第756話《ジビエ・カレー蕎麦》
東十条の「一東庵」でお蕎麦とカレーの会が催された。
といっても、お馴染みの出汁の効いた蕎麦屋の《カレー蕎麦》ではない。いわゆる《ジビエ・カレー》と日本の蕎麦である。
《カレー》は〝黄色い魔女〟といわれるくらいハマったら癖になる。それにジビエである。こうした面白い企画を立てたのは有名店の「beet eat」(喜多見)、「一東庵」(東十条)、「ら すとらあだ」(中野坂上)のオーナー料理人たち。
お目当てのカレーは、牡蠣と、猪の肉と、月の輪熊の肉の三種。それに産地別の蕎麦の、細打ちか、太打ちか、平打ちを希望して、付けて食べるが、カレーは挽肉にしてあるから食べやすいし、またたいへん美味しかった。
「beet eat」さんの話によると、猪も熊も雑食だから、肉の臭みを避けたいため、なるべく植物を食べている猪熊を食材にするという。で、それをどこで見分けるかというと、生息地の環境らしい。辺りに植物の食べ物が多い地区の猪熊を狩るという。なるほど、である。
こうしたジビエが、少し前から注目されているのは、野生動物は飼育動物に比べてサッパリした脂味がするからだろう。人間によって餌(穀物など)を与えられて飼育された動物はいわゆる「脂がのっている」。この脂がのっているということはオメガ3よりオメガ6が多いということであり、そのため心臓病などの原因となる。その点、野生の植物(牧草など)を食べている動物はオメガ3とオメガ6のバランスがいい。なぜそうなるのか、まだメカニズムは解明されていないため、現在は〝自然の摂理〟だと説明されている
人類が植物の栽培や動物の飼育を始めて約1万年後、いま栽培と飼育について見つめ直しが始まったところであると解釈していいと思う。
さて、《ジビエ・カレー蕎麦》である。先ずは産地別の蕎麦を江戸蕎麦流に何も付けず、細打ちは喉越しで風味を、太打ち、平打ちは噛んで味覚を楽しんだ。
次は《ジビエ・カレー》を付けていただいたけれど、カレー汁の味は強いから産地別が気にならなくなる。それより、麺の太い細いが関係するように思えたので、細打ちはカレー汁に付けて絡ませ、太打ち、平打ちはパスタ流に和えて、美味しくいただいた。
今日の企画はインド象と日本猿の組み合わせのような面白さがあったかもしれないが、新しいことに挑む三名の姿には心から拍手をおくりたい。
《江戸ソバリエ協会 ほし☆ひかる》