第339話 蕎麦を知っているとカッコいい
アメリカ在住日本人の蕎麦応援歌
【サンフランシスコ、ゴールデンゲート・ブリツジ ☆ ほし絵】
サンフランシスコ在住20年という知人がいる。たまの来日の折にはお蕎麦を一緒に食べることがある。
その知人の話によると、アメリカの日本食ブームはとどまるところがないという。ただ当然だろうが、都市によって日本食の意識は全く異なるらしい。未だに20年前の寿司、天麩羅を好む内陸地もあれば、200ドル払っても美味しい寿司や懐石料理を食べたいという人たちが住む都市もある。
サンフランシスコは後者で、健康志向者が多いらしい。だから、SFの日本食レストランはバラエティに富んでいる。ただし中国人と韓国人の経営者による和食レストランが7割以上を占めており、二極に分かれている。舌が肥えた人はサンフランシスコ市内に集中しているが、とくにベイエリアには約1,000軒の日本食レストランがある。
ところで、アメリカはいま空前のラーメンブームが沸き起こっているといっていいが、少々飽きつつあるような傾向も見受けられる。そんな中、次に期待されているのが蕎麦だと知人は言う。
2年前にバークレーで大人気のレストランが、蕎麦打ち職人を起用して、週に2回メニューに載せたが、コストがかかり過ぎて、去年なくなってしまった。しかしその職人の手捌きにアメリカ人はまるでマジックを見るように観入っていたのも事実である。
現在は、手打ちではないけど冷凍した蕎麦は、多くのレストランのメニューにあるし、人気がある。
また、健康志向者向けのスーパーマーケットには、蕎麦粉を置いているし、小麦粉と混ぜてクレープや、パンケーキを家庭で作るアメリカ人も多い。
H・マギーさんという食のジャーナリストが来日したとき「ほそ川」にご案内したことがあるが、彼も「蕎麦粉のパンケーキを作って食べている」と言っていた。
ある江戸ソバリエさんと関係のある某社から、「アメリカ進出を検討したいと思っている」という相談を受けたので、その知人に「蕎麦が受けるとしたら考えられる理由は?」と訊いてみたら、次のようなことだった。
○蕎麦は健康食品である。健康になる気がする
○伝統食への尊敬の念がある。
○そもそも「日本食」というイメージが良い。
○蕎麦は日本人の国民食なので食べてみたい
○蕎麦を知っているとカッコいい。
○蕎麦はグルテンが少ない。
○ヌードル好きはけっこう多い。
○蕎麦はアッサリして食べやすい。
○蕎麦は天麩羅との組み合わせがいい。
○好きな海老は蕎麦とよく合うだろう。
「蕎麦を知っているとカッコいい」とはおそれいった。
参考:ハロルド・マギー『マギー キッチンサイエンス』(共立出版)
〔エッセイスト ☆ ほしひかる〕