健康ニュース 10月15日号 科学的ですか
講師は「バナナやパイナップルといった南の国で採れる果物は体を冷やします。食べ過ぎには気をつけましょう。どうしても食べたい時は、体を温める根菜類も食べてバランスを取りましょう」という趣旨のことを言われました。周りの方々は納得顔です。
講師の話を聴きながら30年以上前の、ある有名百貨店の健康食品売り場での販売員とのやり取りを思い出しました。そのやり取りは次の通りです。
販売員「梅干しは酸っぱく酸性食品ですが、体の中に入るとアルカリ性食品に変わり、とても健康に役立ちます」
小子「体の中に酸性をアルカリ性に変える薬品的な物質でもあるのですか?メカニズムを教えていただけますか・・・」
販売員「?・・。昔からそういわれていますので・・・」
サクラとは思えない周りの方々も白い目で「そんなことも知らないの?」というように小子を見ていました。小子は静かにその場を離れました。二度とこのコーナーでは買わないぞ!という強い決意を持ってです。
食べ物が酸性かアルカリ性かということは、口に入れようが入れまいが、初めから決まっています。その食材の含むミネラルが、どのような成分構成でどのくらい含まれているのかによって、酸性とかアルカリ性に分けられます。
話を最初に戻します。食物が体を冷やすとか温めるとはどういう意味なのでしょうか。その意味を理解していないと、とんでもないことになりかねません。食べたいと思っても誤った先入観で我慢し、後々後悔をすることになるかもしれません。
体を冷やすとか温める食べ物とは、その食べ物がどんなミネラル成分を持っているかによって決まるのだという説があります。産地が北とか南は関係ないというのです。例えば寒い地域で採れるリンゴはどうでしょうか。体を温めると考える方は少ないでしょう。さらにジャガイモはどうでしょうか。食べ物の陰陽学説では、根菜類であるジャガイモは、体を冷やす部類になっております。根菜類だからといって全てが体を温めると考えていませんか。
体を冷やすとか温めるといったあやふやなことに対して、科学的な根拠を求めるのは酷なのでしょうか。
2000年以上前の中国で生まれた食べ物の様々な学説を、固く信じるか否かは夫々の考えで、外部がどうのこうのと言える筋合いではないかもしれません。ただ科学的な根拠を示すことなく、何世紀も前の学説を、健康に不安を持つ人々に対して言い切ることは許されることなのでしょうか。
少し前に「牛乳は体に毒だ。牛乳を飲み続けると良いことはない」とアメリカ帰りの医師が主張し、大論争になったことは、記憶に残っていると思います。信頼できる筋によりますと、その医師は認知症に近い状態で表立った活動をしていないということです。
21世紀に信じられた説(もちろん一部の方しか信じていない説ですが)ですら、科学的根拠の希薄さで否定される事実。果たして2000年以上前に中国で生まれた説を、どんな根拠で、講師は聴衆に言っているのでしょうか、教えてほしいものです。