キリン×東大「小腸老化による栄養素吸収低下」確認
執筆者:shirai
キリンと東京大学は、ヒトiPS細胞由来小腸オルガノイドを用いた細胞老化モデルを構築し、老化が小腸上皮細胞の栄養素吸収機能を低下させることを世界で初めて確認した。糖輸送に関わるSLC5A1、アミノ酸輸送に関わるSLC16A10などの発現が顕著に減少し、放射線標識糖を用いた定量実験でも細胞内取り込み量の低下が示された。また老化細胞では、細胞の性質が変化して機能を失うEMTが進行し、TGFB1をはじめ間葉系マーカーであるACTA2やCDH2の発現増加が認められた。高齢者では腸の老化が栄養吸収不良やフレイルにつながるとされるが、ヒトでの検証が難しいことが研究の壁となっていた。本成果は老化機構の分子レベルでの理解を進め、腸の老化を抑制する機能性素材開発に向けた基盤となる。研究成果は日本分子生物学会年会で報告された。