健康ニュース 7月15日号 サプリのチラシは魔術

     

 毎朝、新聞とともに届くチラシは何枚ぐらいあるのでしょうか。健康食品に関して深い関心を持っている小子としても、気になりチェックをしていますが、特に目立つのは大手数社のサプリメントチラシです。チラシの表現法も進化し続けていると言ったら良いのでしょうか、特に最近は上手く消費者の心を掴む表現が目立っているようです。

 サプリメントそれ自体は、薬機法(旧薬事法)により具体的な体の部位の効果は書けないことになっております。ただ多くの消費者はそのことはご理解されていないようで、サプリ業者としてはそこが付け目なのでしょう。先日目に留まったチラシがあります。仮の例として、ひざ痛の方が飲んでいるサプリとさせていただきます。

 「多くの愛用者から1000名を選びアンケート調査にご協力をいただきました。回答いただいた8割ほどの方が効果を感じ満足されています」この文をご覧になり同じ悩みをお持ちの方は、一度ぐらい飲んでみようかなと思いませんでしたか。しかも初回に限り30日分1000円、おひとり様3個まで、先着1000名様限りです、と書いてあれば思わず電話をしてしまうという方もおられることでしょうね。 

 冷静にこのからくりを解いてみます。

 問題点①→「8割の方が満足された」→この商品は2割の方が満足していない、または不満を持っているということになりますね。1人残らず満足してもらうことなどありえませんので、目くじらを立てるほどのことではないかもしれません。

 問題点②→愛用者1000名のアンケート調査とありますが、回収数がどれだけあったのかは全く分かりません。仮の話ですが100通しか回答がなかったとしたら、回収率は10%で、80人しか満足していないということになります。全体では8%の人しか満足していないことになります。逆に言えば920人は満足していないか不満足ということになります。それでも試しに飲んでみようという気になりますか。 

 このような見方をする方は少数派と言えるのかもしれません。数人の高齢者にこのチラシを見せ、「もしあなたがひざ痛で悩んでいるとしたらこの商品を注文しますか?」と聞いてみましたら、「一度は注文するかも・・・」という全員の回答でした。 更にチラシには、個人の感想であり、商品の効能を保証するものではありません、と付記がありますが、前述のように1000人中80人しか効果を認めていないにもかかわらず、堂々と「効果に満足しています」という類いの体験談を記載しています。チラシを見る側はどう判断すると良いのでしょうか。これは誇大広告に該当しないといえるのでしょうか。このようにチラシを読んでいくと、このサプリの科学的根拠の裏付けなどは二の次のように思えてきます。

 ZAITEN6月号で、群馬大学名誉教授の高橋久仁子氏は次のように指摘しています。

「誰もが知っている大手企業は広告の出稿量も多い。それだけに社会的責任が当然伴う」四半世紀以上にわたり食品の広告と消費者問題を研究している高橋氏の指摘に、業者は傾聴すべきです。

 1607折り込みチラシサプリメントは、今や業者にとって健康効果よりも経済効果を重視しているのではないかと思うほどです。医師、薬剤師、栄養士といった専門家のアドバイスなしに、業者とメディアの発信する一方的な情報のみでもって判断するのを、素人の消費者自身の責任というにはあまりにも巧妙なチラシが多すぎる気がします。