健康ニュース 6月1日号 稲作の不思議?!
隣家のインテリ夫人「実家のある田舎に行ってきました。田植えも終わっていて、家族みんながほっとしていましたわ。水田は本当に安らぎにもなりますね」
隠居中の大御所 暈穀菜「そうだね、苗のなびく田んぼの風景は美しいよね。ところで田舎で育ったのならトマトなどの野菜は連作がだめ、ということは知っているだろうね」
隣家のインテリ夫人「そんなことは常識ですよ。農家の人でなくとも知っているのではないですか。お隣の方も貸農園で野菜作りをしていますが、去年はトマトを作ったから今年はだめだな、なんておっしゃっていますから」
隠居中の大御所 暈穀菜「そうだろうね。では聞くが、なぜ米作りだけは毎年毎年何十年も、いやもしかしたら何百年も同じ田んぼで作り続けることができるのかな。考えたことはあるかな」
隣家のインテリ夫人「えーっ!そんなこと考えたこともありませんわ。誰も考えもしないのではないですか。屁理屈屋の先生しかそんなこと思いつかないですよ。でもなぜでしょうかね」
隠居中の大御所 暈穀菜「例えばトマトを前年と同じ畑で栽培するのを避けるのは、連作障害対策のためだが稲作だけは大丈夫だよね。なぜかというと、稲は水をはった田んぼで作ることは日本人なら誰でも知っているね。この水田ということにキーポイントがある」
隣家のインテリ夫人「へー、水田にですか?考えてもいませんでした」
隠居中の大御所 暈穀菜「田んぼに張られた水の成分が、稲の生育に有害な過剰物質を洗い流すとか、生育に不足する成分を水から補っているのではないかと考えられている。それを立証する例として同じイネ科の陸稲だと、生育が良くないとか、収穫が減少するという連作障害が出るということだ。古くからある言葉で、専門家はこう言った連作の効かない状態を、嫌地、厭地、忌地と表記して、すべていやちと言っている。同じようなことを、ヨーロッパの表現ではアレロパシーと言っているが、嫌地などとは若干意味合いも異なるといってよいだろうね」
隣家のインテリ夫人「難しそうですがどう違うのですか。私にも分かるように話してくださいよ」
隠居中の大御所 暈穀菜「難しいことを分かりやすく言うのは、大変なのだがね・・・。アレロパシーとは、他感作用と訳されている。ある植物の個体外に出す化学物質が、他の植物個体に何らかの影響を与える現象を意味している。この作用物質をアレロパシーと言っているのだね」
隣家のインテリ夫人「分かったような気にはなりましたが・・・」
隠居中の大御所 暈穀菜「例えば高価な高麗ニンジンは数年かけて収穫する。ニンジン販売業者は、畑の栄養分をすべて吸収してしまうために数年間は他の植物が生育できないという。それが正しいなら高麗ニンジン収穫後に堆肥を施せばいいだけだ。でも堆肥を施してもダメなわけはアレロパシーという作用で、高麗ニンジンが残した物質が他の植物の発育を抑えるからに違いないという学者の発表がある。栄養分を全部吸い取ったなどという業者は信用しないことだね。一方では、嫌地とアレロパシーは少し違うという説もあるそうだ。しゃべり過ぎたなぁ。今日は米で作ったアルコール飲料を楽しもう。つまみを頼んだよ」