健康ニュース 8月15日号 猫いらず&血液サラサラ
健康講演会などで参加者から「血液サラサラ」に関する質問を受けることが時々あります。この類の質問をされる多くの方は、血液をサラサラにする治療薬やサプリメントを使っていることが多いと言えます。例えば、「EPAを飲んでいますが血液検査ではあまり改善されていませんので、もう少し大目に飲んでみたいのですが・・・」
血液サラサラを限りなく進めていくとどういう状態になるのでしょうか?
小子が小学生のころ、ネズミを駆除するために大人たちは「猫いらず」という殺鼠剤を家の周りや天井裏のあちこちに置いていました。
その猫いらずの主原料はワーファリンという血液をサラサラにする製剤であったことをご存知でしたか?
ワーファリンは当初、殺鼠剤の主成分として使われていたのです。ワーファリンを口にしたネズミは、血液がサラサラになり過ぎて、体内のあちこちの箇所での出血が重なり死んでいくのだそうです。
患者にワーファリンを投与するドクターは、薬効が強すぎてもいけないために再三にわたり血液状態をチェックしているはずです。適正な投薬量が分かるまではかなり日時を要します。必ず医師の指示に従ってください。
ワーファリンに関してもう1つの話題を・・・。
「私はワーファリンを処方されて飲んでいるのですが、同じワーファリンを飲んでいる友人は納豆を食べても良いと言われています。私は先生から納豆は絶対に食べてはダメと言われているのですが、同じ薬でも納豆を食べてよい人とダメな人がいるのでしょうか?・・・」
この質問を受けた時最初は「えっ?そんなことないだろうに」と思いました。良く聞いてみた結果、質問者の友人が飲んでいる薬はバファリン(アスピリンが正式名称)でありワーファリンと発音が似ているために聞き間違いであることが分かりました。
バファリンは、血小板という血液の固まる材料の働きを抑え血栓ができにくくする作用があります。つまり血液をサラサラにしていきます。
血栓ができるには複雑な仕組みがあります。その一つにビタミンKの作用があります。
ビタミンKは血を止める、つまり血栓を作るという作用があります。ワーファリンはその作用を防ごうとします。つまり血栓を作らせないようにします。したがって結果として血液がさらさら状態になるわけです。この効果をうんと引き下げるのがビタミンKで、納豆には豊富にビタミンKが含まれていますから、ワーファリン服用者は納豆を食べてはいけないということになります。
納豆だけではありません。ビタミンKの多く含まれている青汁やクロレラ系サプリメントも対象となりますので注意しましょう。意外な飲食物では、日本茶の玉露、抹茶と海苔などもビタミンKが多く含まれています。
このワーファリンですが、「殺鼠剤を十分注意して使用するとはいえ、人の治療薬に転用するとは何事ぞ!」と当時はなかなか浸透しなかったそうです。何となく理解もできる気もしますが・・・。
このワーファリンが治療薬として知名度が上がったのは、アメリカ合衆国のアイゼンハワー元大統領が心臓発作を起こした時に処方された結果とのことです。
今一度「血液をサラサラ状態にする」ということを考え直してみたいですね。血液はサラサラ状態になり過ぎてもいけないということ、他人事としてはいけないと思います。 TVなどのEPAのCMもそういう観点で見ると面白いかもしれません。
取材を続けていくうちに面白い話を聞きました。ネズミの世界ではワーファリンに耐性ができ上がり、最近では東京近辺のネズミの8割以上がワーファリンに対する抗体を獲得しており、殺鼠剤としての効力は皆無に近くなっているそうです。これらのネズミを、スーパーラットと言っているそうです。 近 竹将