<コンビ二創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第9回

      2017/01/27  

<日本フランチャイズチェーン協会活動の思い出>(その5)

「第12回JFA・フランチャイジング・セミナーへの参加」(その3)

この「第12回JFA・フランチャイジング・セミナー」は、スケジュール設定が適切で、周到なテキストも用意され、現地解説も丁寧で分かり易く、極めて質の高いものであった。

その質の高さは、日本フランチャイズチェーン協会が、設立当初の「米国フランチャイズシステム研修視察」から、やがて「JFA・アメリカフランチャイジング・セミナー」へと進化させていく長年の積み重ねの過程で、磨き上げられていったものであると思う。

参考に、協会機関紙の「フランチャイズエイジ」1992年10月号より、「JFA海外研修視察セミナー開催の歴史」を紹介すると、次のようになっている。

<JFA・海外視察セミナーの歴史><アメリカセミナー報告会次第>

私は、この「第12回JFAフランチャイジング・セミナー」に参加しての感想を、後日のJFAの報告会で、要旨次の通りにスピーチした。

「アメリカ流通視察報告の要旨」

《アメリカは、本当に魅力的な国である。

広大な国土と自然、そしてそこに住む多種多様な人々の織り成すダイナミズムと、暮らしの豊かさは、流通業に携わる我々にとって、余りにも学ぶべき点が多い国である。

幾つかポイントを挙げると、

第一に、当時のアメリカの消費生活水準の高さを実感したこと。

その頃は、一時的に「ジャパン アズ ナンバーワン」説が唱えられていた時期であり、アメリカ経済も、双子の赤字で苦境にあえいでいると云われていたが、現実に見る中流アメリカ人の消費生活は、実に豊かに見え、世界一のダイナミックな市場だと感じたこと。

第二に、ショピングセンター開発が、都市開発、地域開発における「ゾーニング」の明確化などで、極めて戦略的に展開されていると感じたこと。

第三に、それぞれの企業やお店が、自らの「業態を明確化」することを競争原理としており、それを支える為の合理的なシステム作りに徹しようとしていること。

第四に、コンビ二エンス・ストアやファストフード店のみならず、セーフウエイやボンズなどのSMチェーンの「年中24時間無休営業」が常態化していること。

第五に、フランチャイズビジネスは価値観の多様化が進む中で、個人の自己実現、自立機会を拡大する有益な社会的・経済的なシステムであると考えられていること。

第六に、その一方で、セブンイレブン総本部である米国サウスランドのような高成長・高収益企業さえ、企業買収(M&A)のターゲットとされ、結果として日本企業に系列化されていく現実の過程を直に見聞する機会を得て、将に「カツト スロート コンペティション」といわれるアメリカの厳しい競争の実態に、近未来の日本の姿をまざまざと予感させられたこと。

【ここで特に付言すれば、この第六項目は、20世紀末から21世紀初頭にかけて、バブル崩壊から、その後の「失われた20年」といわれるような、長く続く日本経済の低迷と、私自身その渦中で鮮烈に体験することとなった、企業の激しい盛衰・変遷の歴史が、鮮やかに証明したことでもある。

今日未だに、その状況からの構造的な脱却が出来ないで苦しんでいる日本を、まさに、今回の東日本大震災(天災)と福島第一原発事故(人災)という「3・11」複合災害が、襲ったのである。

「3・11」は、現代社会の根底を揺るがすような歴史的転換点としての大きな衝撃を、全人類に与えることとなっている。

21世紀の高齢成熟社会の先進モデルと最新科学技術先進国を目指してきた日本が、如何にして、人口減少と財政再建と云う従来の課題にくわえて、この「3・11」と云う大災厄に伴う「安全神話の崩壊」と「科学技術不信」を乗り越え、再生・復興を果たしていくのかを、全世界が注目しており、今こそ日本人の底力が問われていると衷心から思うこの頃である。

その意味でも、「政・官・学・産」各界に関わるリーダーたちが、それぞれに献身的な「ノーブレス・オブリージ」を卒先して発揮することを、強く望みたい。】

総じて、当時の日本の繁栄と見かけの豊かさは、未だ虚像に過ぎず、「真の豊かさの実現」には、いまだに道は遠いと実感した。

この国において「生活者の真の豊かさを実現する」ことこそが、我々流通業に携わる者の使命と責任であり、そのためには、「チェーンストアシステム」と「フランチャイズチエーン」としての完成度を高める努力を、一層進めなければならない》

と締めくくったのである。

余談ながら、このように振り返って見て、現在のアメリカはどうなのだろうかと、考えるのである。

私も、今もハワイやグアムには行く機会があるが、このところはアメリカ本土を訪問してはいないのだが、21世紀を迎えてからのアメリカは、政治的にも、経済的にも、社会的にも、いろいろな意味で、様変わりしているのではないかと思っている。

2000年、「ネットバブル崩壊」による世界的な経済混乱、

2001年、「9・11」同時多発テロの発生と対テロ戦争名目のイラク戦争の長期化とアフガン侵攻、

2008年、共和党ブツシュ政権の「単独行動主義」から、民主党オバマ政権の「チェンジ戦略」への移行、

2009年、「9・15」リーマン・ショツクによるアメリカ発世界金融危機と長期不況など、

歴史的なバブル崩壊と金融危機が繰り返し起こり、アメリカ中心の世界経済システムの根幹を傷つけてきたように見えるのである。

その結果、従来の「アメリカ一国中心主義」が崩れ、中国など新興国の爆発的な台頭と共に「多極主義」への動きが急速に進展しつつあり、世界の政治・経済の構造は不可避的に変換せざるを得ないといえよう。

いまやアメリカでさえも、かつてのように傑出し、群を抜いた活力をいつまで保持し、示していく事ができるのだろうか。

ただアメリカには、建国以来の信念がある。

限りなく成長発展するという信念である。

アメリカがこの無限の力を、近未来において、具体的な形で顕現していくことを祈ってやまないのである。】

ともあれ、私の創業時代を通じて、アメリカは、常に企業経営の目指すべき羅針盤であり、「アメリカを見ること」、「アメリカを研究すること」、「アメリカに学ぶこと」は、純粋な憧れと燃えるような情熱の対象であったことは間違いない。

その意味で、多くのフランチャイズビジネスに関わる人たち、特に若い人たちに、アメリカ研究の機会、アメリカの現地で、広い視野で、網羅的に、勉強できるチャンスを、20年以上の長きにわたって提供し続けた、この日本フランチャイズチェーン協会主催「JFAフランチャイジング・セミナー」の果たした役割と貢献は、世間的にはそれほど目立なかったかも知れないが、日本のフランチャイズ・ビジネスにとって、極めて大きいものがあったといわねばならない。

次号からは、JFA関係以外の海外視察体験についても振り返ってみたいと思う。

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