キリンビール「代表取締役社長 布施孝之氏 年頭挨拶」

      執筆者:編集部

年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げますとともに、旧年中のご愛顧と格別のご支援に厚く御礼申し上げます。
昨年はアベノミクス3本目の矢「成長戦略」に関心が寄せられ、本格的な日本経済回復かとの期待が当初高まりました。主要企業の業績には回復が見られ、全体としては緩やかな成長局面に入ってまいりました。しかしながら、政府の要請もあり一定の賃上げが行われたにもかかわらず、個人消費は低迷を続け、相次ぐ台風上陸など天候不順による一部食品の物価上昇はあったものの、全体的にはいまだデフレ傾向からは抜け出せていません。
酒類業界をみると、ウィスキー(国産・輸入とも)やRTDは、前年の勢いそのままに続伸し、そのあおりも受けた形で、ビール類は2005年以降12年連続マイナスが確実な情勢とみられます。その中で、ビール各社は既存ブランドの派生商品を中心に、前年にも迫る数の新商品・限定品を投入しましたが、総需要喚起には至りませんでした。昨年末に発表された10年かけてのビール類酒税一本化を先取りし、早くもビール各社では、ビールのメインブランドに対し、積極的なマーケティング投資が行われ、一昨年19年ぶりにプラスとなった「ビール」では、従来からの主力ブランドの一部がプラスをキープするなど、10年先の市場がどのようになるか、非常に神経質な様相を呈してきた1年でした。
その中当社は一昨年の21年ぶりのビールカテゴリープラスの勢いそのままに、V字回復を本物にする1年と位置付け取り組んでまいりました。「お客様のことを一番考える会社」の具体策として発売した「47都道府県の一番搾り」は、おかげさまで各方面より大きな反響をいただき、当初予定の2倍を上回る販売となりました。この売り上げの一部は熊本地震の被災地の復興支援策に活用させていただきました。結果「一番搾りブランド」は3年連続でプラスとなりました。
また、「ビールカテゴリーの魅力化」への布石として、クラフトビールの魅力を幅広くお伝えするための準備を着実に進めてまいりました。一昨年オープンしたスプリングバレーブルワリーへのご来場者は好調に推移し、全国の様々なクラフトビールメーカー様とのコラボのなども実現しました。また、米国のクラフトビールのパイオニアであるブルックリン・ブリワリー社との資本業務提携も行いました。しかしながら、当社ビール類の3分の1近くを占める新ジャンルのうち、とりわけ「のどごし生」が、お客様のご支持を得られず大きく前年を割り込み、ビール類合計での苦戦を強いられました。
一方洋酒、中でもウィスキーに目を転じますと、市場全体の傾向と同じく、順調に売り上げを伸ばしています。国産の「富士山麓」は今春リニューアルし、価格・中身とも一新しました。価格改定の影響も心配しておりましたが、幸い味覚評価も高く、継続的なお取り扱いをいただくケースが多く、計画を大幅に上回る結果となりました。価格改定に伴い、その隙間を埋めるために導入した商品も堅調な動きをしています。輸入品も総じて堅調です。
またRTDのうち「氷結」は、年初からのリニューアルとWEB上での若者層への浸透が順調で、新しい愛飲者の獲得につながったもの確信しております。今後はストロング系市場での存在感をどう出していくかが課題と言えます。
さて今年については、これまでの戦略の柱が大きく変わるわけではありません。毎度申し上げているとおり、「お客様のことを一番考える会社」へ、さらにいうならば、「もっと身近なビール屋」へとなりたいということです。
個人消費の回復の足取りも急速な回復が期待できない中、お客さまが商品を選ばれる際、身近な会社、自分たちのことを考えている会社を感じ取られて商品を手にされるのではないでしょうか。今年から、キリンビールの販売組織もより地域密着の体制といたしました。私も先頭に立って、的確な商品・営業戦略の舵取りを行ってまいります。
具体的には、ブラッシュアップした「47都道府県の一番搾り」への再びのチャレンジです。“お客様のことを一番考える会社”を標榜する中で、より象徴的な取り組みとして「地元を元気にしたい」の気持ちを込めて活動もパワーアップします。今年の発売を楽しみにしていただきたいと思います。
もう一つは、クラフトビールへの本格的な取り組みを、多くの皆さんに実感いただける初年度にぜひともしていきたいということです。こちらは、間もなく具体的な発表をさせていただくことができると思います。
業界を取り巻く環境は依然として厳しい状況ですが、需要の維持拡大に向けた様々な価値提案を通じて、業界発展に邁進して参ります。本年も皆様からの一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。末筆ではございますが、この新しい年が皆様にとって素晴らしい1年となりますよう心からお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。