第709話 はい、チーズ♪
ソバリエのゆさそばさんとメールしていたら、話の流れからチーズの話になって「立川にチーズ王国がありますね」って言われた。そういえば聞いたことがあった。それにちょうど近々仕事で立川に行くことになっている。だから「寄ってみます」と返事していた。
仕事というのは、林幸子先生(料理研究家・ソバリエ講師)と某所を訪ねることになっていた。なので林先生に「ついでに、チーズ王国はいかがでしょうか」とお誘いした。「じゃあ、立川はめったに行けないから、無庵でお蕎麦を食べて、チーズ王国へ、そして15時からの打ち合わせに駆け付ける、というのはどう?」ということになった。
幸い、訪ねる所はみな立川駅の北口である。久しぶりに降り立つ駅だったが、驚いたことに副都心並みの人混みだった。
さっそく、【無庵】に入るとジャズが低く流れてくる。お客様もいっぱいだった。林先生は定番の《玉子焼き》、私は《鴨》、そして《蕎麦掻き》と《八ヶ岳産の、せいろ》を頂いた。先生は、われわれとの仕事が終わったら、国立でまた別のご馳走の会があるとのことだったので、控えめにした。
店主がご挨拶に見えた。久しぶりだったが、お元気そうだった。でも話を伺ってみると大病を患ってやっと元気になったところだとのこと。私はご無沙汰を詫びた。帰りはまた店主が店の外まで出て見送ってくれた。
それから、駅に戻ってモノレールに乗った。立川のモノレールは初めてだったから、初めて訪れる街のような気分になって楽しくなった。
二つ目の立飛駅で下りて、大きな駐車場を二つ通り抜けると【サロン・ド・テ・チーズ王国】が見えた。
店内には、ヨーロッパ各国のチーズがずらり、目移りがする。
チーズ新人の私には、チーズ検定のテキストに掲載されていたチーズを一つずつ体験することが大事だと思う。まずは基本からというわけだ。それに個人的には山羊とか水牛が好きだ。
そんなわけで、シェーヴルタイプの山羊乳製《サントモール・ド・トゥーレーヌ》(フランス)と《クロタン・ド・シャビニョール》(フランス)を選んだ。
《サントモール・ド・トゥーレーヌ》は芯に藁を1本通してあって、酸味を中和するために木炭の粉をまぶしてある。見ただけでも個性的である。店の人も今が旬とおっしゃる。《クロタン・ド・シャビニョール》の方はコロンとした形が小さな山羊のようで可愛らしい。
林先生は、イタリアの《ペコリーノ・ロマーノ》と《ゴルゴンゾーラピカンテ》、それにスイスの《シュロスバーガーアルト》を求められたようである。《シュロスバーガーアルト》はちょっと味見させてもらったが、酷のある旨味がいまも忘れられない。
翌日の朝の食卓には、《サントモール・ド・トゥーレーヌ》のチーズトーストに、《クロタン・ド・シャビニョール》のサラダを並べた。《サントモール》はトーストしたせいか塩味が抑えられて好い感じ、《クロタン》は爽やかな栗ィミーな後味に満足した。
「そういえば・・」と、チーズの番組を少し前に録画していることを思い出したので、見てみた。番組では、木更津で水牛のモッツァレラ・チーズを作っている竹島さんという人が登場していた。
日本で水牛からチーズを作っているのは北海道2軒、千葉県(木更津)1軒だけだという。牛のモッツァレラ・チーズの乳脂質は3.7%、水牛モッツァレラ・チーズは8.1%らしく、水牛モッツァレラはとろ~りとして、しかも真っ白、まるで水中を遊泳する海月のようなその映像やら、《白味噌汁にモッツァレラ・チーズ》、《モッツァレラ・チーズかけご飯》などが紹介されていた。
それなら私もと、《新玉にクロタンと削り節にポン酢和え》にして夕食時に一品加えたところ、和の味のなかにチーズの栗風味が少しだけ抜け出ていて、なかなかいける。
口にしながら、今度は木更津へ行きたくなってきた。
〔コムラード・オブ・チーズ ほし☆ひかる〕