第318話 百万本のバラ♪
~〔Moon Rever〕へ ~
帰郷した折には佐賀市内にある「旅館 あけぼの」に泊ることにしている。
この日、受付カウンターに画家杉本弘子さんの個展案内の葉書が置いてあった。杉本さんはこの旅館の娘さんの絵の先生であると聞いているから、置いてあるのだろう。
それから余談だが、代々木にある服部栄養専門学校に行ったとき、杉本さんの絵が飾ってあった。
「へえ。こんな所に」と思ったりしたものだが、マとにかく、そんな画家さんの個展の案内状には窓辺の真っ赤なバラが描かれていた。
開催日は今月末とあるので、残念ながら東京から観に来るわけにはいかない。だからというわけではないけど、かわりに「百万本のバラ」の歌を思い出したりた。
この歌は一時大ヒットしたことがあるから、ご存知の方もおありだろうが、哀しいけれども小さな幸せを知った若者のことを歌っている。
~ ある貧乏な絵描きが女優に恋をした。彼は財産というほどのものはなかったが、それでも全てを売り払ってバラの花を買い、心から愛する彼女に贈った。
二人の出会いは短かく、愛する人は列車に乗って去ってゆく。でも、若者の心には幸せな花の思い出が残った ~。
このとき私は「この歌は、今このブログに書いている小説「コーヒーブルースの〔ムーン・リバー〕の場面とマッチする」と思った。
ちょうど小説の時代設定も「百万本のバラ」がロシアでヒットしたころと同じである。
~ 恵子と愛し合うようになった健、彼女は年上だけど銀座一の美人ママ、一方の健は四つ年下のしがないサラリーマン、愛し合いながらも高嶺の花の恵子との結婚に今一歩踏みきれない。
そういうときに、なぜか恵子は健のもとから離れようとしている。健はその本当の理由をまだ知らない。
健は「新たな道を歩もうとしている恵子の背中を押して上げるのも、今まで恵子からいっぱいの優しさと幸せをもらった自分の愛のお返し。その分のバラの花を恵子に贈って、自分は思い出だけを残そうとする。
そんな健の気持を感じ取った恵子は、言葉ではなく、何とかして彼に変わらぬ愛を伝えようとする ~。
トまあ、一枚のバラの絵ハガキをきっかけに、こんな風なストーリーを作ってみた。
私の駄作を懲りずに読んでいただいているKさんに「これは実話?」とよく訊かれるけれど、そんなことがあろうはずがありません。あくまでも妄想ですので、あしからず。
ただ、その妄想も、拙い小説ではあるけれど、あるていどの成り切りを伴う。だから「いつも主人公と一緒に涙しているので、目が腫れて困る。早く終わらせないとどうにかなってしまいそう」なんてYさんに申し上げたら、ケラケラと笑われた・・・。
また、Iさんという人からは「オトコ野中はどう生きていくのか。楽しみ」とのメールを頂き、さあ、どうしよう、と責任に押し潰されそう・・・・・・。
とにかく、皆さんも一度「百万本のバラ」を聞いてみませんか♪
下記のURLを開けてみると、
アラ・ブガチョフの方は、この歌を世界的にヒットさせた本家だけあって、上手い。貫禄もあるし、ステージの上を舞うように回りながら歌う姿は、ストーリーの中の百万本のバラを贈られた女優のよう。
好感度抜群のアニー・ロラックの歌は百万本のバラを贈った貧乏絵描きのよう。歌詞の中の「列車が去ってゆきました」や「貧しさの日々を送りました」を歌う健気な姿からは、若者の哀しさの物語が伝わってくる。
同じ歌を立場をちがえて歌う姿は面白い。
参考:「百万本のバラ」
① アニー・ロラックhttps://www.youtube.com/watch?v=F2094eLlmH8 (日本語字幕付)
② アラ・ブガチョフhttps://www.youtube.com/watch?v=zDjotWBFi4Y
〔エッセイスト☆ほしひかる〕