コンビニ創業戦記 ローソンのルーツ「サンチェーン創業物語」(第41回)

     

<サンチェーン・ダイエーグループ時代(その23)

――シテイ・コンビニエンスへの挑戦――(21)

「対等合併・(株)ダイエーコンビニエンス・システムズの発足へ」(2)

「CVS合併プロジェクトチーム」が、対応するべき課題は、サンチェーン・ローソン両社の経営全般にわたり、当時既に、両社併せて3000店舗企業の規模に達していたから、営業現場の隅々にまで及ぶ個別具体的なものをも多く含んでいた。

従って、これらの全てを、僅か2ヶ月足らずの限られた期限の内に完了させるためには、実に膨大な組織的エネルギーが求められたのである。

その意味で、「プロジェクトチームメンバー」は、リーダーを上沢英行ローソン常務とし、両社の各部門長クラスをもつて構成することとした。

サンチェーン側のメンバーが、狩野人事総務室長、尾崎財務経理室長、清田システム室長、渡辺副室長、羽鳥商品本部ゼネラルマネジャー、小木曾運営本部ゼネラルマネジャー、五十嵐教育シニアマネジャーであり、

ローソン側メンバーが、加納経営企画室長、中尾人事室長、小松総務室長、中岡副室長、篠崎商品部長、徳久販促部長、牛島建設部長などの皆さんたちであった。



基本的なスケジュールは、次のように極めてタイトなものであった。

1989年1月14日 両社合併契約書締結

17日 両社合併承認取締役会

19日 両社合併承認株主総会

24日 公正取引委員会に合併届出

27日 官報公告及び社外広報

30日 大蔵省に両社有価証券報告書提出

3月 1日 合併期日・新会社発足

5日 新取締役会

4月 1日 合併報告株主総会

3日 合併登記

8日 合併完了報告書・公正取引委員会に提出

5月 1日 新東京事務所移転完了・新体制完全スタート

このスケジュールの下に、プロジェクトチームが対応すべき課題は、サンチェーン・ローソン両社全部門の全分野にわたり、処理すべき事務量は膨大なものであった。

これを例示すれば、次のようなものである。

1・[総務関係]

ⅰ・登記事項の処理 ⅱ・契約内容の確認 ⅲ・ライセンス関係の確認手続き

ⅳ・電話・保健所等の名義変更 ⅵ・各種規定の見直し ⅶ・定款の変更

ⅷ・火災保険等の調整 ⅸ・帳票事務用品の在庫調整

ⅹ・社有車等の統一 ⅺ・新事務所移転準備

ⅻ・訴訟案件対応など

2・[財務関係]

ⅰ・会計組織の決定 ⅱ・EDP会計対応

ⅲ・勘定科目体系の統一

ⅳ・管理会計科目の統一 ⅴ・銀行取引関係の調整

ⅵ・リース政策の統一ⅶ・銀行口座名義変更

ⅷ・伝票、帳票の統一 ⅸ・入金支払い手続きの統一

ⅹ・バランスシート確定、ⅺ・会社清算税務申告など

3・[人事関係]

ⅰ・従業員への説明 ⅱ・労働組合対応 ⅲ・賃金体系の調整

ⅳ・労働条件の調整 ⅴ・福利厚生の調整 ⅵ・規則規定の統一

ⅶ・採用、研修、教育の調整 ⅷ・監督官庁への届出など

4・[情報システム関係]

ⅰ・EDP一体化 ⅱ・システム・ヴァージョンアップ

ⅲ・POS展開加速化推進等

5・[商品関係]

ⅰ・取引先調整 ⅱ・取引条件の一体化

ⅲ・イレギュラー取引の対応等

6・[経営企画関係]

ⅰ・中期計画の策定 ⅱ・基本組織の検討

ⅲ・権限規定、業務分掌の調整統合

ⅳ・社内会議体系の編成等

7・[店舗オペレーション関係]

ⅰ・店舗帳票の統一 ⅱ・店舗名調整 ⅲ・店舗配置リスト作成

ⅳ・不良在庫処分等

8・[店舗開発関係]

ⅰ・契約済み店舗案件の点検 ⅱ・オープンスケジュールの調整

ⅲ・契約・出店計画調整等

9・[店舗建設関係]

ⅰ・取引先統合調製 ⅱ・店舗仕様の統一

ⅲ・工程管理の統一 ⅳ・支払い条件の統一等

10・[宣伝販促関係]

ⅰ・広告媒体調整 ⅱ・取引先統合 ⅲ・イベント統一等

11・[その他]

ⅰ・オ-ナー共済福祉会の一元化 ⅱ・広報内容の決定等

これら全ての課題に付いて、プロジェクトチームメンバーを中心に合議・調整・決定しながら、サンチェーン、ローソンの両社・全部門が総力をあげて、対応し解決していった。

その間、それぞれの部署の社員たちが、昼夜兼行の懸命な努力を重ねてくれたお陰で、1989年3月1日、新会社「(株)ダイエーコンビ二エンス・システムズ」が、正式に発足することとなる。

さらに、その2ヵ月後の平成元年(1989)5月1日、両社の本社機能を、新東京本社(芝浦スクエアビル)に統合して、ダイエーコンビニエンス・システムズ(DCVS)は、新組織体制を本格的にスタートした。

ここにサンチェーン独自の歴史の歩みは、私の痛切な心残りと共に終わりを告げ、

新DCVSとしての新しい歴史を切り開いていくことになったのである。

ここで、当時の共々にご苦労頂いた社員の皆さんを回顧する意味で、サンチェーンとしての最終年度組織図と、加盟店オーナーや取引先、店舗家主への合併通知催告書などを、参考に掲げておきたい。

<合併直前のサンチェーン組織図と合併通知書など>


思えば、サンチェーンが、「始めは小さな炎でも、やがては荒野を焼き尽くす」をスローガンに、東京の一角に呱々の声を上げてから満12年、1000店舗を達成し、1000億円企業を実現すると同時に迎えた、新しい転機、再出発であった。

それは短いようで、誠に長い道のりであり、決して平坦な道ばかりではなかった。

だが、お客さま、お取引先さま、加盟店を初め、多くの人々の温かいご支援とご協力、励ましに支えられながら、吾が愛するサンチェーン社員従業員の皆さんと共々に、文字通り悪戦苦闘しながら幾多の困難を乗り越え、築き上げてきた道のりであった。

終わりに臨んで、当時、私と共に苦楽を共にしてくれたサンチェーン取締役のみなさんの写真を掲載しておきたい。

<苦楽を共にしてくれたサンチェーン取締役会の皆さん>

<清田さん、小木曽さん、針ヶ谷さん、森川さん、筆者、狩野さん、尾崎さん、羽鳥さん>

(以下次号)

「追記」

次号の「第42回」は、「サンチェーン創業物語」最終回として、これまでのサマリーを行い、<コンビ二創業戦記>の第一幕を終了したいと思います。

長きにわたり、ご愛読を頂き、心から感謝申し上げます。

次々回からは、<コンビ二創業戦記>の第二幕として、

「DCVS(ダイエーコンビニエンス・システムズ)時代・回想録」を書き始めたいと思います。宜しくお願いいたします。              鈴木貞夫

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