第742話 ある《月見蕎麦》に思う

      2021/10/12  

  栃木に《出流蕎麦》という蕎麦どころがある。
  栃木出身の料理研究家の冬木先生が郷土愛から、その《出流蕎麦》をいろいろ応援されているので、及ばずながら少しだけお手伝いすることがある。
 その一つとして出流の「さとや」さんの創作蕎麦に《出流 白そば》という名前を付けて差し上げたこともあった。
  出流という所は栃木市郊外の山間にある。栃木市駅まで行って、そこからまた一移動しなければならないから、このコロナ禍ではお訪ねすることがなかなかむずかしい。どうされているだろうと思っていたところ、冬木先生から「『さとや』」さんが乾麺を発売されたから食べてみて」と送ってくださった。
  一目見て驚いた。その麺の細さにである。
  さっそくに頂くことにしたが、折しも満月のころだったので《月見蕎麦》にしてみた。海苔は夜空、白身は雲、黄身が満月、緑色の野菜は月下の樹々というう絵である。口にするとやはりその細さが口にやさしく食べやすかった。
  そういえば、乾麺には少し疎いかなと思ったので、翌日スーパーの乾麺売場を覗いてみた。
  すると、『さとや蕎麦』ほどではないが、ほとんどの商品が以前より細麺になっているように見えた。製造技術が進歩したためであろうか。
  今までは乾麺蕎麦を購入するときは、小麦粉より蕎麦粉の量が多いのを買うべしというのが鉄則だと思っていたが、さらに加えて細さも重要だなと思った。

  大げさなことを言えば、4000年前の太古に人間が麺を創り出したとき、噛んで食べるより、つるつると滑りやすいものをと思ってわざわざ麺を開発したのだろう。だとすれば、細麺の方がつるつると食べやすいという麺の目的にかなっているのは当然の理屈だということになるのかもしれない。

追記:つい先日「神田まつや」の小高社長が乾麺の茹で方をご指導されていましたが、そのときに乾麺は某社の「〇〇」が美味しいとすすめおられました。

〔江戸ソバリエ協会 ほし☆ひかる〕