健康ニュース 3月15日号 納豆をよく食べると・・・
何度も本欄で書いていることの一つに、「血栓を溶かす目的で、夕飯に納豆を食べることは意味がない」ということがあります。
1月30日に、国立がん研究センターなどの研究チームが、「納豆を日常的に食べる人は、そうでない人に比べて心筋梗塞など循環器疾患による死亡リスクが2割低い」という研究結果を発表しました。
早速詳細について調べてみました結果、大変興味ある内容でした。新聞報道の要旨は、納豆、みそ、豆腐といった大豆製品を食べる頻度と一日当たりの量を調査。その結果納豆を一日当たりに最も多く食べる人は、全く食べない人、みそ汁などみそ系食品をよく食べる人、豆腐をよく食べる人に比べ循環器疾患の死亡リスクが低いという内容です。
この記事を読んで、「これはサプリメントのナットウキナーゼ関連業者にとっては、最高の販売促進データとして使える、と考えるだろうな」と思いました。「納豆に含まれるナットウキナーゼは血栓を溶かし脳卒中や心筋梗塞対策サプリメントとして優れている」ということが、国立がん研究センターによって証明された、と言うに違いないと考えました。
驚いたことは、翌朝のTV番組では、この発表内容を紹介し、その根拠として「納豆に含まれるナットウキナーゼやポリアミンの効果です」と断定的に言っていたことです。
そこで国立がん研究センターのホームページを開き、この論文を検索してみました。結果は案の定、論文のどこを見てもナットウキナーゼやポリアミンという単語は一切載っていませんでした。
考えたいことは、TV番組は論文内容を検索せず、新聞記事を引用し、さらに世間でまことしやかに言われていることをそのまま電波に流していることです。電波による市民に与える影響などは全く考えてもいないのでしょうか。
新聞記事は、「納豆などの発酵食品は、栄養素が製造過程で失われにくく、動脈硬化の予防につながっている。みそは塩分が影響し、豆腐は加工で栄養が少なくなっているのではないか」とありますが、ナットウキナーゼについては全く触れてもいません。
ナットウキナーゼは大豆の持つたんぱく質からできた酵素で、研究者によって意見が異なりますが、2万とか3万という分子量で構成されています。またこれも研究者によっては異なるのですが、腸で吸収可能な分子量は大きくても3000前後です。よってナットウキナーゼは粉々に分解されないと腸から吸収され血中に溶け込んでいくということはありえないことです。腸に吸収された粉々の元ナットウキナーゼが、再びナットウキナーゼとして再構築されるかというと、そのようなことはありえません。アミノ酸として吸収されるのです。分子栄養学に詳しい方にお聞きしたところ、ナットウキナーゼだけでなく、世間で言われている健康と美容に効果あるという多種多様の酵素類は、食べた後(腸から吸収された後)期待している効果が出るのかは極めて疑問ということです。その根拠として、それぞれの酵素の分子量の大きさを言っています。ただし痛み改善などでどうしても必要な場合は、注射により局部へ直接届くようにする方法を選ぶべきです、とも言っておられますので、専門家に相談することをお勧めします。少なくともナットウキナーゼの過信は止めましょう!