<コンビ二創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第25回
2017/01/24
「懐かしのローソン東富士ゲストハウス時代(1994~2002)(その6)
<社員研修に付いて>(その2)
「定期入社・社員研修」
従来ローソンでは、毎年4月入社の学卒社員の研修は、伊豆長岡・熱川ハイツなどの大規模宿泊施設で行われるのが通例であった。
「定期入社・社員研修」が、東富士ゲストハウスを中心に開催し始めるのは、確か1997年からである。
<ゲストハウスでの1997年度定期入社時研修写真>
私のゲストハウス在任中の「定期入社・社員研修」の軌跡は、確か次の通りであったと思う。
《年度》 《場所》 《人員》
1994年度(平成 6年)・シェラトン・グランデ・トーキョーベイ 149名
1995年度(平成 7年)・熱川ハイツ & 東富士ゲストハウス 147名
1996年度(平成 8年)・熱川ハイツ & 東富士ゲストハウス 124名
1997年度(平成 9年)・東富士ローソン・ゲストハウスと熱川ハイツ223名
1998年度(平成10年)・東富士ローソン・ゲストハウスと熱川ハイツ307名
1999年度(平成11年)・東富士ローソン・ゲストハウス 160名
2000年度(平成12年)・東富士ローソン・ゲストハウス 156名
2001年度(平成13年)・東富士ローソン・ゲストハウス 170名
2002年度(平成14年)・東富士ローソン・ゲストハウス 101名
と云っても、当時ローソンの急成長に伴い、新入社員数は年々増加し、1998年度が最大人数(307名)であったから、数年間は、ゲストハウス大講堂で入社式を行い、その後、伊豆長岡の熱川ハイツなどに分散宿泊し、バスで移動して集合研修を進める状態であったと思う。
ゲストハウスだけに集中して「定期入社・社員研修」が出来るようになったのは、1999年度からであった。
この研修は、ローソンマンとしての基本的心構え、基礎的知識と基本スキルの習得が目的であり、10泊12日にわたる長期合宿研修であった。
この間は、加盟店研修は行われず、全国のトレーナーたちも総がかりで、この研修に対応した。
合宿第一日に、マナー及び規律訓練の後、大講堂で入社式が開催された。
社長はじめ役員ならびに、フランチャイズ加盟店代表としてロ―ソン・オーナー福祉会理事長と社員代表として労働組合委員長が参列して、入社訓示及び祝辞を延べ、配属辞令の交付が行われるのが恒例であった。
その夜は歓迎の食事会であった。
新入社員たちは、緊張してはいたが、若さに溢れ、未来への希望に燃えて、生き生きと瞳を輝かせていたものである。
本格的研修は翌朝からである。
私は、研修初日の「開講訓示」を担当した。
2001年度「定期入社・社員研修」時の記録が手元にあるから、その骨子を紹介しておきたい。
冒頭、10分ほど英語でスピーチした。それに引き続き、次のような話をした。
<開講訓示レジメ>
「開講訓示」
【 ローソンの21世紀・第一期生であるフレッシャーズの皆さんに、入社のお祝いを申し上げると共に、諸君への期待と研修に望む心構えに付いてお話したい。
今日は、三つのポイントでお話したいと思う。
第一のポイントは、『時代と人生』『世代の役割と使命』、
と云うことに付いてである。人間は歴史的な存在である。
時代に制約されると同時に、時代を創っていく存在である。
著名な歴史家・トインビーは、
『人類の歴史は、チャレンジ & レスポンスの歴史である、
と述べている。
私と皆さんは広い意味では同時代を生きているように見えるが、
私の生きてきた時は、主に20世紀の後半、昭和の戦後時代であり、
焼け跡からの復興、そして高度成長と日本経済の絶頂期を
生きてきたといえる。
流通人生45年、コンビ二創業世代として時代の追い風にのリ、
無我夢中.使命感のみで生きてきた。
しかし、皆さんが生きていくこれからの時代は、
少し様子が違うように思う。
このところの日本は、バブル崩壊と失われた10年を経て、
21世を迎えてなお、危機と不安の時代に遭遇している。
政治は混迷し、デフレと雇用不安で、
世の中心配なことだらけに見える。
ある意味では、幕末期の志士たちと同じような
《危機の時代》を迎えているように見えるのである。
となれば、皆さんは、
新しい21世紀を切り拓き発展させていく、
《志士の世代》なのではないかと思う。
それぞれの世代が持つべき使命は、
前の世代から受け継いだ歴史的遺産を、正も負も含めて受け継ぎ、
新しい価値創造を加えて進化・発展させ、
次の世代、後世に引継いでいく役割と使命があると確信する。
その意味では、皆さんは、ローソンの21世紀を切り拓く
《志士の世代》である、と申し上げたい。
第二のポイントは、『コンビ二の進化はこれから始まる』、ということである。
コンビ二は、今や日本流通の主役の一つとなり、
国民の暮らしになくてはならないライフラインと
評価されるまでになっている。
それも約30年そこそこの間の急成長によってである。
だが、このところ経済ジャーナリズムなどで、
コンビ二飽和論やコンビ二成熟論、コンビ二限界論などが、
散見されるようになっている。
皆さんは、これに惑わされてはならない。
コンビ二業態は未完成であり、
いまだに進化の過程の中にある。
皆さんはこの研修の中で、
流通の歴史をよく学習する中で、コンビ二の急成長の要因と、
これからの戦略課題を的確に把握して頂きたい。
迎えた21世紀は、本格的な生活者主権の始まりといわれる。
ローソンは、日本の生活者主権の時代を切り開く
パイオニアでありたいと思う。
皆さんこそ、その担い手である。
第三のポイントは、皆さんに「自分自らを磨き上げてもらいたい」、
ということである。
そのために、「フレレツシャーズへの五つの提言」をしたいと思う。
《五つの提言》とは、
1・応用の利くコアスキル(得意技)を身に付けよう!
