健康ニュース 7月1日号 バターは腐らない?

     

隣家のインテリ夫人「公民館の公開健康教室に行ってきました。ショックな講演でしたわ。毎朝使っているマーガリンはプラスチック食品で、絶対に腐らないから健康のために使っちゃダメということでした・・・」

隠居中の大御所 暈穀菜「あの講師の話を頭から信じちゃいけないな。扇動家だからね。バターは腐るがマーガリンはいつまでたっても腐らないと言っていなかったかな?」

隣家のインテリ夫人「その通りですわ・・・。それって本当ですか?」

隠居中の大御所 暈穀菜「未開封の同じ条件下ならバターもマーガリンも腐らないよ。もちろん作為的に条件を加えたならば別だがね・・・」

隣家のインテリ夫人「安心しました。もう少し詳しく教えてくだい」

隠居中の大御所 暈穀菜「一つは、その講師はわざと腐敗と酸化を同じとして説明をしているのだね。バターやマーガリンだけでなくてんぷら油だって未開封のものは、腐敗しない。油を語る上では常識だよ。時間経過とともに品質が落ちることは酸化というのだね。酸化と腐敗は全く別次元問題だからね」

隣家のインテリ夫人「そうですか・・・。なんとなく安心しましたわ。では腐敗とはどんなことを言うのですか?」

隠居中の大御所 暈穀菜「誤解しちゃいけないよ。開封して一度でも手を付けたものは、マーガリンでもバターでもてんぷら油だって腐るかもしれないからね。使うことによって微生物が入り込み繁殖することを腐敗というのだな。微生物学の定義、化学的定義、食品栄養学の定義では若干解釈が異なるらしいが、そういった説明をしないで話すことは、単なる脅しだよ」

隣家のインテリ夫人「あ~良かったわ。なんとなく安心しました。ではマーガリンはプラスチック食品ということに関してはどうなのでしょうか」

隠居中の大御所 暈穀菜「マーガリンとプラスチックを同一に比べること自体無意味だね。マーガリンの栄養素は腸で吸収されるが、プラスチックはどんなに細かく粉砕しても栄養素として吸収されることは絶対にないからね。講師は、マーガリンとプラスチックの構造式が似ていると言っていたのだろうがね」

隣家のインテリ夫人「その通りですよ。聴いていてショックでしたわ」

隠居中の大御所 暈穀菜「マーガリン製造時に水素添加するのだが、その際にトランス脂肪酸ができるのだね。このトランス脂肪酸の構造がプラスチックの構造に似ているといい始めた人がいるのだね。これはアメリカの学者の論文を誤訳したというのが一般的な考えだ。なぜだって?プラスチックは高分子化合物で構造などは全く似ても似つかないからな。マーガリンのように固体のものに圧力をかけると形態が変わり、圧力をかけるのを止めても元に戻らない状態のものを可塑性と言っている。これは英語でPlasticityと言っている。これを訳すときにプラスチックと訳したのだろう、というのが真相らしいね。ただマーガリンだけでなくトランス脂肪酸の過剰摂取は避けるべきで、ショートケーキなどの食べ過ぎは止めるべきだよな。それと全てバターに切り替えると飽和脂肪酸の摂取過剰の恐れもあるからね。まぁほどほどが良いということさ。話し疲れたな。そ~だ、地ビールをいただいた。肴はクラッカーにマーガリンをつけて楽しもう!」