第710話 新・江戸蕎麦ごちそう帳
江戸ソバリエ協会は江戸東京野菜コンシェルジュ協会や更科堀井さんと協力し合って、蕎麦屋さん&生産者さんを応援する会を立ち上げ、「新・江戸蕎麦ごちそう帳」シリーズを提案している。
第1回目は「品川蕪」をつかった《品川かぶ そば》だった。
第2回は、大竹先生に立川産の「東京うど」を選んでもらった。
「うど」は数少ない日本原産の野菜の一つらしい。東京では現在の杉並区井荻地区の農家が栽培を始め、武蔵野地区に広まった。光を当てずに育てる「軟白うど」は 明治になってから生産され、今では立川が主要産地だという。
そこでより地域性を訴えるために、私たちは「立川うど〇〇」という商品名にすることにした。
創作は林幸子先生(料理研究家・江戸ソバリエ講師)、提供店は次の4店舗である。
*神田まつやでは《立川うど冷やしそば》として4月26日~5月3日に提供。
*更科堀井本店と更科堀井立川店では《立川うど更科冷やしそば》として5月1日~5月7日に提供。
*小松庵銀座店では《立川うどのクリーミーたぬきそば》として5月1日~5月7日に提供。
今回の林先生の創作のポイントは、うどの皮をプロセッサーにかけてトロトロにし、天かすと和えるところにある。そうすると不思議と微妙な甘さが醸し出される。さらに大きく切ったままのうども添えてあるから、逆のシャキシャキ感も体験できるというわけである。
私も、林先生のレシピ説明に同行し、実施期間中は各店舗も巡りをしてみた。
「神田まつや」さんは、たまたまメールをもらった『言問散歩』というミニコミ誌の編集長さんをお誘いした。彼女は更科堀井の会に参加されていた方なのでお会いしたところ、『言問散歩』に何か連載しないかということになった。
その前に、店に入ると江戸ソバリエ北京プロジェクトの木崎さんがお嬢様とお二人で見えていた。お嬢様も蕎麦好きなので、ときどき母子で食べ歩いているとのことだった。卓の上に目をやるともちろん《立川うど冷やしそば》や《玉子焼き》が並んでいた。それを見て、私も久しぶりにまつやの《玉子焼き》を味わった。
「小松庵銀座店」さんは、ちょうど来日していたサンフランシスコの友人絵里さんを誘った。理由は絵里さんのご主人のハロルド・マギーさんに、拙著の『新・みんなの蕎麦文化入門』の上梓をお伝えしてほしいためであった。というのは絵里さんとマギーさんが来日されていたとき「ほそ川」でお蕎麦を食べながら、「いつかアメリカで本を出したいなァ」なんて申上げていたからであった。しかし冗談半分にしろその前に日本で出版しなければと書き始めた、ものの日本文化に深入りしすぎたため、アメリカ上陸なんて夢のようなことはあきらめたが、とにかく「あの日の思い付きが上梓につながった」と御礼を申上げたかったのである。
マギーさんは、食品科学および料理史についての世界的なジャーナリストであるが、彼女もまたフードジャーナリストである。だから《立川うどのクリーミーたぬきそば》はうどの皮もこうして使って特徴を出していると言ったら、即「SDGsね」と反応された。
彼女のコメントも的確だった。
「新時代のクリエイティブなお蕎麦を楽しみました。うどを無駄なく使うのはまさにSDGsですね。シャキシャキ感とネットリクリーミーさが項さして汁と相性ぴつたり。しかも山芋みたいに主張なくお蕎麦の味を活かした絶品でございました。」
と、そこへ林幸子先生が入ってこられたので、テーブルへお招きして三人での楽しい食事会となった。女性は男どもよりコミニュケーション力が高い。お二人はすぐに親しくなられた。
「更科堀井」さんは、ゴールデンウィークで休み中の息子と伺った。店に入ると、ソバリエの寺田さんに「あら、お久しぶりです」と声をかけられた。ご主人とご一緒だった。彼女も《立川うど更科冷やしそば》を注文されていた。私たちも頼んだが、加えて《霧島サーモン冷やしそば》も。
食べていると隣の席に座った男性がご挨拶された。ソバリエの田畑さんだった。彼とも久しぶりだった。
お客さんもいっぱいだ。さすがに老舗店だと思う。
お店を出ると息子が「美味しかった」と言った。父から見て、無口な彼がそう言うから確かだと思った。
今回は前回とちがった形をとった点がある。
前回は野菜の注文を私が受けたものの生産者が多数おられたりして注文・手配・配達システムが一本化できなかったことを反省し、今回は江戸野菜専門店の果菜里屋さんにお任せして一本化した。
また今回は、たまたま店舗さんの都合で日程を同じにしなかったが、お客さんにとっては蕎麦店巡りができるのでよかったと思う。またお店の人も多店舗へ食べに行かれたようだ。
商品名は基本は《立川うど冷やしそば》にしたが、各店舗さんの調理のイメージで少しずつ違いが出たが、これもよかったと思う。
さて、お味であるが、本当にどの店も美味しかった。堀井社長は「今までの蕎麦屋にない味」とおっしゃっていたが、他店の皆様もほぼ同様だった。
ただ違いがあるとすれば、うどの皮をプロセッサーにかけた結果の細かさの触感と、つゆの味とが交差したときどうだっかがあるだろう。だから店舗を巡れば、各店の面白い味覚と触覚の世界へ入れると思う。
最後になるが、今回もチラシ作成をソバリエの黒岩さんにお願いした。各店を回ってみて、次回はテーブルに置けるようにA4版の半分くらいのものも用意した方がいいかなと思った。またまつやの小高社長は「新・江戸蕎麦ごちそう帳」をもつて大きくしてもいいもしれないとおっしゃつていた。
これらのことを参考にして第3回はもっといいものにしたいと思う。
追記:第2回目も山場を過ぎたので報告的な事ことを書いたが、更科堀井立川店は試作品のときにおじゃましながら、本番はまだうかがっていない。明日、行けるかな・・・。
〔蕎麦屋さん&生産者さんを応援する会☆ほし〕