人にはそれぞれ持ち味がある。その人にしかない素質がある。
与えられた職場で、自らの適性を見つけ、潜在能力を磨こう。
2・企業家精神(=チャレンジ精神)を養おう!
高い目標、新しい価値創造、現状改革への
粘り強い挑戦心を養おう。
3・商売は実践なり。現場で経験をしっかりと積もう!
基本動作を徹底的に習得し、実務能力、実行力を高めよう。
4・リーダーの条件(=戦略的思考と科学的思考)を学ぼう!
全社的視野で担当分野の競争優位を高める力を養うこと。
現状を論理的に分析し、戦略を言葉で、
体系的に説得できる力を磨こう。
5・読書と自己啓発で、自分の価値を高めよう!
将来的に目標を持ち、計画的に自分を成長させること。
広い社会的視野と、自分の考え、自分の主張を持とう。
ということである。
冒頭、MESSAGE IN、ENGLISH と云うことで、
英語で間単に挨拶したが、別に気取ったわけではない。
これも『21世紀のザ・プロ」』への挑戦のつもりである。
グローバリゼーションの進行、メガコンペティションの時代、
世界に通じるプロ商人として、外国語で自己主張し、
堂々とディベート出来る商人を目指して もらいたい、
と思うからである。
皆さんの先輩の一人として、
21世紀の主役を担う若きフレッシャーズ諸君に、
心からの期待と激励を贈り、 開講訓示としたい。 】
開講式を終えると、10日間にわたって厳しい初期研修の日々が続く。
カリキュラムに従って、知識とスキル研修は勿論のこと、身だしなみ、姿勢、挨拶の仕方、
言葉使いなどのマナー訓練、そして業務用語、報・連・相のあり方、整理整頓・定物定位などの作業訓練や、
POS & ストアコンピューター操作訓練のほか、団体行動、チームワーク訓練など、
ローソンマンとしての基礎を徹底的に叩きこまれるのである。
研修が進むにつれ、新入社員たちの顔つきが、凛々しく引きしまってくるのが目に見えて頼もしく感じられたものである。
研修最後の打ち上げパーテイは、役員も参加して、若さ溢れる笑顔と爆発するようなエネルギーに満ちたものであった。
パーテイを終えると新入社員たちは、順次送迎バスに乗り込み、意気揚々と三島駅経由
で、それぞれの任地へと向かうのである。
私は、トレーナーたちと玄関口に勢ぞろいして、「頑張れよ!」、と力の限り手を振って見送ったものである。。
新入社員たちはそれぞれの任地で、さらに一定の期間、店舗実習を体験して、店舗運営を体得していくのである。
ゲストハウス研修を終えてからが、コンビ二の運営の現場力を実質的に身に付けていく、
本番の研修ともいうべきであったろう。
新入社員に付いては、半年後、1年後と、フローアツプ研修が行われ、彼らの成長を
丁寧に見守り、育て上げる体制が布かれていたと思う。
1990年代に入社した社員たちは、今では30代後半から40歳代前半の働き盛りでなっていよう。
恐らく、ローソンの現在を支える経営中枢幹部、あるいは、第一線幹部として、
大いに活躍してくれているのではあるまいかと、密かに期待している。
参照に、新生『DCVS・合併第一期生』に当たる、1990年度定期社員の入社式の写真も掲載しておきたい。
<1990年度ダイエー・コンビニエンス・システムズ入社式写真>
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