年頭挨拶 キリンビール代表取締役社長堀口英樹

      2022/01/06   執筆者:編集部

年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。また、旧年中のご愛顧と格別のご支援に心から厚く御礼を申し上げます。昨年は、一昨年に引き続き、長期化する新型コロナウィルス危機への対応を軸に経済・社会が変動し、個人や企業はコロナ禍がもたらす様々な環境変化を乗り越えていく方策を必死に模索せざるを得ない一年でした。一方で、世界各地のワクチン接種が進み、コロナ影響をコントロールしつつ経済活動の再開や回復を目指す動きが顕在化したことで、世界経済は徐々に回復への歩みを始めています。日本においても、緊急事態宣言等が解除された昨年10月以降、感染者数の低位推移を背景に、飲食・旅行等の外出関連産業を始め経済全体が緩やかな回復基調にあります。今後、各種の政策効果も期待され、回復ピッチは 早まっていくことと思いますが、コロナ禍の収束がまだ見通せない中、当面はコロナ対応と経済活性化をバランスさせていく「ウィズコロナ」環境下の柔軟な対応や挑戦が求められると思います。その中で注目すべきは、コロナ禍を通して、社会の行動様式やお客様の意識が不可逆的に大きな変化をしたのではないかという点です。リモート手法を活用した就労・就学環境の変化、家庭内消費の拡大や健康志向の顕在化、消費志向の二極化の進展など、今後の事業展開を進める上で極めて重要なファクターだと考えています。酒類業界をみますと昨年は年初からコロナ禍による外出・営業自粛が間断なく続き、飲食関連市場は一昨年同様に極めて大きな打撃を受けました。10月以降、外出や営業自粛が概ね解消に向かったことで飲食市場への客足が戻り始め、需要は徐々に回復の兆しを 見せていますが、年間を通した販売規模は残念ながら前年同様に縮小しています。一方、家庭用市場は引き続き堅調に推移しました。特に、一昨年10月のビール類酒税の第一弾の改定により店頭価格が下がったビール缶の伸びが目立ちました。ただ、飲食関連市場の減少分を家庭用市場の伸びで十分には吸収しきれなかった他、RTD・ハイボールへのカテゴリーシフトも継続したことで、ビール類市場全体は2005年以来17年連続の対前年割れとなったと思われます。 このようなコロナ禍の厳しい環境の中、当社は「お客様のことを一番考えて、お客様に寄り添う」という従来からの一貫した指針に基づいて事業活動を展開しました。 また、コロナ禍という未曽有の環境変化に直面したことで、キリンビール社としての存在意義を再認識し、「世のため人のために取り組み、世の中に笑顔と幸せをもたらしたい」という想いをあらためて強くしました。このようなマインドに、「強固なブランド体系の構築」「新たな成長エンジンの育成」という戦略を掛け算して成果を創出し、お客様から最も 愛される会社を目指してきました。ビール類では、2026年のビール類酒税一本化以降も愛される強固なブランド体系を構築すべく、定番カテゴリー「一番搾り<生>」「本麒麟」、健康志向カテゴリー「一番搾り 糖質ゼロ」「淡麗グリーンラベル」、そして高付加価値カテゴリーとして「スプリングバレー 豊潤<496>」等のクラフトビール商品のブランド強化に注力しました。当社独自の一番搾り製法による「澄んだ麦のおいしさ」を一貫して訴求した「一番搾り<生>」缶商品が大きく伸長した他、「おいしさ」と「糖質ゼロ」の両立というお客様がビールに期待する新しい価値を実現した「一番搾り 糖質ゼロ」は、年間販売目標を上方 修正するほどのお客様のご支持をいただきました。この結果、一番搾りブランドの缶商品トータルが対前年2割を超えて拡大できたことは、今後のビール再成長に向けて大きな 成果を得られたと思います。また、「ビールってこんなにおいしかったんだ」という感動体験をお届けすることを 目指した「スプリングバレー 豊潤<496>」が、付加価値を求めるお客様のニーズに応えて発売後半年で100万箱(大壜換算)というクラフト商品としては異例ともいえる 販売数量を達成したことも、ビールの魅力化に大きく貢献できたものと考えています。ただ、ビール類トータルでは、コロナ禍による飲食関連市場の縮小の影響が大きく、 一昨年に続き前年を割り込む結果となりました。RTDについては、主力ブランドである「氷結®」や「麒麟特製レモンサワー」、高付加価値商品「麒麟 発酵レモンサワー」のブランド強化に注力しました。特に、上方修正した年間目標を達成した「氷結 無糖」、「うまさ」と「上質感」に大きなご支持をいただいた「麒麟特製レモンサワー」の好調は、当社のRTDカテゴリー全体を牽引しました。また、お酒づくりの原点である発酵に着目した「発酵レモン果汁」を 使用することでレモンの格別なおいしさを引き出した「麒麟 発酵レモンサワー」が  高付加価値商品としてのポジションを確立できたことも将来に向けた成果となったと思います。この結果、当社のRTDカテゴリー全体は、市場の伸びと同水準のプレゼンスを 確保できたのではないかと考えています。洋酒につきましては、「ジョニーウォーカー」「ホワイトホース」両スコッチブランドの価値浸透が進んだ他、旺盛な家庭でのハイボール需要を背景に店頭露出も強化されたことで量販市場での販売が伸長しました。さて、本年についてですが、お客様のことを一番考えて常にお客様に寄り添いながら、お客様の要望や困りごとに事業として果敢に取り組み、自社も一緒に成長するというCSV経営を揺ぎなく一貫して推進していきたいと考えています。そして、「強固なブランド体系の構築」「新たな成長エンジンの育成」という変わらぬ戦略との掛け算で1つ1つ結果を積み上げていきたいと思います。例えば、昨年から本格的に展開を開始した2タップタイプで小容量の新たなサーバー「TAPPY(タッピー)」は、おいしいビールが提供できる、オペレーションが手軽、商品ロスが少ないなど、飲食業界の困りごとを解決するCSV経営のモデルと考えています。未だ収束が見通せないコロナ危機はもとより、酒類業界を取り巻く環境は本年も厳しい ものと予想されますが、弊社は常に「お客様にもっとも愛され、信頼される会社」になることを目指して挑戦を続けたいと思っています。お客様が求める新たな価値を弛まずに 提案し、ビール類をはじめとした酒類市場全体をさらに魅力あるものにすることで、酒類総需要の拡大、そして将来に向けた業界の発展に邁進していく所存ですので、皆様からの一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。末筆ではございますが、新しい年が皆様にとって幸多く素晴らしい一年となりますよう心からお祈り申し上げ、年頭の挨拶とさせていただきます。令和4年(2022年)1月吉日。