キリン「CDP気候変動・水セキュリティ」Aリスト獲得

      執筆者:shirai

キリンホールディングスは、環境情報開示システムを提供する国際的な非営利団体であるCDPにより、気候変動および水セキュリティの「Aリスト」企業に選出され、12月8日に発表された。昨年に続き気候変動の指標で「Aリスト」2年連続獲得となり、水セキュリティの指標で「Aリスト」に選出されるのは、5年連続となる。キリングループは本年2月に、社会と企業のレジリエンス強化へ向けた新たなビジョン「キリングループ環境ビジョン2050」を策定し、ネガティブインパクトの最小化にとどまらず、社会にポジティブなインパクトを与え、地球を次の世代につないでいくことを目指して取り組みを進めており、ビジョンの中では、「生物資源」、「水資源」、「容器包装」、「気候変動」を当社の事業で取り組む重要な4つのテーマとして定めている。「気候変動」については、グループのGHG排出量削減目標を2030年までに30%削減(2015年比)と掲げており、日本の食品業界で初めてSBT(Science-based Targets)イニシアチブ(SBTi)の承認を取得。徹底した省エネ活動に加えて、燃料転換の実施、国内自社ビール工場へのヒートポンプの導入、太陽光発電や風力発電、水力発電由来の電力の活用、および排水処理設備から得られるバイオガスを利用した発電などの再生可能エネルギーの活用、容器軽量化や共同配送を含むバリューチェーンでのGHG削減の取り組みなどを進めている。さらに、本年6月には「Business ambition for 1.5℃」に署名。これは長期的なGHG排出量ネットゼロの実現に向け、中期的なGHG削減目標を上方修正することを表明するもので、2020年中にこの新たな目標に対して、SBTiの承認を取得する予定。直近11月には「RE100」に加盟し、2040年までに使用電力の再生可能エネルギー100%化を掲げた。この実現に向け、来年よりキリンビール名古屋工場で購入する全電力を100%再生可能エネルギー化する。さらにキリンビール仙台工場・名古屋工場・滋賀工場・神戸工場の4工場へ、PPAモデルによる太陽光発電電力を導入するなど、早期のRE100達成に向け、取り組みを加速させている。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に、日本の食品会社として初めて賛同を表明し、シナリオ分析など情報開示を積極的に行っており、2018年、2019年にはシナリオ分析により、気候変動が将来的に農産物の収量に及ぼす影響、および原料農産物生産地や国内製造拠点・物流経路における洪水や水ストレスなどの水リスク、さらにはカーボンプライシングがキリングループの炭素排出コストへ与える影響を評価した。今年は、感染症や熱中症のリスクと機会についても分析している。「水資源」については、原料として使用する水を持続可能な状態にすることを目指し、水使用量の削減に取り組むとともに、事業拠点の流域特性に応じた水の課題解決を推進。製造事業所における高いレベルでの節水活動、使い終わった水をきれいにして自然に返す取り組み、業界に先駆けて始めた製造拠点のある水源地での森林活動などを積極的に進めている。さらに、地域や立地により「水リスク」が異なることから、2017年にはグローバルに展開している9カ国44カ所の主要製造事業所における立地流域の水リスク評価、2018年からは酒類・清涼飲料などの国内飲料会社のバリューチェーン上流における水リスク評価を行うなどして、長期的な視点で水リスクが経営に与える影響の把握にも努めている。2019年には当社の事業に関わる主要農産物産地における水リスクを検証し、事業戦略へ反映させるなど、取り組みを進化させた。