ラクト・ジャパン乳製品情報3月号

      執筆者:編集部

昨月に引き続き、脱脂粉乳、全粉乳ともに相場は堅調に推移している。オセアニアは、気候に恵まれておらず、予想以上に生乳生産量が減少したため、粉乳の生産予定数量を数千トン下方修正したサプライヤーもおり、オセアニアの供給力に制限が出ている。脱脂粉乳、全粉乳ともに期近の船積みに対応できるサプライヤーはほとんどいない。一方でEUは季節的に生乳生産量が増加してくる時期に来ており、供給力のあるサプライヤーが増えているため、ユーロ建てのEU産脱脂粉乳価格は徐々に軟化してきている。現在、オセアニアの供給力が激減しており、脱脂粉乳のオファーが出てきてもEU産、米国産との価格差は大きい。EU1月の生乳生産量は、ドイツを除き、昨年対比若干減少する見込みであるが、総じて生乳生産量は季節的に徐々に増加している。EUでは、全粉乳の製造よりも需要が堅調なバター/脱脂粉乳の製造を優先するサプライヤーが多い。そのためサプライヤーによっては、十分な脱脂粉乳在庫を持っており、期近の船積みにも対応が可能である。

EU産脱脂粉乳相場は、ユーロ建てでは徐々に弱含みにて推移している。現在、EUR/USD為替は1.30-1.33で変動しており、USD建て価格でもオセアニア産脱脂粉乳よりも競争力があり、米国産と同レベル、為替によっては米国産よりも競争力のある価格にて推移している。EU産粉乳価格はEUR/USDの為替の影響が大きいため、注視する必要がある。全粉乳の生産量は、国内需要とのバランスが取れており、輸出向けは制限されている。輸出向けのEU産全粉乳価格は国際価格に応じて、徐々に堅調に推移しており、オセアニア産全粉乳と比較すると、価格競争力を有しない。

オセアニアの乳シーズンはピークを過ぎ、生乳生産量は大きく減少している。NZ・北島では、2月27日に政府による干ばつ宣言が公表された。NZ・北島の酪農家の中には、今後も気候の改善が見られないと考え、例年よりも早く乳牛を休ませる酪農家もいる模様。NZと同様に豪州も昨月から引き続き気候に恵まれず、各サプライヤーともに生乳生産量が見込み量を確保できず、粉乳の生産予定数量を大きく下方修正するサプライヤーが多い。豪州の2012年12月の脱脂粉乳生産数量は2011年同時期対比、2.3%増加したが、国際市場からの需要も強く、供給が需要に追い付かない状況となっている。現在はどのサプライヤーも売り切れ状態で、Q2の船積みであってもオファーできるサプライヤーは少ない。需要が供給を上回っているため、オセアニア脱脂粉乳相場は強含みにて推移している。今までオセアニア産脱脂粉乳が国際相場を牽引してきたが、現在は、EU産、米国産脱脂粉乳が価格競争力を有している。全粉乳に関しては、全粉乳を主要に生産しているサプライヤーの中には若干供給余力を有しているサプライヤーもいるが、ほとんどのサプライヤーは売り切れ状態になっている。全粉乳は今までの国際価格では採算性が合わず、バター/脱脂粉乳の生産を優先させるサプライヤーが多かったため、2012年7-12月の豪州の全粉乳生産数量は2011年同時期対比、23.3%減少した。2月に行われた2回のフォンテラオークションgDTの全粉乳落札価格は大きく上昇しており、それに引きずられ、オセアニアの全粉乳価格も大幅な値上げとなっている。EU産全粉乳の供給も限られており、全粉乳国際相場はしばらく堅調に推移すると思われる。

米国の生乳生産量は引き続き好調に推移している。2012年の生乳生産量は2011年対比2.1%増加した。2012年の乳牛は2011年比較37千頭増加しており、今後も米国の生乳生産量には期待できると思われる。脱脂粉乳の生産も潤沢に行われている模様で、期近の船積みにも対応できるサプライヤーが多い。米国産脱脂粉乳価格は、昨月から引き続き安定的に推移しており、価格競争力がある。しかし、この先の相場が堅いと予想しているサプライヤーは少なくなく、先の船積みの価格は相場変動のリスクを加味した価格にてオファーを出すサプライヤーが多い。上述の通り、オセアニア産脱脂粉乳の供給が逼迫しており、脱脂粉乳はしばらくEU産と米国産脱脂粉乳が市場を牽引すると思われる。

今後の見通し、オセアニア産粉乳相場は生乳生産量減少を受け、堅調に推移している。今後もオセアニアは季節的に生乳生産が減少していくことが予想され、潤沢な供給はしばらく期待できない。一方で、EU、米国の生乳生産は好調に推移しており、脱脂粉乳の生産も好調のようである。現在、EU産、米国産の脱脂粉乳価格は同等の価格レベルにて推移している。さらに、EU産脱脂粉乳価格は現在ユーロ建てでは若干弱含みにて推移しており、為替動向次第では、EUが今後の主要供給地域になる可能性が高い。オセアニアの生乳生産量が減少しており、各サプライヤーでは粉乳生産予定数量の下方修正が行われているため、全粉乳・脱脂粉乳ともに、来月以降のgDTの落札価格が上昇する可能性が高い。gDTは国際価格の一つの指標となっているため、gDTの落札価格の上昇に伴い、国際価格が上昇する可能性も十分にある。各地域の今後の相場動向には注視する必要がある。