第344話 「機能性弁当」って何?
3月に、農業・食品産業技術総合研究所機構 食品総合研究所主催による、「機能性をもつ農林水産物・食品開発プロジェクトの成果発表会」と「機能性弁当の試食会」が秋葉原で開催された。
☆ダッタンソバ「満天きらり」♪
平成25年に、江戸ソバリエ協会がアンケート協力した、ダッタンソバ「満天きらり」についても、「食品摂取8週間後で脂質過酸化が有意に改善した」ことがパネルで発表された。
☆機能性食品とは?
ところで、発表会の表題である「機能性食品」とは何だろう?
昔の、日本には中国思想の「医(薬)食同源」という考え方が流布していた。ただ、この考え方はあくまで経験論であって、江戸時代に大ヒットした『養生訓』もその流れをくむものだ。
そこで、明治維新以降からは科学的な西洋の医薬学や栄養学が採り入れられ、行政は医薬が厚生省、食品は農水省が担うこととなった。
しかしながら、せっかく科学性が入ってきたものの、縦割組織によって「医薬と食」は分断され、何のための「医薬」か、何のための「食」かは、捨て置かれる状態が続いた。そのため、医療現場での食事指導は体を成していなかった。
ところが20世紀末になると、明治以来のこの裂け目を繕おうという動きが出てきて、ついには「食品機能論」というコンセプトが誕生した。
もともと食品というものは、「はたらき」をもっている。栄養面でのはたらき、嗜好面でのはたらき、予防面でのはたらきである。この「はたらき」が「食品機能論」として提唱され始めた。
こうした「様々な生活習慣病に対応するという目的をもった食品⇒機能性食品=functional food」は「foodとmedicineの境界に踏み入ろうとする」として世界からも注目されているようになった。
☆機能性弁当
当日のお弁当の中身は、玄米ごはん、牡蠣と鮭のマヨネーズ焼、トラトゥユ、林檎と人参の甘煮、それに緑茶である。
その食材は、こんな具合だ。
食後の血糖上昇を抑制する「表面加工玄米」。ミネラルの亜鉛(「牡蠣」)と抵抗酸化成分アスタキサンチン(「鮭」)との併用による睡眠改善に寄与する料理。認知機能障害予防作用をもつケルセチン高含有「玉葱」。抗肥満作用をもつセロトニン高含有「トマト」、メタボリックシンドローム改善作用をもつ高カロテノイド「人参」。脂質代謝改善効果をもつ高カテキン緑茶「べにふうき」。
こうした機能性弁当が、自宅、あるいは医療機関へ流通する日も遠くないというわけだ。
そこで次の機会には、動脈硬化、糖尿病、痴呆、癌の進展抑制に、脂質過酸化の改善作用をもつ「満天きらり」の食事を期待したい。
そして、かつての「栄養学」でもない、伝統の「薬膳」でもない。新しい「食品機能論」を目指す若手の研究家、未来志向の企業の活躍に期待したい!
〔江戸ソバリエ認定委員長 ☆ ほしひかる〕