第837話 第6回全日本・食サミット「REBORN」
新大阪駅から大阪駅へ行って環状線に乗り換え、大正駅で下車した。
そこから第6回全日本・食サミットに参加するために歩いて会場のハグ・ミュージアムへ向かう。
大阪は川が多い。昨夜ホテルのベッドの中で読んだ宮本輝の『泥の河』は、堂島川と土佐堀川がひとつになって安治川となる所に架かる昭和橋、端建蔵橋、船津橋辺りに住む戦後少年の物語だった。
だが今、私は木津川と尻無川が交差する所の「若松橋」を渡っている。橋は入口となる方が漢字(「若松橋」)で記してあり、出口はひらがな(「いわまつばし」)で書いてあるから、どの方向が街の中心かが分かる。と思いながら、橋を渡った所が大阪ガスのハグ・ミュージアムだった。隣接して異様にモダンな京セラドームが大きく横たわっていた。
開会式で村田吉弘理事長(「菊乃井」)がこう言われた。
現代はSDGsや CO2や後継者問題が喫緊の課題であることは皆が認めることだと思いますが、食の世界でこの問題と向き合ったのは、この「食サミット」が最初です。これからは勉強する料理人が食の世界を変えていく時代だと思います。
続く「レストランのこれからを考える」では、小沢善文(中華料理「Wakiya」)、一木敏哉(懐石「いっ木」)、片山城(日本料理「心根」)、前田元(レストラン「MOTOI」)の外食店への熱く思いが真剣に語られたが、残念ながらあの席に蕎麦屋さんがいない。昨日の「日本イチの蕎麦会」のメンバーなら充分実力があるのだと思うが、蕎麦界が日本の全食界のメンバーに入っていない。そこが蕎麦界の問題点であるのかもしれないから、両者に橋が架からないものかと思ったりした。
ところで、食サミットに今日参加したのは、「植物性“超”動物感~油脂とたん白がおりなす味覚革命~」を聴講するためだった。
私たちが動物性食品に満足している原因は、動物の「油脂とたん白」にである。ではそれを植物性でにしたらどうなるか。それが「植物性油脂と大豆たん白」である。しかしそれでもやはり物足りない。そこで「肉らしい風味」を加えたらよいではないかと、その肉らしい風味を不二製油が開発し、「MIRA CORE」と名付けた。
そして今日は、その「MIRA CORE」を使った蕎麦つゆ、ラーメンのスープ、料理のソースが試飲できるというの。蕎麦つゆは江戸蕎麦の老舗店「更科堀井」の堀井良教氏が、ラーメン・スープは塩ラーメン「龍旗信」の松原龍司氏が、料理のソースは「ONODERAグループ」の杉浦仁志氏が調理して供してくれた。つまり蕎麦つゆで例示すれば、鰹出汁を使わないで、更科堀井の返しに「MIRA CORE」を加えて蕎麦つゆを作るのである。実際に味わっても遜色はない。堀井社長は、「いわゆるビーガンの発想はこれから世界に通用すると思う」とおっしゃる。まさに講座のお題どおりの味覚革命が始まろうとしているようである。
食サミットは他の部屋でもたくさんのプログラムが進んでいる。私も幾つか聴講した。
夕方になった。せっかくの大阪だから何処かで蕎麦を頂こうと思ったが、生憎と目指す店は日曜日のために昼だけ営業とか、休日とかだった。
そこで思い切って堺市まで足を伸ばすことにして、大正駅から環状線で天王寺駅へ行って、そこから阪堺電車に乗った。そのご報告は次の頁で・・・。
〔江戸ソバリエ協会 ほし☆ひかる〕