健康ニュース 3月1日号 極楽と紙一重の地獄!
時折思い出したように寒い日があります。特に朝夕の冷え込みは、高齢者にとってリスクが多いということを忘れないようにしておきたいものです。
冷え込んだ日のお風呂は、高齢者にとっては心身ともリラックスできる楽しみと言えましょう。
本年1月7日に、一般社団法人高齢者入浴アドバイザー協会が、日本記念日協会に申請していた「2月4日を高齢者安全入浴の日」とする案が正式に認証され登録されました。
入浴(2と4)と不死(2と4)をかけ2月4日が決まったということです。
コロナ騒動で好きな温泉にも行けないというご時世ですが、お風呂好きな日本人にとってぴったりな記念日と言えますね、とお考えになった方、ちょっと待ってください!
お風呂に関する記念日と言えば、毎月26日は「風呂の日」となっていますし、語呂合わせから4月26日は「良い風呂の日」、11月26日は「いい風呂の日」と定められています。
そこで2月4日は、「高齢者安全入浴の日」と高齢者に限定されていることに注目して下さい。
実は高齢者にとって、この時期の入浴は、死のリスクとの隣り合わせの状況下なのです。高齢者の入浴中の事故死は、交通事故死亡者の2倍近いという、驚くようなデータがあります。寒い時期は特に多いということで、2月4日を選び、高齢者安全入浴の日とし、注意を喚起しているのでしょう。
色々なデータを見ますと、1月~4月、11月~12月は、温かい風呂に入り充分体を温めたい、という高齢者共通の気持ちがあるのでしょうか、入浴時の事故の8割近くがこの時期に集中しています。
交通事故死は、メディアが取り上げてニュースとなります。一方、入浴に係る事故死は、報道が無いも同然です。故に「高齢者にとって寒い時期の入浴には十分注意をして欲しい」と言ってもあまり留意はされていないのではないでしょうか。
消費者庁では、入浴中の事故を防ぐために、次のように呼びかけています。
*浴槽にお湯を入れるときはシャワーから入れる。浴室自体がシャワーの湯気(蒸気)で温まる。
*お風呂に入る前に脱衣所や浴室を温めること。
*最初の2~3分間は、ぬるま湯で半身浴。心臓・肺などに負担をかけないよう浴槽用の椅子などをうまく使うこと。
*その後、好みの温度にして全身浴へ。ただし湯温は41℃以下。湯につかる時間は10分を目途にする。
*浴槽から急に立ち上がらず、ゆっくりと出る。
65歳以上の高齢者の不慮の溺死及び溺水事故は2019年で6900件近く起こっています。そのうち4900人近くは浴槽内でのもの。入浴中に浴槽から急に立ち上がり脳貧血を起こすケースも多発しています。
一方、熱い湯に長くつかり過ぎ、心臓発作で亡くなるケースは、病死扱いとなっていますので、本当はもっと多い数字となっているといえるでしょう。
ヒートショックとは、暖かい所から寒い所に移動した際の温度変化によって、血圧が変動して生じる健康障害です。
譬え話として適切ではないかも知れませんが、この季節、沖縄の海では時々水着で楽しめる日もあります。その水着姿で北海道に飛び、水着姿で雪のちらつく札幌の街を散策するでしょうか。誰もしないことでしょう。暖かい部屋、冷え切った脱衣所、熱い湯船。血圧はたまったものではありません。これがヒートショックという現象そのものです。