第961話 明日の都市力
2026/01/04
☆江戸の都市力
江戸蕎麦の謎解きをしていますと、「江戸」という時代そのものを紐解く必要があると思うことがあります。それは多分、物(この場合は「江戸蕎麦」)は時代の産物だからでしょう。
では、江戸時代って何?というとき、何も難しいことはありません。前時代の鎌倉室町時代と比較してみればいいのです。
そうしますと、江戸時代は、戦国時代が終わって平和になりました。通貨が統一されました。海の樽廻船などの航路や陸の五街道が整備されました、などが見えてきます。
通貨は小判・銀・銭のことで、幕府は全国どこでも通用できるようにしました。水運で食材が江戸に入ります。街道はいまでいえば新幹線や長距離列車の本線のような役割です。
こうして、都市に人・物・金・情報が集中し、いわば「都市力」が増してきます。
その都市力の代表が、府内の交通網の充実、上水道完備などです。江戸の街の交通手段は籠と舟です。いまでいえば、籠は目的地まで運んでくれるタクシー、舟は一定の所から一定の所まで行けるバスや電車みたいなものです。
江戸は(もちろん大坂も)、「水の都」といわれるくらいに運河が張り巡らされ、舟が人々の足となっていました。舟は時代小説などを読んでいますと、家形舟、猪牙舟、障子舟、高瀬舟、伝馬舟など多くが出てきますが、他にもいろいろとあったようです。一方、上水道完備も都市ならではのことです。田舎ではどうしても田畑のための農業用水が優先されます。よって水が不可欠の料理店は都市で生まれ、栄えました。
足である舟を利用して中級の町人たちは動きまわり、外食店はじめ商いは発展していき、江戸は武家社会でありながら商人の存在が大きくなりました。
私たちが関心をもつ蕎麦も「蕎麦切は江戸を盛美となす」とまで言われるようになったことはいうまでもありません。ただ、これは都会や城下町にかぎったことです。
地方の農民は年貢体制に組み込まれたまま、単純にいえば物々交換の慣習のままでした。江戸時代というのは、都市と地方、町人社会と農民社会、お金と米という二重構造になっていたことも事実です。
☆東京の都市力
仕事で大阪へ行くことがありました。大阪も東京と同じようにかつては水の都でした。おそらく大阪でも舟は人々の足として活発に動いていたのでしょう。淀川、堂島川、土佐堀川、道頓堀川などに架る橋の多さからそれが伺えます。ただ東京はかつての運河は埋め立てられて、ほとんど消えています。ですから、江戸の運河の全体像はなかなか描けません。
そんなことから、せめて現代東京の電車網を眺めながら、 江戸の都市力の運河像でも想像してみようかと、東京の電車史をちょっと覗いてみようと思い付きました。下段が、その東京電車史ですが、特に研究というほどでもなく、ネットで寄せ集めただけの内容です。
日本の鉄道は、よく知られてますように明治とともに産声を上げました。ですから、人間の成長でいえば明治は幼児期、大正は小学生、昭和戦前は青年期、昭和の戦後から大人期という見方もできるでしょう。
先ず、明治に鉄道開始してから、現在の中央線、京浜急行、東武鉄道も産声をあげました。
大正では、現:京成電鉄、京王電鉄、京浜東北線、西武池袋線、東急電鉄、
山手線が誕生し、東京の電車網の骨格ができました。
一方、長距離の鉄道列車が登場してから海運が、また電車によって運河の舟が衰退し、水運より陸運の時代に入っていきました。そこへ関東は大震災に襲われ(大正12年)、震災後から自動車が急速に普及し、ますます陸の時代に入っていきました。
昭和に入りますと、銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線、有楽町線、半蔵門線、有楽町線などの地下鉄が登場します。そして小田急電鉄、京浜東北線、東武伊勢崎線、東急東横線、東武東上線も加わってほぼ出揃い、各社相互乗入れを結んで、現在に続くわけです。
☆明日の都市力
都市力が交通網ばかりではないことはいうまでもなく、一つの例としてのことではありますが、江戸蕎麦の時代の舟便に代わって、東京蕎麦の時代になりますと電車が足となりました。それでは明日の蕎麦の時代にはどうなっているのでしょう。楽しみです。
もう一つの都市力である、支払いについては、銭→円→スマホ決済と変容の兆が見られます。
明日の蕎麦も、道具、打ち方、食器、麺・つゆ、食べ方に変化が起こるでしょう。
しかし、変容は「これまでが、これからを決めます」し、「これからが、これまでを決める」ところがあります。
まずは変容の明日が楽しみというところです。
《東京電車史》
明治5年 新橋-横浜(29㎞)鉄道開業
明治15年 東京馬車鉄道、新橋-日本橋間で開業(軌道業の開始)
明治17年 上野-高崎の鉄道全通
明治22年 甲武鉄道(現中央線)新宿-立川開通、後に新宿-飯田橋も。
明治32年 大師電気鉄道(現京浜急行電鉄)開業
明治32年 東武鉄道開業
明治36年 東京電車鉄道の新橋-品川間開業(東京最初の市内電車)
大正元年 京成電気軌道(現京成電鉄)開業
大正 2年 京王電気軌道(現京王電鉄)開業
大正3年 京浜線(現京浜東北線)東京-横浜開通。
大正4年 武蔵野鉄道(現西武鉄道池袋線)開業
大正12年 目黒蒲田電鉄(現東急電鉄目黒線・東急多摩川線)開業
大正14年 山手線環状運転
昭和2年 銀座線 最初の区間である浅草駅 - 上野駅間を開業
昭和2年 小田原急行(現小田急電鉄)開業
昭和7年 京浜線(現京浜東北線)大宮-大船開通
昭和14年 銀座線全線開通、浅草駅 -渋谷で直通運転
昭和29年 丸ノ内線のうち池袋-御茶ノ水が開業
昭和36年 日比谷線のうち、南千住-仲御徒町が開業。
荻窪線(現在の丸の内線)が開業。
昭和37年 日比谷線が東武伊勢崎線と相互直通運転。
昭和39年 日比谷線が全線開業し、東急東横線と相互直通運転開始
東西線開業。
昭和44年 東西線全線開通、営団地下鉄として初めて千葉県へ路線
を延ばす。国威徹総武線と相互直通運転開始。
千代田線開業、営団で5番目の路線開業。
昭和46年 千代田線が国鉄常磐線鉄と相互直通運転開始。
昭和49年 有楽町線開業。
昭和53年 千代田線全線開通。小田急小田原線と相互直通運転開始。
半蔵門線開業。
昭和58年 有楽町線が西武有楽町線への直通運転開始。
昭和62年 有楽町線が営団地下鉄として初めて埼玉県へ路線を延伸、
東武東上線 との相互直通運転開始。
昭和63年 有楽町線全線開通。
平成3年 南北線開業
平成10年 有楽町線が西武池袋線と相互直通運転開始
平成12年 南北線が全線開通し、東急目黒線と相互直通運転開始。
平成13年 南北線が埼玉高速鉄道線と相互直通運転開始。
平成14年 千代田線が小田急多摩線と相互直通運転開始。
平成15年 半蔵門線が全線開通し、東武伊勢崎線・日光線と相互直
通運転開始。
平成20年 副都心線が全線開業し、副都心線が東武東上線・西武有
楽町線・西武池袋線との相互直通運転を開始。
平成25年 副都心線が東急東横線・みなとむみらい線と相互直通運転
開始、

【大阪御堂筋線と京阪線中之島線】
【神田川・柳橋に停泊中の小舟】
江戸ソバリエ協会
ほし☆ひかる