コンビ二創業戦記 ローソンのルーツ「サンチェーン創業物語」(第39回)

     

<サンチェーン・ダイエーグループ時代(その21) 

――シテイ・コンビニエンスへの挑戦――(19) 

「本格的な情報武装化への道」 

サンチェーンが、昭和56年(1981)、第二次コンピューターシステム「ATLAS」を独自に開発し、コンビ二業界初の店舗と本部間の双方向EOS「ASSIST」を導入したことは、既に「第21回」で述べたとおりである。 

これはコンビ二チェーンとしての情報武装化の第一歩に過ぎなかったが、業務提携後の昭和60年(1985)3月から約2年の時間と100億円を超える投資を掛けて進められたサンチェーン・ローソン両社によるシステム統合高度化の共同プロジェクト、すなわち「ダイエー・コンビニエンス・トータルシステム」の開発こそ、まさに社運をかけた本格的な情報武装化への道程であったといえよう。 

「ダイエー・コンビニエンス・トータルシステム」は、加盟店、本部、物流センター、取引先を一つのネットワークで結ぶ綜合情報システムであり、サンチェーン・ローソン両社のシステムインフラを統合高度化し、グループシナジーによる経営生産性を飛躍的に高めようとするものであった。 

このシステムは、①・受発注・仕入れ・売り上げシステム、②・ストアオートメーションとしての新型POSシステム、③・物流センターシステムの3部門で構成されていた。

そして、その中核システムとなるのが②の新型POSシステム・ネツトワークであった。

<DCVS/システム概要図>        <POSレジ>

        

「ストアオートメーションとしての新型POSシステム」 

このPOSシステム開発の狙いは、

①・POS情報を活用して販売力の強化を図る

②・POS機能を活用して発注作業などの軽減を図る

③・ネツトワークを利用した新ビジネスの開拓を図る ことにあった。

そのために、ハードウエアとしての新POSレジは、サンチェーン、ローソン、ダイエー、日本電気4社の共同開発により、コンビ二の特性と将来進化の方向を十分に考慮した、32ビットcpu搭載という当時としては最高度機能を備えたものとなったのである。

このPOSシステムの開発や実験、研修や導入のプロセスに、サンチェーン側の中心者として、一貫して熱心に関わってくれたのは、清田滋さん、渡辺孝俊さん、舟木由旦さんなど当時のサンチェーンシステム開発推進室の中軸メンバーであった。

渡辺孝俊さんは、その後サンチェーン・ローソン合併が決定するや、私に自ら申し出て、サンチェーン社史の編纂責任者を引き受け、見事『1000店舗達成の記録――サンチェーン魂』と云う一冊に纏めてくれた。

合併の翌年、渡辺さんは不治の病を得、40歳そこそこの若さで、誠に残念ながら急逝された。

渡辺さんは、独創的な発想を持つ優秀な頭脳の持ち主であったから、掛替えのない人材を失ったという思いが、私の心を離れたことはない。

 <渡辺さんのPOS導入研修レポート>     <サンチェーン社史>

  

      

新POSレジの本格的導入は、昭和62年(1987)7月、関東、関西地域から順次計画的に導入されていく。

全地域のサンチェーン・ローソン店(約2800店舗)に導入し終えるには、一年有余を要したと思う。

「パブリック・ライフライン・インフラ機能の実現」

新型POSの開発導入により、販売データ情報の精度が飛躍的に高まることとなった。

商品ごとの販売時間やお客様の年代、性別など、お店ごとの具体的なお客様像が掴めるようになり、商品開発や店舗別の品揃えに活かせるようになっていく。

受発注・仕入れシステムでは、24時間いつでも受発注が可能となり、予約発注や一括発注などリアルタイムでの情報提供が出来、データ処理スピードも飛躍的に向上、米飯の新3便体制が整い、商品物流の適時・適量・適度化を図っていく出発点となったのである。

特に発注については、日々の販売実績を参考にしたリコメンド機能を備え、品切れ防止と売れ筋商品の充実を可能とする機能を備えるものであった。

加えて、全国のサンチェーン店、ローソン店を結んだPOSネットワークは、公共料金を初めとする幅広い収納代行サービスを可能にし、その後更なる進化発展を重ねて、現在では、銀行などの金融機関を凌駕する規模に達し、取り扱いの量も巨額となり、分野も極めて広範にわたっている。

今日、コンビ二が、日本社会の日常的・地域的なパブリック機能、即ち「国民的な生活インフラの役割」を果たしていることは今や衆知の事実であり、その実現を可能としたシステム基盤構築の本格的な出発点こそ、「ダイエー・コンビニエンス・トータルシステム」の共同開発・導入であったといえよう。

                         (以下次号)

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