日本酒の旨味成分「α-EG」の美肌効果 学術的に実証
執筆者:shirai
金沢工業大学バイオ・化学部応用バイオ学科の尾関健二研究室と車多酒造の研究グループは、日本酒に含まれている「α-エチル-D-グルコシド(以下α-EG)」が、ヒトの皮膚真皮層のコラーゲン量を増やすことを、世界で初めて学術的に実証。現在、特許を出願している。
同成分は一般的な日本酒に0.5%含まれている成分。
古来より「日本酒を多く飲用する杜氏、蔵人、力士は肌にハリとツヤがある」と伝承的に言われてきており、この「肌のハリ」には日本酒の成分が関係しているのではないかということから2014年3月より共同研究を開始。
培養細胞を使った実験により同成分に保湿機能があることが発見され、2015年2月に論文として発表された。
今回は、平均年齢22歳の11名のグループ(男性3名、女性8名)と、平均年齢22歳の10名のグループ(男性4名、女性8名)、20代から60代までの11名のグループ(男性2名、女性9名)の3つのグループに対し、「純米酒配合(α-EG濃度 0.09-0.1%)」、「0.1%α-EG試薬配合」と「無配合」のハンドクリームを朝晩2回、左腕内側へ塗布し、週間単位で化粧品開発に使用されている超音波真皮画像装置を使用した真皮中のコラーゲンの密度(以下、コラーゲンスコア)を計測する塗布実験と、平均年齢22歳の学生9名のグループ(男性6名、女性3名)と、平均年齢22歳の学生8名のグループ(男性5名、女性3名)が、同研究のために開発された純米酒(α-EGを1.7%含有)もしくは同じα-EG濃度のノンアルコール清酒、180mL(1合。α-EG 3.06g/日)を8日間飲用。
また20代から40代の社会人の女性5名が、純米酒(α-EG 1.1%含有。α-EG 1.7%含有純米酒を吟醸酒で薄めたもの)を50mL(ぐい呑一杯相当。α-EG 0.55g/日)、6日間飲用し、週間単位で両前腕でのコラーゲンスコアを計測する飲用実験を行った。
その結果、塗布試験では「α-EG無配合」ハンドクリームに比べ、「純米酒配合」「α-EG試薬配合」ハンドクリームは、塗布後2週から3週で、コラーゲン密度が高まっていることが認められ、また、学生よりも年齢が高い方がコラーゲン密度に影響が大きいことが判明し
た。
さらに、学生による飲用試験では8日間の飲用後、1週から4週にわたって継続してコラーゲン密度が高まっており、α-EG 1.1%含有の純米酒50mL(ぐい呑一杯相当。α-EG 0.55g/日)の場合、年齢層が高い女性は、6日間の飲用だけで、1週から6週にわたってコラーゲン密度が継続して高まっていることが認められた。
このことにより、飲用でも塗布でも同成分がヒトの皮膚真皮層のコラーゲン量を増やすことが実証され、さらに飲用実験のほうが塗布試験よりも効果があることが判明した。
これは飲用のほうが塗布よりも毛細血管から真皮層に同成分が浸透しやすく、真皮層の線維芽細胞が活発化し、コラーゲン生産量を増やすためだと考えられる。
同研究成果は9月13日、第69回日本生物工学会(会場:早稲田大学西早稲田キャンパス)で発表が行われ、尾関健二教授は「日本酒復権は20年来の私の夢でした。今回の研究成果は、日本酒業界全体にとって、とてもインパクトのある研究との声が各方面から寄せられています。日本酒の新たな女性層への開拓や新規の飲酒提案などにつなげていければ、これ以上うれしいことはありません」と語った。
また同研究室と同社は、同成分を通常の約3倍量多く含んだスキンケア専用純米酒「shu re」(α-EGを1.7%含有)と、純米酒配合ハンドグリーム「shu re 美容保湿クリーム」(α-EGを0.1%含有)を共同開発。10月1日の「日本酒の日」にあわせて全国で発売される。