第955話 珍味 鰒の卵巣の粕漬
2025/10/08
今日のフードボイス勉強会は《鰒の卵巣の粕漬》のお話と試食会でした。
ただし、ふぐを「河豚」と書くのは可愛そうな気がしますので、「鰒」の字を使うことにします。
商品開発したのは、福井県高浜町の天然虎鰒料理の「五作荘」。4代目今井悠介様。
作り方は、Ⅰ.若狭産虎鰒の卵巣を2年塩漬け、Ⅱ.天日干し、Ⅲ.純米大吟醸「梵」の酒粕漬け1年、計3年かけて完成させるということでした。
もともと、《鰒の卵巣を糠漬け》というのが、石川県の郷土料理にあります。その糠漬けの兄弟分として、高浜町や佐渡では酒粕に漬けていたようです。
ご承知のように鰒には猛毒テトロドトキシンがありますが、それが糠や粕に漬けると解毒されるというのです。解毒作用の仕組は解明されていませんが、当地の伝統的製造法を守って作れば大丈夫なといいます。ですから、一帯あたりだけでしか、作り方が伝わっていませんから、まさにこれぞ郷土料理というわけです。
実は小生、糠漬けの方は、半世紀前に食べたことがあります。ただ当時まだ若造だった私の舌では珍味を堪能するほどの力はありませんでした。ですから「珍味」ではなく「珍」ていどしか感じなかったことを覚えています。
その点、今日の粕漬けは珍味だと思いました。しかしこうした会場でコレだけ口にすると、濃厚な甘塩っばさを妙に強く感じます。たぶん日本酒か白米のお供として、それも福井で頂けばもっと珍味さが優れていることでしょう。
追記:実はこの商品、20gで1万円也。先月「五作荘」さんがお見えになられたとき、ソバリエの「河」さんは躊躇なく、今夜の酒のお供にとポンと買い求められた。その気風のよさに感心・・・・!
江戸ソバリエ
和食文化継承リーダー
ほし☆ひかる