健康ニュース 6月15日号 「食の常識に異論あり!」

     

高齢者を対象とした健康教室で良く受ける質問について考えてみます。

相変わらず多いのが、高齢者のたんぱく質摂取については、魚のほうが肉よりも健康的という決めつけが多いようです。

 その理由としては、高齢者は消化力なども若い時に比べると劣化しており、胃もたれが少ない魚のほうが胃にやさしいとか、魚には健康的な油脂が多いと言ってきます。その中には、相も変わらずコレステロールを懸念している方が相当数おられます。

 魚が健康的でないというのではありませんが、肉が健康に与える恩恵について今一度考えてみませんか。

この機会に、野菜をたっぷり食べて肉は控えめに、という食事内容をじっくりと考えてみましょう。

 年々高齢化が進む日本。その我が国において平均寿命も健康寿命も少しずつではありますが延びている中で、多くの専門家が懸念するのはサルコペニアという生活機能障害に陥る高齢者が増え続けていることです。体を作るたんぱく質が減ると、つまり肉を食べる習慣が減り続けると、目に見えて筋肉量が減り、結果としても栄養指導の目標の一つであるアルブミン値が下がります。これは結果として免疫系統にも支障をもたらし老人性肺炎などが増え続けているという結果をもたらせております。

 1995年に発表された低栄養予防のための食生活指針14カ条には最初の6カ条に、①3食のバランスをよくとる②動物性たんぱく質を十分にとる③魚と肉の摂取は1対1の割合に④さまざまな種類の肉を食べる⑤油脂類を十分に摂取する⑥牛乳を毎日飲む(以下略)、と動物性たんぱく質、つまり肉を摂取することを強調しています。

ということは今から20年以上前から、魚と同じくらい肉を取ろうという目標がたてられていたにもかかわらず現代でも「肉より魚」ということをかたくなに信じている要因はどこにあるのでしょうか。

小子の本棚の隅っこには管理栄養士の著書「粗食のすすめ(新潮文庫)」がほこりをかぶった状態で並んでいます。この著書がベストセラーとなり、多くの国民に誤解を与えた結果と言えば大げさな表現になるでしょうか。思えばメディアも競って粗食が健康のもとというたぐいの番組と記事を流し続けていたような気がしますが・・・。

 現在も資格があるなしにかかわらず様々なところで高齢者を対象に「肉より魚を!」と言っているオピニオンリーダーがいるのではないでしょうか。

 肉を食べることによってコレステロール値が気になるという人が多いのも気になります。「脳卒中データバンク2015」では、コレステロール値の高い人の脳卒中発症率は、そうでない人の1/3とあり、コレステロール値の高い人ほど脳梗塞のリスクは減少するとあります。

 桜美林大学・柴田博名誉教授は、百寿者の食生活の特徴として、低カロリー・高たんぱく食であると同時に、一般人の総たんぱく質に占める動物性たんぱく質摂取が50%以下であったのに対して百寿者のそれは男女とも60%に近づこうとするものである、と述べておられます。高齢の方々もおおいに肉を食べて、恐ろしい低栄養を追っ払いましょう。

末筆ながら、魚がダメと言っているのではないこともご理解ください。