<コンビ二創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第3回

      2017/01/27  

<ローソンオーナー福祉会活動の思い出>(その3)

「人生設計セミナーについて」②

人生設計セミナーの基本カリキュラムは、加盟店オーナーさんたちのための生き甲斐作り、健康管理、家計計画などをテーマとした「生涯生活設計」の提案や相談が中心であり、その都度、それぞれのテーマ毎に、外部の専門講師にお願いすることとした。

これらのカリキュラムは、オーナーご夫婦のみなさんに、生き甲斐、健康、経済の面から、現在の生活状況を再確認してもらい、研修を通じて、お互いの語らいの中で、将来の豊かなライフプランの設計に役立てていただこうというものであった。

お店の経営問題に関しては、セミナー開催の度ごとにアンケートをとり、加盟店からの要望が多かったテーマを選んで、私が「コンビ二の現状」と題してお話させていただくのが恒例であった。

今振り返ると、ローソンの、その時々の発展段階に応じた内容になっていたと思う。

二つだけ例を挙げてみよう。

一つは、平成6年(1994)6月、福岡シーホークホテルで開催された「人生設計セミナー」での講義である。

この年DCVS(ダイエー・コンビニエンスシステムズ)は、合併満5年、「ローソン創業20周年」を迎え、「5000店舗を達成」して成長のピークにあり、意気軒昂そのものであった。

ダイエーグループも、阪神大震災前のことでもあり、その数年後に起きる急激な厳しい展開など、全く予想もしていない頃であった。

日経流通新聞が、「コンビ二独り勝ち」というキーワードを、紙面で頻繁に使いはじめるのも、その頃であったと思う。

私は、人生設計セミナーの席上、そのような業界の状況を説明した後、

【 これからのコンビ二進化の方向は、<ストアからステーションへ>にあると確信する。

我々フランチャイズチェーンの本質は、「使命共同体」プラス「システム共同体」の実践を通じて、「利益共同体」を実現することである。

我がローソンが目指す使命は、第一に、「ナショナル・デイリーライフライン・ネットワーク」を構築することである。

それは、次の三つの基本機能を統合的に追求し、漸次、具現化していくことである。即ち、

①・「エブリディライフ・コンビニエンス」の提供=地域の日常生活サポートステーションを作り上げること

②・「パブリックサービスライフ・コンビニエンス」の提供=地域の公共生活サポートステーションを作りあげること

③・「インテリジェントライフ・コンビニエンスの提供」=地域の快適生活サポート・ステーションを作り上げること

そして、この高い「使命=志」を具現化するためには、

第二に、地域のお客様の「日常生活に蜜着する努力」が不可欠であり、最新IT技術の活用によるシステム化、情報武装化、「便利性の精度向上」「今日的便利性の深化と進化」の絶えざる追求こそが欠かせないのである。

この「使命共同体」と「システム共同体」の同時並行的実践こそ、『21世紀商人道』そのものであり、加盟店と本部の共存共栄の道である。】、

と強調し別掲の如く、提言シート[1][商売の質を高めよう]と[2][商売の質を変えよう] を提示し配布した。

二つ目の例は、その7年後の平成13年(2001)4月、別府湾ロイヤルホテルで開催された「人生設計セミナー」での講義内容である。

21世紀を迎えて、20世紀が「戦争の世紀」といわれたのに対し、明るい「希望と平和の世紀」になることを大いに期待されたのだが、今日現在に到るも、21世紀の最初の10年を見る限り、残念ながら、全く期待通りになっていないのは衆知の事実である。

21世紀初頭のこのころ、日本はバブル崩壊後、「構造不況の10年」といわれ、その間、日本経済は「債務過剰・設備過剰・労務過剰」の三つの過剰に苦悩し続けていた。

グローバリゼーションの急速な進行による世界競争が強まり、流通業界も、オーバーストア、消費不振、デフレスパイラル、売り上げ不振などが続き、聖域なきリストラによる、サバイバル競争の時代に突入しており、さしものコンビ二業界にも波及し始めていた。

特に、この年9月、ニューヨークで発生した「9・11テロ」により、その後の世界は、さらに様相を、暗く、厳しく急変させていくのである。

4月には未だ「9・11テロ」は起きていなかったが、ローソンにとっては、テロ並みの大震動が起きていた。

1年前の平成12年(2000)に、東証一部上場を実現していたが、それを契機として、大株主がダイエーから三菱商事(株)に替わっていたのである。

それはダイエー本体そのものの生き残りのために取られた方策の一つであったけれども、その詳細に付いてはここでは触れない。

セミナーに参加したオーナーさんたちは、誰も皆、「今後どうなるのだろうか」と、不安な面持ちであった。

私は、「今日は皆さんに、「元気の素」を贈りたい」と、話はじめた。

【 我々は、21世紀の激変の時代に生きていることを覚悟しよう。

最近の日本経済の環境は、「上りのエスカレーターから、下りのエスカレーター」に変質しており、今や淘汰の時代が始まっている。

このような「厳しい逆境への対応の仕方」には、三つの姿勢があると思う。即ち、

①・仕方がないと「諦める」

②・何とかなるさと「傍観する」

③・現実を直視して、苦境を打開するために、「自ら挑戦し闘う」、の三つである。

我々は当然③の「闘う生き方」を選択する。

<闘う生き方の条件>は

1・自主・自力・自助=ここが勝負と力を出し切り、商魂商才を発揮すること

2・ネットワ―キング=仲間と心と力を合わせ励ましあうこと、である。

いまこそ<ローソン・ルネサンス>の時であり、それぞれのお店が、「日販向上作戦」を積極的に推進しなければならない。

「日販」=「客数」×「客単価」であるから、日々の商売の中で、「客数増加作戦」と「客単価向上作戦とを、具体的に、地道に継続・実行していくことで、必ず成果がある。】

と強調し次のように、サクセス事例を提示した。

   

この「日販向上作戦」の手引きは、私がその後、ローソン親善大使として平成14年(2002)から約4年間、全国各地のローソン店を、毎週のように激励訪問した際にも、それぞれのオーナーさん、店長さんたちに直接お会いして、じっくりお話しさせていただくことになる内容と同じものであった。

このことはまた別の機会に書こうと思う。

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