トマト、唐辛子、カボチャ、トウモロコシ、ジャガイモがヨーロッパにどっと流入してきたのであるが、トマトは1544年にイタリアに入って普及し、パスタのソースを得がたい高貴なものにした。

かくてイタリアとトマトは、日本人と醤油、韓国人とコチュジャンのような恋人同士になり、海外に出たイタリア人たちはトマトの缶詰だけは本国が送ってもらっているという人がいるくらいだ。

そういえば、日本にあるイタリアン・レストランでは、必ずといっていいほど緑白赤の縦三色旗が掲げられているが、赤はトマト、緑はバジル、白は皿を象徴しているのかと思うほどだ。もっとも、日本でも日章旗そっくりの日の丸弁当があるから、人さまのことはあまりとやかくいえないが・・・・・・。

〔江戸ソバリエ認定委員長 ☆ ほしひかる