<コンビ二創業戦記・別伝>「DCVS回想録」第8回

      2017/01/27  

<日本フランチャイズ・チェーン協会活動の思い出>(その4)

「第12回JFAフランチャイジング・セミナーへの参加」(その2)

 セミナーでの第一回目の講義は、ツアー二日目の11月7日、ロスアンゼルスにおいて、米流通経済誌「アントルプルヌール誌」編集長・リバー・リソースキー女史を講師に開催された。

*講義(1)『1980年代のアメリカ消費市場のトレンド」』

リソースキー女史は、【アメリカ社会においては、

①・女性の職業参加が激増していること

②・共稼ぎ世帯の増加で可処分所得が増えていること

③・ベビーブーマー世代が子育て世代となってきたこと

などの変化を背景に、サービス産業へのニーズが高まり、特にスモールビジネスが発展している。》、と述べた。

そして、《 スモールビジネス発展の要因は、

①・柔軟性があり、ニーズに素早く対応できること

②・大企業は管理層が重層的で、変化対応に時間が掛かること

③・大衆の一般的ニーズに対応していること

④・隙間市場に個人企業家が対応していること、等にある。】、と強調した。

そして、1988年の「ホットビジネス『29』として、次の29種のスモールビジネスを提示した。

【(1)・コンパクトディスク・オンリーストア、(2)・ダイエット&ウエイトコントロール・ビジネス、

(3)・スペシャリテイ・テンポラリー・ビジネス、(4)・ホームリモデル・ビジネス、

(5)・ビジネス・インキュベーター、(6)・オート・アフターマーケット、(7)・ギフトバスケット・ビジネス、

(8)・コンピューター・コンサルテイング・ビジネス、(9)・アダルト・エデュケーション、

(10)・デリバリーサービス・ツー・ザ・ホーム、(11)・スペシャリテイ・ブック・ストア、

(12)・ホームセキュリテイ・センター、(13)・スープ&サラダ・レストラン、(14)・エスニック・レストラン、

(15)・ナニー・リプレースメント、(16)・キンダー・ケア、(17)・ヨーグルト・ショツプ、

(18)・スペシャルティ・トラベルエージェンシー、(19)・ウエデイング・コンサルテイング、

(20)・パーソナル・ショピング・サービス、(21)・ディスクトップ・パブりシング、

(22)・ラージングサイズ・クロージング・ストア、(23)・スポーツ・メモラビリア・ショツプ、

(24)・シニア・デイケア、(25)・メイド・サービス、(26)・バイシクル・ショツプ、

(27)・ペーパー&パーテイグッズ、(28)・メールオーダー・ビジネス、

(29)・ノスタルジー・スペシャルティ・ショツプ、などである。】、と詳細に説明した。

これらのニュービジネスは、現在の日本においても、既に実現しているものが多いのではないかと思う。

リソースキー女史の講義は、「メガトレンド分析」と「ホットビジネス『29』」の説明が、明快で、分かり易く、その後の商業施設見学の際に、非常に参考になったのである。      

 

  

 < 「アメリカの消費市場」受講風景><「フランチャイズの現在」を受講>

第二回目の講義は、ツアー九日目の11月15日、サンフランシスコにて開催さtれた。

*講義(2)『アメリカにおけるフランチャイズの現在とセブンイレブン・サウスランドの現況』

『米国フランチャイズの現在』については、

セブンイレブン本部企業のサウスランド社国際開発担当・グラント・ミラー氏が、

『セブンイレブン・サウスランドの現況』については、 同社国際関係担当ジム・ソーントン氏が、それぞれ講師となった。

ミラー氏の講義の要点は、

【 フランチャイズは、安定した合理的システムであり、効率的に成功したビジネスである。

米国の小売業の発展と安定は、フランチャイズのお陰といえる。

米国小売り売り上げの三分の一は、フランチャイズの売り上げである。

フランチャイズは成長のエンジンであり、雇用の機会と、ビジネス開発の機会を創造している。

フランチャイズ・ビジネスには、大別して

①・商品・サービス供給・フランチャイズ

②・ビジネス・フォーマット・フランチャイズ

の二つのタイプがあるが、「ビジネス・フォーマット・フランチャイズ」が成長の中心になっている。

ビジネス・フォーマット・フランチャイズが成功する要因は、

第一に、商標を確立することこそフランチャイズの重要な基礎であり、商標の使い方をよくコントロールして、一定の信頼、イメージ、品質を提供し続けること

第二に、フランチャイズシステムと商品システムの完全化を図ること、

「立地」「店舗レイアウト」「品揃え」「看板」「教育」「マーケティング」「販促」など、実証されたもののみに基付いたマニュアル化をはかること、

店舗作業を、2~3週間で教育出来るように、完全に単純化すること、などが、不可欠である。】、と強調した。

更に、【 フランチャイズを取り巻く環境変化として

①・個人所得の増加、

②・小売り物価の安定,

③・消費者の楽天主義、

④・競争の激化、

⑤・大学にフランチャイズ学科が強化されフランチャイジー予備軍が増加、

⑥・家庭 の変化と女性の地位の向上により、女性フランチャイジーが増加する

等があり、フランチャイズ市場の成長可能性は大きい。 】、と述べた。

加えて、【 フランチャイジーの組合組織化によりフランチャイザーとジーとの相互コミュニケーション力が向上し、多店舗フランチャイジーや地域ライセンシーを活用することで、経営者マインドと管理コストの集約化が可能となり、フランチャイズビジネスの経営効率は一段と向上するだろう。

今後予想されるフランチャイズへのマイナス要因としては、

①・高齢化の進行と若年層の減少

②・技術の変化と競争の激化

③・買収・合併の増加、

などが懸念され、これらに適切に対応することが、今後強く求められるだろう。】、というものであった。

引き続いて、ソーントン氏による『「セブンイレブン・サウスランド社の現況』の講義が行われた。

ソーントン氏は、1988年当時、海外7000店、アメリカ国内5000店、合計12000店舗にまで成長拡大したコンビ二NO1企業・セブンイレブンの、1927年以来の70年間の歴史とエピソードや戦略などに付いて紹介した。

これらに付いては、すでによく流布されていることも多いから、ここでは詳説しない。

私が特に関心を惹かれたのは、ソーントン氏が、【 セブンイレブンは、今、大変化の年を迎えている。】、と語ったことである。

セブンイレブン・サウスランド社は、この前年(1987年)において、株式市場で敵対的T・O・B(企業買収)を仕掛けられて、企業防衛戦を展開せざるを得なくなり、資産や子会社の整理売却などを進めると共に、この年(1988年)には、L・B・O(自社株式の買戻し)を実行、上場廃止を実施していたからである。

そのニュースは世界を駆け巡り、日本でも大きな話題となっていたのは、衆知のことである。

ソーントン氏は、その経緯を詳しく説明した上で、【 セブンイレブンは、この危機を乗り越え、業績も順調に回復している。】、と強調した。

だが今考えると、その翌年(1990年)には、世界のコンビ二・フランチャイズ総本家とも云うべき、成功モデルの模範生であった「米セブンイレブン・サウスランド社」が連邦破産法の適用を申請し、さらに1年後の1991年(平成3年)に、アジアの1エリア・フランチャイジーに過ぎなかった日本セブンイレブンの実質的な子会社となるのだから、その予兆は、この時既に現れていたと云うべきであろう。

それにしても、子亀が親亀を呑み込むという離れ業を演じて見せた日本のセブンイレブンは、まことに大したものであると云うほかはない。

(バツクナンバーは「鈴木貞夫プロフィール及び目次と索引」を検索)